ペットロスで引きこもり状態のアラ80女性を救った、保護犬との偶然の出会い

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【ペットと一緒に vol.72】

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70代後半で愛犬を亡くしてからペットロスに陥り、外出する気力もなくなってしまったという、美香さんのお母さま。暗い雰囲気に包まれたままの美香さん家族を救ったのは、偶然にも友人が一預かりをしながら新しい家族を探していた小さなテリア犬でした。今回は、5歳で美香さん宅にやってきた、「まるで天使」のようなチビちゃんとご家族の感動ストーリーをご紹介します。


17歳まで生きたからこそ……

ご両親と同居をしている美香さんは、ずっと犬と一緒に生活をしてきました。

「一度も、お金を出して犬を購入した経験はないんですよ。拾い犬だった前回の愛犬ハナも、昔ながらの中型の雑種」なのだそう。それでも一度も、いわゆる“外飼い”をしたことはなく、いつも自宅内で家族の一員として大切にしてきたと言います。

「そのため、やはり愛犬が旅立つたびに、うちの中にぽっかりと穴が空いたような雰囲気になりますね。とくにハナは17年という長い歳月をともに過ごしたので、母の落ち込みようは相当なものでした」と、美香さんは振り返ります。

お母さまにとって日課だった毎朝の散歩にも、愛犬なしでは行く気にならないと自宅にこもるようになり、毎日泣いてばかりの生活になってしまったのだとか。

「私は毎日仕事で日中は家を空けてしまいますし、父は母をどう元気づけようか戸惑う部分もあったのではないでしょうか?」と、美香さん。

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老犬になっても「美犬」と評判の高かったハナちゃん

お母さまが元気を取り戻せるかと、犬を再び飼うことも考え始めた美香さん。「でも、時代は変わって近所で“拾い犬”に巡り会えるチャンスもないですし。愛護団体から保護犬を迎える選択肢も検討したのですが、条件などの面でむずかしい部分もあって、ちょっとハードルが高くて……」。

そんなとき、社会人になってからの勉強仲間が久しぶりに集う機会があり、美香さんはその友人から思わぬ言葉をかけられたのです。

「友人が繁殖現場からレスキューした犬を一時預かりしながら、里親募集をしているのはSNSの投稿で知ってたんですけど、かわいいコだったからもういないだろうなと思っていたんです。そうしたら、『まだ譲渡先が決まらないの。どう?』って」。

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一時預かり先では愛情をたっぷり注がれて

運命を感じた美香さんは、さっそくご両親に相談。

「正直、ええ~っ? 我が家に“高級そうな洋犬”っていう違和感はありました(笑)。なにせ、これまで和犬というか雑種しか飼ったことがなかったので」という美香さんに、友人は「体重は5キロほどとコンパクトだけれど、生粋のテリア種だからけっこうアクティブで、愛玩犬ではないし、犬を飼いなれたお宅に行くのが幸せだと思うの」と、ていねいにその犬の性格や犬種の特性などを説明してくれたそうです。

階段には滑り止めのマットを敷いていたりと、もともと犬にやさしい生活環境が整えられていたこともあり、美香さん家族はそのテリア犬をすぐに迎える決意を固めました。


たくさんの“びっくり”

美香さん家族のもとへやってきた小さなテリアは、チビと名付けられました。「以前の愛犬が17キロありましたから。それに比べれば、すごく小さい気がしたので」というのが、命名の由来。

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美香さんも一目で気に入った5キロの“洋犬”

美香さんは初日から、驚きの連続だったと言います。

「まずびっくりしたのは、チビが到着直後から、母のあとをずっとくっついてまわったところですね。母がトイレに行けば、扉の前でずっと待っているし、洗濯物を干しているときもそばにいて……。そして、初日から母の布団で一緒に眠りにつきました」(美香さん)。

さらに、排泄の問題もなく、ほとんど吠えず、家具などを破壊したりといったお困り行動も皆無。

「5歳という年齢も理由かもしれませんが、落ち着いていて。それと、一時預かり中の友人宅でのケアがとても良かったのでしょう。もう本当に、天使のようにいいコが我が家にやってきたと感動でした」(美香さん)。

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明るい笑顔がチャームポイント


アラ80で犬友も増える!

チビちゃんのおかげで、お母さまは再び朝の散歩を再開。人にも犬にもニコニコとフレンドリーなチビちゃんは、たちまち近所で人気者に。

「おかげで、母や私たちに新しい犬友もできました。犬を飼っていない人でも、毎朝チビとあいさつを交わすのを楽しみに待っていてくれる人もいるんですよ」とうれしそうに話す美香さんには、もうひとつ驚いていることがあるそうで、「チビは、脚が悪い母のゆっくりした足並みに揃えて歩いてくれるんです。毎夕に父が散歩するときよりも、ずっとスローペースです。チビのやさしさに心が打たれました」とのこと。

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散歩に出れば「チビちゃんおいで~」と大人気

あまりにかわいいチビちゃんをたまには独り占めしてみようと、美香さんが抱っこしたり自室のベッドに連れてきて一緒に寝ようとしても「『え~? なんでよ!?』と、ご不満顔(笑)。まさに、母のために我が家にやってきたコだったんだな~って思います」。実はチビちゃんは、レスキューされた直後の健診で重度の子宮内膜症が発見され、あと数週間発見が遅れれば命の危機もあったそうです。

そんなチビちゃんが美香さん家族のもとに来て、およそ2年。美香さんは当時をあらためて思い出し、ひしひしと感じることがあると言います。

「もちろん犬が来れば喜ぶとは思っていましたが、1年以上もペットロスから立ち直れずに暗い顔をしていた母を、一瞬で明るみに導いたチビの力には本当に驚きました。娘の私にも父にもできなかったことを、その存在だけで成し遂げる犬って、本当にすごい!」

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「なんか最近、母とチビの顔が似てきた気がするんです(笑)」(美香さん)

チビちゃんはこれからもずっと、美香さんのお母さまに寄り添いながら、まわりの大勢の人々にも笑顔を運ぶ天使のような存在でいてくれるに違いありません。

連載情報

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ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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