新潟県知事選挙～複雑で独特な政治土壌をひも解く

By - NEWS ONLINE 編集部　公開：2018-05-17 　更新：2021-01-29

5/17　FM93 AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ！④

与野党対決の新潟県知事選
7：43～ココだけニュース　スクープUP！：コメンテーター鈴木哲夫（ジャーナリスト）

新潟県の米山隆一前知事の辞職に伴う知事選へ、市民グループから出馬を要請された元副知事で海上保安庁次長の花角英世氏。立候補に前向きな姿勢を見せた＝2018年5月9日東京都台東区　写真提供：産経新聞社

越山会からの流れもあり、独特な選挙土壌の新潟

辞職した新潟県の米山隆一前県知事の後任を決める新潟県知事選挙が、今月24日に告示され、来月10日に投開票で実施される。これについて前海上保安庁次長の花角英世氏（59）が会見をして、正式に出馬表明をした。その他、野党側としては池田千賀子新潟県議が出馬を表明し、この方が野党の統一候補となる見通し。

飯田）これは「来年の統一地方選挙や参議院選挙の前哨戦では？」と政治面を賑わせていますね。

鈴木）そうですね。確かに大きな選挙ですから、時の政権や政治状況を反映します。あとは、仕組みですよね。与野党対決の候補の対決になっている。その意味では確かに「前哨戦」という見方もできる。
ですが、新潟の選挙区は、選挙事情というか、土壌がかなり独特ですよね。新潟県の政治家といえば？

飯田）やはり、田中角栄ですよね。

鈴木）彼は自民党で、総理大臣もやった。ある意味保守かもしれないけれど、地域に非常に根ざした保守ですよね。この保守の1つの流れが、いろいろなところに分かれている。だから、単純な与野党対決ではなく、たとえば野党系の議員にも保守の地盤の人が応援に入っていたり、その逆もある。

原発推進派　VS　反対派

飯田）やはり、歴史的に「越山会とドーンと一致団結！」というのがあったのが、その後、田中眞紀子さんの時代になって、彼女が自民党から民主党に行ったりして、その辺で捻れた部分がまずあるわけですね。

鈴木）そうですね。イデオロギーや中央の対決構図以外に、地域に田中角栄以来のいろいろなものが残っている事情も絡んでいるので、単純に「与野党対決」という感じでもない。さらに、政策テーマでいくと、原発ですよ。

飯田）柏崎刈羽原子力発電所、ですよね。

鈴木）それの是非がある。これを巡っても、本当なら政権サイドは原発推進で、野党は反対している二項対立に見えますが、実は、たとえば連合の1部が原発推進派だったり……ここも相乗りが互いに乱れてしまっているところがあるわけです。

飯田）電力とか、あるいはメーカー系の基幹労組とかは、どちらかというと「原発は進められるならその方がいい」という立場ですよね。

鈴木）その意味では、構図としては、単純に前哨戦、中央の与野党対決という結果になるかというと、そうではなく非常に複雑ですね。

無党派層の判断が大きな影響を与える

鈴木）ただ、複雑だからこそ、一般のいわゆる「無党派」の判断が非常に影響してくるわけです。そういう複雑な選挙だけに、あまり政党に色がない人たちが、どちらかというと冷静に、変な対立やしがらみもなく投票する。ある意味いまの世論に近いようなものが出て来る側面もある。
現状は「自公対野党」みたいになっていますが、そういう側面もありながら、この選挙はご覧になったらいいと思います。

飯田）前回の選挙のときも、前知事の米山さんより、元長岡市長の森民夫さん。

鈴木）この人は全国市長会のトップだったり、中越地震のときに危機管理とかいろいろ対応したり、かなりの人だったんですよ。

飯田）森さんの方が有利といわれていたのがひっくり返りましたよね。

中央の政局での予想をそのまま当てはめることはできない

鈴木）これも中央の論理でいくと、「それだけの人だ」と。あと、与野党構図を見ると、「森さんだ！」は中央の見方だった。今回も「前哨戦だ！」は中央の見方。ところが、選挙区に落とし込んでみると、先述の事情があって、結局、森さんは負けてしまった。
なので、新潟と中央の政局をそのままはめて見ると、見誤る気がします。だけど、そういう複雑だけに、無党派層、つまり世論が、わりと冷静に投票行動をする。これが少し見えてくるのではないでしょうか。

飯田）新潟は支持基盤とかが複雑になっているにしては、不思議と野党共闘みたいなのが、上手く行きますよね。

鈴木）ここは、この前の参議院知事選もそうですが、なかなか上手く行くところです。その意味では、野党としてはこれをきっかけに、いま中央で「野党は四分五裂している」と言われているのに弾みをつける思惑があるでしょう。
自公としても、やはり勝ちたいけれど、安倍さんの支持率が落ちているので、そこに直結しないような形で。勝てば宣伝すればいいです。しかし、負けたらやはりね。その辺のバランスが難しいので、二階さんも表では「冷静に頑張る」と言っていて、「普通以上に頑張る」と言っていない。その辺はちゃんと距離感を測っている気がします。