長い道のりが続くのか…座間・遺体遺棄事件
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「10年に一度の事件だ」…警視庁内からはこんな声が聞こえました。
神奈川県座間市のアパートで起きた死体遺棄事件、東京・八王子市に住む女性が行方不明になったことをきっかけに警視庁が捜査に関わったこの事件は、15歳から26歳の男女9人の遺体が室内から見つかるという、犯罪史上に残る凄惨な事件となりました。
死体遺棄の容疑で白石隆浩容疑者が逮捕されたのは2017年10月31日、その後、11月6日に八王子市の女性が、そして11月10日に残る8人の身元が判明したと発表されました。当初は身元を示すものがほとんど処分されたという情報もありましたが、その後、IC乗車券、キャッシュカード、診察券など身元につながる手掛かりが見つかり、携帯電話の位置情報なども解析、DNA型の鑑定により、10日ほどの時間が経て、全員の身元判明となりました。捜査員ほか関係者の苦労、苦悩は並大抵のことではなかったと思います。
先週、私は改めて現場アパートに足を運びました。小田急小田原線相武台前駅から歩いて数分、駅前の幹線道路からやや外れて線路沿いの住宅街にたたずむアパートの前には規制線が張られ、赤色灯のあるワゴン車が1台停まっていました。建物の一部は依然、ブルーシートに覆われています。アパートの壁に張ってある「FOR RENT」という文字、その下に記されていたとみられる連絡先は黒く塗りつぶされていました。
道路を挟んだ路肩には多くの花が、そして、被害者の知り合いからとみられるお菓子も供えられていました。そこには「また会おうな」などと言葉がしたためられていました。そこで手を合わせる人の姿もありました。近所に住む20代の男性は「行き場のない人たちの弱みに付け込んだ犯行は卑劣だ」…こう話した上で、「インターネット上で助けを求めるしかなかった人たちの友人や家族との関係はどうだったのかは気になる。周りにもインターネットをそうした“逃げ場”として求めている人がいるので…」…インターネットやSNSを介した事件ということから、周辺でもあり得ることと認識している様子がうかがえました。
白石容疑者の供述ですが…謎は少なくありません。警視庁の捜査本部によりますと、「3人目から8人目は殺害した順番を覚えていない」…これが事実だとすると犯行の無差別性も浮かび上がってきます。
また、最初に殺害したとされている21歳の女性と白石容疑者はツイッターで知り合ったといいます。そして2人目とされる知り合いの男性と公園で酒を飲み、その後、女性が自分の口座から現金およそ50万円を引き出し、アパートを契約する白石容疑者に渡したということになっています。なぜ、50万円という大金を、知り合って間もない被害者が自ら渡すことに至ったのか?謎は深まります。何よりも白石容疑者からは早い時期に「金銭目的」という供述もありました。ならばなぜ女子高校生を狙ったのが、合理的な理由に乏しいと言わざるを得ません。捜査本部はこうした供述の真意も含め、慎重に見極めているとみられます。
現在の容疑は9人のうち、1人に対する死体遺棄です。今後、再逮捕となる公算が大きい中、1人ずつの容疑で逮捕するのか、一気にいくのか、また殺人容疑での立件は?…捜査本部は事実を丹念に積み重ねながら、先の裁判も見据え…難しい判断を迫られることになりそうです。
ちなみに殺人事件として立件していくには、何よりも死因が重要です。しかし遺体の損傷が激しく、特定ができない…つまり、殺害されたのかどうか、客観的に説明するのが難しい状況です。
そこで白石容疑者の供述がカギを握るわけですが、ここへきて供述は二転三転、あいまいになってきています。また前述の通り、発言の真意がくみ取れない中で、供述調書のサインを拒否し始めていると伝わっています。
「年を越すのではないか」…警視庁内部からはこんな声も聞こえてきます。捜査関係者の戦いは長期戦となりそうです。そして我々メディアの営みも同じところにあると思います。