米中協議再開しても中国がアメリカに勝てない理由

By - NEWS ONLINE 編集部　公開：2018-08-17 　更新：2021-01-27

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（8月17日放送）に外交評論家の宮家邦彦が出演。米中による事務レベルでの貿易協議再開について解説した。

米中が事務レベルの協議再開へ

中国商務省は16日、王受文商務次官がアメリカの招請に応じ、今月下旬に訪米してアメリカのマルパス財務次官と協議すると発表した。米中の公式協議は6月上旬を最後に途絶えており、その後は互いに関税を掛け合う「制裁合戦」が続いている状態。事務レベルの協議を再開し、打開策を模索するとみられている。

飯田）わざわざ「アメリカの招請に応じ」と発表しているようです。

宮家）自分で行きたかったのでしょう。チキンゲームの我慢比べをやっていたのだけれども、主戦力は中国の方にもないわけじゃないですが、やはり力関係で中国に脆弱性があるのは間違いないのです。トルコを見ればわかるけれども、1つ間違えば国際マーケットが必ず反応しますからね。それでリラが下がっていったわけでしょう。中国でそういったことが起きるという意味ではないけれども、国際経済に依存している中国経済を考えれば、アメリカとこんな喧嘩をしていても突っ張れるわけがない。もちろんメンツがあるから招請がないと行けないのですが、招請してくれれば行くのだから同じことです。
問題は、どこまでやれるかというところです。第一、あまり大きな譲歩はできないでしょう。次官レベルで大きな譲歩ができるわけがないのです。アメリカが、どの程度だったら矛先を下ろせるのかを探りに行くのだと思います。逆に言うと、あまり譲歩し過ぎたらアメリカは「中国がこんなに譲歩したぞ」と発表します。それがどこへ行くかというと、習近平さんにブーメランとして戻ってくるわけですよ。そのときに「アメリカではこんなに譲歩するのか」と反感を買うわけです。恐らくは中国がイニシアティブをとって協議再開に持って行こうとしているのだろうけれど、ではそれで具体的に絵が描けるかというと、それはまだ早いと思います。

アメリカが本気になれば関税だけでは済まない

宮家）しかもいまやっているのは所詮関税の話ですよね。でも関税だけではなく、トルコの例を見れば次は間違いなく通貨にいくと思います。そうすると経済、金融も含めた複合戦になる。アメリカは少なくとも中間選挙までは簡単に降りるわけがない。大幅に中国が譲歩すれば選挙に利用するし、しなければ中国に厳しくやっていれば選挙のキャンペーンにはなる。

飯田）「トランプはよくやっているじゃないか」となるわけですね。

宮家）そうなるとなかなか中国も打開策を見つけるのは難しいと思います。

中国は経済改革をやるべき

飯田）アメリカは知的財産権を含めた様々なことを要求していますが、経済改革をやれと言っていますよね。

宮家）この間習近平さんにお手紙を書いたのですよ。時々書いていて、なかなかお返事は頂けないのですが、私がそこで言ったのは「喧嘩するのもいいけれど、大変ですよ」と。我々もやったけれど。

飯田）80年代に。

宮家）その前もやったけれど、相手が本気になったら辛いので「中国がやらなきゃいけないのは喧嘩じゃないでしょう。それよりも中国経済の保護主義的な体質をやめて、構造改革をやって、中国経済を本当の意味で国際経済に順応させる。これをやらなければいけないですよ」と書いたのですが、お返事がないのです。

飯田）これは相当痛いところを突いたお手紙だったんじゃないですか？

宮家）そんなつもりはなくて、真摯に「改革が必要です」と申し上げているのですが、なかなか中国の人たちに話を聞くと強硬論もあるようで、迷っているのだと思います。あれだけ拳を振り上げて、アヘン戦争以来の歴史的屈辱を晴らす絶好のチャンスだと思わない方がおかしいわけだから。

飯田）中国の夢と言われていますね。

宮家）それで突っ走ってきた人に「譲歩せよ」というのは難しいのかもしれないけれど、トランプさんはそれを承知の上でやっている。トランプさんがこんなに強硬になってくるのは、中国の想定外だと思います。

飯田）大きな読み違えがあったわけですね。