【月イチ連載コラム:工藤大輝と偶像音楽論(通算 第19回)】
昨今のアイドルシーンにおいて、楽曲派という表現は適切ではないのかもしれない。
良質な楽曲を提供するグループが今のシーンには沢山いること、そしてそれを強みにするグループが増えたこと。それによってキャッチとして楽曲が良い、と言うポイントから更に一つ上をいかなければその先へと抜けることはできなくなってきたことで、最近よりその辺を強く考えるようになりました。
それなら同じ土俵、似たような条件下でどう戦うか。
どう生き延びていくのか。
例えばモデル、例えば女優、例えばデザイナー。そして例えばユーチューバー。特技や趣味を研ぎ澄ませて結果に繋げることは絶対的に必要なスキルの一つです。
アイドルと言うのはクリエイティブから最も離れたところにいるという昔からの固定概念は既に現代社会、特に音楽シーンからすると的外れで、わかりやすく言うとSNS、接触の仕方などなど様々な要素に対してセルフプロデュースの上手な人から少しずつ抜けていく世の中になりつつあります。例外もありますが。
加えて、僕は必ずしも「アイドル=音楽をやる人」ではないと考えてはいますが、やはり音源をリリースしてライブをしてナンボ、という根底にあるテーマみたいなものは変えられそうにありません。
そんな中、一組のグループに注目させていただきました。
callme / Hello No Buddy
https://itunes.apple.com/jp/album/hello-no-buddy-single/1321229759
この曲、現時点でミュージックビデオが無いので、iTunesのリンクになりますが、是非聴いてほしい一曲です。
この3人はプロデュースワークを自分達でやられている、言わば一つの完成されたプロジェクトで、メンバーがビジュアルワーク、作詞作曲と、およそ制作物に関わる殆どに携わっているとても珍しいパターンのグループです。
callme / Sing along
https://youtu.be/2ggGDDwHY3c?list=PLFmK_sR9nwtvYp2El25OMeYJ5dTQmD_sS
Lunchmoney Lewisのようか軽快さと綺麗なピアノリフが心地良いこの楽曲も個人的にオススメです。というより全曲を通してお洒落なピアノリフがcallmeさんの最大の特徴かつ強みだと思います。綺麗なお姉さんのようなイメージというのを音で体現しているかのように。
個人的には数年前Dorothy Little Happyの頃から知ってはいたものの、しっかりとライブを観たのは最近の話(フィロソフィーのダンスさんとの2マン)で、その完成度の高さと安定感に驚きました。フィロのスさんが勢いと爆発力ならcallmeさんは強かさと安定感。そんな真逆ですが音楽的には同じ匂いを感じられるとても良い2マンライブでした。
話が少し逸れましたが、こんなにしっかりと定まった音楽をやられていて且つその楽曲をメンバー本人がプロデュースしているとなると、もうアイドルではなく専門職の域に達しているのではないかと思ってしまいます。アイドルのフィールドで戦うアーティストと言っても過言ではないかと。
色んな曲を聴き比べるとどことなく「ぽさ」と「統一感」があって、それは色んな作家さんに発注をかけて作り出す音楽とは全く別物のような気がします。
バンドの方々は当然曲を書くし詞も書きます。国内のダンスボーカルやアイドルの大多数は何故そうならないのか、それはまた別の機会にお話ししたいとは思いますが、そんな既存の枠組みから飛び出した全く新しいグループがcallmeさんなんだと思います。
これから成熟していく過程でどんな音楽を生み出してくれるのかを楽しみにできるアイドルと言うのは今までいなかったと思います。そういう部分に期待と希望を込めながら動向を見守りたい、そんな風に思っています。ライブにもまた必ず行きたいです。ダンスも素晴らしいので。
と言うことで今回はこの辺で終了とさせていただきます。次回も楽しみにしていただけると幸いです。