来年はデビュー40周年~今は老舗旅館竹野屋再建中!竹内まりやのアナログ盤【GO!GO!ドーナツ盤ハンター】

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昨今のアナログ盤ブームで、改めて注目されているのが歌謡曲のレコード(ドーナツ盤)。
デジタル音源より音に厚みがあり、またCDでは味わえないジャケットの大きさも魅力の一つ。
あえて「当時の盤で聴きたい」と中古盤店を巡りレコードを集めている平成世代も増えているようです。
そんなアナタのためにドーナツ盤ハンター・チャッピー加藤が「ぜひ手元に置きたい一枚」をアーティスト別・ジャンル別にご紹介していきます。

ユーミンの実家が呉服店であることはよく知られていますが、同じくらい有名なのが、竹内まりやの実家が、出雲大社のそばにある老舗旅館だということです。その旅館「竹野屋」が廃業の危機に陥ったところを、彼女が実質的なオーナーとなって再建に乗り出した…という記事が女性誌に報じられ話題になっていますが、記事を見て泣けたのは、家業を継ぎ、旅館を守ってくれた実兄に対する深い感謝の気持ち(まりやに音楽やギターを教えたのはお兄さん)、そして夫・山下達郎の「そんなに大切なものなら守るしかないでしょう。自分も協力する」という温かい支援宣言です。
記事によると、現在音楽活動はほぼ休止して旅館業に集中しているそうで、奮闘の甲斐あって、客足も戻ってきたとのこと。この「竹野屋」はかつて、沢田研二・田中裕子夫妻の披露宴でも使われましたが、再建が軌道に乗って何よりです。来年はデビュー40周年、何か動きがありそうですが、きょうはアナログ時代の持っておきたい「まりやソング」をご紹介しておきましょう。

【ビギナー向け】・・・『不思議なピーチパイ』(1980)

不思議なピーチパイ,竹内まりや

慶応大学英文学科在学中の78年に、「英語が堪能な女子大生シンガー」としてデビューした竹内まりやですが、本格ブレイクを果たした第4弾シングルがこの曲です。資生堂の春のキャンペーンソングとなり大ヒット。作詞・作曲は、デビュー曲『戻っておいで・私の時間』を担当した安井かずみ・加藤和彦夫妻です。洋楽に造詣の深い二人にとって、高校時代に米国へ留学、子供の頃から洋楽ポップスを聴いて育ったまりやはお気に入りの逸材だったようです。
まりやのデビュー時は、山口百恵は引退直前、まだ松田聖子はデビュー前で、いわば女性アイドル空白期でした。そんな中、ルックスも可憐なまりやは、事務所からアイドル的な売り出し方もされ、そのことに対する葛藤もあったようですが、そんな悩みを打ち明け、楽曲の相談にも乗ってもらっていたのが、同じRCA所属だった、のちに夫となる山下達郎です。
達郎はまりやのアルバムにもアレンジやバックコーラスなどで参加。本曲のB面『さよならの夜明け』は作詞:竹内まりや、作曲:山下達郎です。まだ結婚前でしたが、この貴重なB面曲が一緒に聴けるのもレコードならでは。200円前後で入手可能です。

【上級者向け】・・・『After Years / 駅』(1987)

After Years / 駅,竹内まりや

ドーナツ盤とCD盤が両方売られていた時期の作品ですが、これもぜひアナログの方で持っておきたい一枚です。ジャケットを見てお分かりの通り、最初はTV番組のタイアップが付いた『After Years』の方がA面で、今や誰もが知る名曲『駅』はB面でした。
そもそも『駅』は、自分で歌うために書いた曲ではなく、中森明菜のアルバム用に提供した作品だったのです。そこでちょっとした“問題”が。主人公の女性が「初めて分かるの痛いほど 私だけ愛してたことも」と告白する箇所です。日本語って面白いなあと思うのですが、この「私だけ」は「“私だけが”あなたを愛していた(=あなたは私を愛していなかった)」という意味なのか、それとも「あなたは“私だけを”一途に愛してくれていた」なのか?…そう、どっちとも取れるのです。しかもそれによって、曲全体のニュアンスも真逆になってくる。まりやは後者の意味で書いたようですが、明菜版を聴くと、明らかに前者の意味で歌っています。
「でも、本来のニュアンスで改めて歌われるべきだろう」という夫・山下達郎の勧めもあり、アルバム『REQUEST』(1987)でまりや自身が、アレンジも変えてセルフカヴァー。声質もあえて、やや暗めで歌っています。そしてシングルカットされたのが本作ですが、『駅』の評判が良かったため、翌88年にA/B面を入れ替え、ジャケットも差し替えたヴァージョンも発売されました。CDに切り替わる過渡期だったこともあり、最初に出たこのシングル盤は結構レアで、店頭だと1,500円前後で販売されています。

【その他、押さえておきたい一曲】

『SEPTEMBER』(1979) 

SEPTEMBER,竹内まりや

シングル第3弾で、作詞は松本隆。初の10万枚超えでスマッシュヒット。B面『涙のワンサイデッド・ラヴ』は詞・曲とも本人が担当、アレンジは山下達郎。

『恋の嵐』(1986)

恋の嵐,竹内まりや

ドラマ主題歌として書き下ろし。不倫をテーマにした曲を明るく歌うところがまりや流で、まさに時代を先取り。アレンジの達郎氏も内心複雑?

【チャッピー加藤】1967年生まれ。構成作家。
幼少時に『ブルー・ライト・ヨコハマ』を聴いて以来、歌謡曲にどっぷりハマる。
ドーナツ盤をコツコツ買い集めているうちに、気付けば約5,000枚を収集。
ラジオ番組構成、コラム、DJ等を通じ、昭和歌謡の魅力を伝えるべく活動中。

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