「西川貴教に救われた男」と「ラジオ的発想」

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毎回、全国各地で放送された面白い番組を紹介している配信番組「週刊 ラジオ情報センター」 で、ニッポン放送アナウンサー吉田尚記やライターやきそばかおると共に出演している、放送作家のシオンJr.。

「一体、何を食べたらそんなお腹になるんだ」というポッコリお腹がトレードマークの彼に、配信仲間のやきそばかおるがインタビューした。

「西川貴教に救われた男」と「ラジオ的発想」

やきそばかおる(以下、やきそば):「週刊 ラジオ情報センター」を始めて1年以上になりますが、「やきそばさん、シオンJr.さんとツイキャスをやってますよね。シオンちゃんによろしくお伝えください」って言われることが増えて。

シオンJr.(以下、シオン):そうなんですか! 僕のことが話題になってるんですか!

やきそば:”話題”…というか、「どんな人なのか、聞かれることが多くて」。シオンちゃんは学生の頃から西川貴教の大ファンで「西川貴教のオールナイトニッポン」のハガキ職人としてハガキを送っていて。みんな「西川貴教のオールナイトニッポン」を聴いていて、それで常連だったシオンちゃんの名前を覚えてるっていう。

シオン:ありがとうございます。

やきそば:「ラジオ情報センター」でも、シオンちゃんの人となりについて少し触れたことがあるけど、改めておさらいすると、西川貴教さんの番組に命をかけてたんですよね?

シオン:初めて採用された番組は西川さんの番組ではなく、「ロンドンブーツ1号2号のallnightnippon SUPER!」だったんです。でも、ハガキ職人のレベルが高くて、なかなか読まれなくて。色々な番組に出していくうちに、僕が好きだった西川貴教さんの「オールナイトニッポン」で読まれるようになってきたんです。

やきそば:まさに「好きこそものの上手なれ」という感じですね。

シオン:西川さんの番組では、採用されたネタの枚数がランキング形式で発表されてたんですけど、僕が出し始めた頃は上位10人がほとんどガッチリと固まってきていて、そこに食い込むのは無理なんじゃないか、と思ってたけど、それが徐々に上位に上がってくるようになって。

~そして、いつしか、シオンJr.は晴れてトップ5に入る。「西川貴教のオールナイトニッポン」では上位のハガキ職人をスタジオに招待していて、シオンちゃんも念願のニッポン放送(当時は本社屋の建て替え中で、お台場に移転していました)に足を踏み入れた。~

やきそば:ラジオ局に入る時のドキドキ感、ものすごくよく分かります!

シオン:とにかく緊張してて…。3人ほど招待されたんですけど、副調整室の端の方で見学していました。西川さんはCMに入るとブースから出てきて話しかけてくれたり、本番が終わった後も少し話してくれました。

やきそば:シオンちゃんから見て、西川さんの魅力とは?

シオン:とにかくリスナー思いで、一緒にラジオを盛り上げる仲間として接してくれるところですね。一言で言えば「親しいお兄さん」的な存在です。

~そんなシオンJr.が西川貴教のラジオ番組を聴くようになったきっかけは、彼の新曲をいち早く聴きたかったからだそう。番組を聴いてみて、その面白さに没頭してハガキを出すようになったシオンJr.は、学生時代に新潟で送っていた生活にこれといった面白みを見出せずにいたこともあり、ラジオの世界にのめりこんでいった。いつしか、「早く上京したい」とばかり思うようになったという~

やきそば:僕は山口出身だから、学生時代の僕からすると、東京は遠くすぎて”異国”の世界と思うぐらい、縁がないと思っていて、山口とか福岡の番組をよく聞いてたけど、新潟だと東京から近いから出ようと思えば出られちゃうんですよね。

シオン:ただ、「西川貴教のオールナイトニッポン」のスタジオの見学が終わった後で、西川さんの番組を数多く手がけている、放送作家の石川昭人さんに「ラジオの仕事に就くにはどうしうたらいいですか?」と聞いたら、ニッポン放送に入るには学歴が必要だから勉強しろって言われて。そこで親に「早稲田大学に入りたい」って言ったら「バカじゃないの!?」って言われたんです。で、大学には落ちてしまったんですけど、「とにかく上京したい!」という衝動は止められなくて、思い切って上京したんです。上京後も、西川さんを笑わせるべく、ひたすらハガキを書く生活が続きました。

やきそば:これって、今になって思えば「青春物語」ではあるけど、冷静に考えると怖い選択ですよね。

シオン:もちろん、働いたこともあるんです。ただ、なかなか面接でも受からなくて、面接を受けて帰ってPCを開いた時には”不採用”のお知らせが届いてたりして。『さすが、仕事が早い!』と思いました。ただ、それはまだ我慢できる話であって、「西川貴教のオールナイトニッポン」が終わると知った時は、とにかくショックで…。番組でも「コイツは番組が終わったら、どうやって生きていくんだろう」っていう話になったぐらいで、とにかく、番組が終わって数年間の記憶がないんです。しばらくして、西川さんのニコ生配信番組がスタートしたりして、再びネタを書き始めました。

~その後、色々な縁があり、シオンJr.はニッポン放送での仕事をスタートさせた。Webメディア「allnightnippon.com」の編集部に所属しながら、「オールナイトニッポンi」を中心に放送作家としても活動している。~

やきそば:僕がいつも気になっているのは、本番中の放送作家さんの笑い声。深夜番組では笑い声が大きい作家さんと、敢えて稀にしか笑い声を出さない人もいて、面白いな〜と思っていて。「どちらが良い」という訳ではないんですけど。

シオン:それは僕もすごく気にしてます。「西川貴教のオールナイトニッポン」など、西川さんの番組を数多く手がけている、作家の石川昭人さんは、高くて大きな声で笑うけど、あれってまねしようと思ってもできないんです。笑う時に使っている喉が違うんじゃないかと思って。

やきそば:文字で表すのは難しいけど、強いて書くなら「ゲラゲラゲラゲラ」っていう笑いですね。

シオン:石川さんのような笑い声は、普段から大きな声を出せる人にしかできないと思って。

やきそば:「笑い声オーディション」みたいなのがあったら面白いかも。サンプリングしておいて、1番を押すと男の笑い声、3番は女子高生、8番はおばちゃんで、9番はセクシーな笑い声とか。

シオン:セクシーな笑い声が聞こえてきたら、喋ってる内容が頭に入ってこない(笑)

「西川貴教に救われた男」と「ラジオ的発想」

やきそば:シオンちゃんは、どんな企画をやってみたい?

シオン:企画というか、S.E.(音)でもっと遊べるんじゃないかと思ってて。以前「西川貴教のオールナイトニッポン」に加藤晴彦さんがゲストで登場した時に、本番中に加藤さんの足をテーブルの下からいきなり引っ張って脅かしたんです。そしたら加藤さんがビックリして大声を上げて、それをサンプリングしたんです。その大声を番組で時々使っていて、トークの内容が頭に入ってこなくなるぐらいおかしくて(笑)。

やきそば:そういう演出って、今はあまりないけど「コサキンDEワオ!」では効果的に使ってましたね。あと、「うまいな〜」と思うのは、STVラジオの「ウィークエンドバラエティ 日高晤郎ショー」(土曜 8時〜17時)は、ゲストに演歌歌手が遊びにくるから、FAX番号を言ってもらった声をサンプリングしておいて、それを放送で使ってますね。

シオン:ラジオではないけど、前から思っていたのはテレビの実験的な企画で、ドラマの映像にその場面にふさわしくなさそうな挿入歌を入れてみるとか。映像的にアンバランスで面白くなりそうで。

やきそば:例えば、女優の吉岡里帆さんがおはぎを食べてて、そこに何の脈絡もなく小田和正の「ラブストーリーは突然に」のイントロが流れ始めるとか。

シオン:そうそう(笑)。何か起きそうな雰囲気で。

やきそば:”ふさわしくない”という言葉が出てきたから思い出したけど、シオンちゃんからの質問の中で、記者会見に関する話が出てきたから僕なりに答えたけど、実は僕も何年仕事をしても、質問がとかリアクションがふさわしくなかったんじゃないかと思って、不安でいっぱいになるんです。

シオン:そうなんですか。やきそばさんでもそうだったのなら安心したというか。いや、安心してる場合じゃないけど。例えば、あのピーンと張り詰めた空気の中で質問して先方が答えたあとに、どんな一言を言えばいいのか分からないですよね。例えば、ある俳優さんにアイスクリームに関することを聞かないといけなくて「最近、アイスクリームにキャラメルが増えましたけど、◯◯さんはこの最近、増えたことはありますか?」っていう。

やきそば:あぁ〜、定番のやつだ。掛言葉で質問内容を考えるっていう。

シオン:すると、相手は答えてくださるんですけど、答え終わった後に、なぜか微妙な空気になることが多くて、その時に何と言えばいいのか分からないんです。

やきそば:時と場合によって使い分ける必要があるけど、返答に困った時は「貴重なご意見、ありがとうございました」って言うのが良いですよ。ただ、全く「貴重」な話ではなかった時に言ってしまうと、相手にとって嫌味に受け取られかねないので、その点だけは、気をつけた方がいいかもしれません。

「西川貴教に救われた男」と「ラジオ的発想」

やきそば:シオンちゃんも僕もフリーランスとして活動していて、後ろ盾がない怖さを味わいつつ、東京の片隅で生活しているわけですが、人とお会いして「この人、合わないな〜」って思うような人はいますか? ちなみに僕の場合は「この人、人に意見聞いておきながら、全く反映しようとしてないな」と思うような人と話す時は、絶望と恐怖しか感じないのですが。

シオン:気持ちは分かりますが、やきそばさんもかなり闇を抱えている気がしますね(笑)。僕の場合は、アニメに対して偏見を持っている人とは分かり合えないですね。時々、頭が硬いような人がいて、僕がアニメ好きだと知ると「アニメが好きなの? ふーん…」みたいな反応をしてくる人っているんです。この傾向は40〜50代以上の人に見られる気がしていて、若い世代の人の方が柔軟な気がします。「オタクを毛嫌いする点で古い」って思うんですけど。「この人と人間関係を築くのは難しい」と思うと、ドライに接しますね。そのあたりの割り切りは早くて。

やきそば:確かに、人間関係も大事だけど、「なんでも言うことを聞きます」っていうのは、良いように見えて、八方美人な気がします。

シオン:若手の頃は、どんな人にも企画書を送ってたけど、ある時期から「それは違うな」って思うようになってきたんです。”人を選ぶ”っていうと語弊があるかもしれないけど。人が考えた企画を大事にしない人っているじゃないですか。きちんとしてる人って、面白さの種を見つけたら、きちんと掘ろうとするけど、アイデアを大事にしない人って、それに気付かないという。例えば、「高橋みなみ 朝井リョウ ヨブンのこと」(ニッポン放送 日曜 10時30分〜11時)に出演している、小説家の朝井リョウさんは、色々なアングルから人間性を掘ろうとしますよね。ラジオネームとか、文章の内容とかも、良い意味でいちいち引っかかってくれて、何でもないようなことでも触れてくれるじゃないですか。あの感覚ってものすごく大事だと思います。「どうでもいい」の一言で済ませない感じっていうか、小さいことも気にして、イマジネーションで掘っていく”ラジオ的な発想”というか。

やきそば:ラジオ的な発想で、どうでもいい話ができるかどうかって、大事ですよね。テレビ的な発想だと、ひたすらテレビをザッピングしているだけ…という感じで立ち止まらないから、想像を膨らませようとしないですよね。これはラジオに限った話ではないけど、結局、面白いアイデアとか人材って、”何が面白いか”をきちんと分かってる人で、一緒に楽しんで考えようとする人に集まりますからね。…といっている間に、いつの間にか、愚痴っぽくなってきちゃいましたね(笑)。ちょっと、夢のある話を聞きたいので、シオンちゃんの今後の展望を聞かせてください。

シオン:ラジオを色々とやってみたいのはもちろん、ラジオ以外にも舞台の仕事とか、歓声を聞いてみたくて。お客さんから歓声が起きると「今のは自分が仕掛けたもの」って思えるじゃないですか。舞台が成功した体で喋ってますけど(笑)。そういう気分を味わいたいんです。他にもやりたいことが山ほどあって、それで色々とお金をいただいて、ゆくゆくは秋葉原のUDXの隣の高級マンションに住みたくて(笑)。

やきそば:具体的(笑)。まさに、夢があるね〜! 今日はありがとうございました。

ニッポン放送・吉田尚記アナウンサーと、ラジオライター・やきそばかおる、放送作家のシオンJr.の3人が、担当する配信番組『ラジオ情報センター』は、毎週月曜日の21時からツイキャスで配信されている。

<配信番組「ラジオ情報センター」URL>
https://twitcasting.tv/yoshidahisanori/

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