11日目、館内に座布団が舞いました。新関脇のが横綱白鵬を破り、通算最多1047勝達成に待ったをかけた。これまで、不戦勝が一度あるだけで、全く歯が立たなかった大横綱に一瞬の早業で殊勲の星を上げました。
「横綱も記録がかかっていた一番で、緊張感が伝わってきた。何とも言えないけど、めっちゃうれしかったですよ」
と話しています。
現在、三役以上で平成生まれのホープといえば、大関の高安、照ノ富士と、御嶽海です。2人との違いは1人だけ、大卒力士ということでしょうか。一見、学生横綱、アマチュア横綱になって、幕下10枚目格付出デビューはかなり有利な条件と思われがちです。しかし、これまで大卒の横綱は輪島1人。大関も4人と意外に昇進者が少ない。三役にはなれても、それ以上は見えない厚いカベがある。
高安が今場所から大関をつとめているだけに、ライバル意識から「早く高安関と同じ地位になりたい」と燃えていたことは確かでしょう。ところが、御嶽海、取材ではよくしゃべる代わりに、けいこをしないことで有名。たたき上げで、けいこ熱心の高安とは対照的です。よく、相撲界では、三年先のけいこという言葉が使われます。幕下で一生懸命、けいこをしておけば、3年後には関取になれる、そんなところから来たもの。御嶽海は、それを聞いて、
「3年後にひざがこわれたら、どうするのでしょうね」
と言い放つ。
根性や忍耐などの言葉とは無縁で、憎めないキャラクターなのです。
「ぼくは、今、このときのけいこでやっています」
と独自の力士論まで展開。アマチュアでの実績は個人15冠の相撲エリートです。東洋大を選んだのは、濱野文雄監督から、復活に力を貸してほしいと勧誘を受けたのがきっかけでした。なるほど、名門復活の原動力となったわけですが、プロ入りする気持ちなど全くなし。和歌山県庁への就職が内定していました。
それを出羽海親方(元前頭小城ノ花)が、大学同様に、
「最近、幕内力士が出ていない。今は名門とよべないかもしれないけど、再興させたい」
とまたもや、切り札としてスカウトを受ける。もっとも、御嶽海は、出羽海部屋を名門とは知らなかったところも言い。ここで、ひとつの物差しになったのは、2歳上の遠藤でした。幼少時から、遠藤の存在は全国区。男前で強い。小学生の間で有名だったそうです。その遠藤と大学時代はほぼ互角の成績で、先にプロ入りし活躍したことから、
「遠藤さんもかなりやっている。自分もいけるのでは…」
と方針転換。
昨日の白鵬との一番で勝ち越しを決め、二ケタ勝利も見えてきた御嶽海。ここを足掛かりに、まずは大関を期待したいところです。
7月20日(木) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」