自民総裁選～「安倍圧勝」とは言えないこれだけの理由

By - NEWS ONLINE 編集部　公開：2018-08-23 　更新：2021-01-27

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（8月23日放送）ジャーナリストの鈴木哲夫が出演。総裁選へ向けて支持派閥やOBの動向について解説した。

安倍総理～いよいよ自民総裁選の出馬表明へ

安倍総理大臣は来週26日、鹿児島県を訪れて自民党総裁選に出馬する意向を表明する。総裁選の日程は、来月である9月7日に告示。20日に党開票の日程で行われる。

飯田）これで、総裁選はすでに出馬表明している石破茂元幹事長との一騎打ちとなる公算が大きくなるということです。安倍さんは「どこで言うのか」だけでしたが、すでにいろいろ情勢分析も出てきていて、「圧勝になるのでは？」みたいなことも言われています。

鈴木）普通に考えれば、まだ告示もされていないし、安倍さんもまだ正式には出馬表明していません。だから、まだこれからです。
ただ、自民党の総裁選は権力闘争です。言葉は悪いですが、何でもありです。国政選挙とは違うわけですから。いわゆる多数派工作も含め、いろいろなことがすでに行われている。そういう部分から、各マスコミも取材しながら、いま「安倍さんが優位」と報道しているのだと思います。確かに私が取材していても、安倍さんが優位な流れです。

国会議員票と党員票～単純な母数だけで判断できない

しかし、まだ分からないことがあります。例えば国会議員票です。単純に支持している派閥数を足していけば、非常に数が大きくなります。ですが、それぞれの派閥にいろいろな意見があります。出るかどうかで揉めた岸田派。これも一致結束して安倍さん支持の流れになるのか。内部に「岸田さんが出るべきだったのに、なぜ出なかったのか」とガッカリしているような人たちがスッと安倍さんを支持するのかどうなのか。
それから、竹下派です。衆議院はほとんど安倍さん支持と言われていますが、いろいろOBが、石破さんで切り崩しをしているような話があります。
無派閥議員の人たちの動向もまだ半分くらい分からないと言われています。何より人気のある小泉進次郎さんがどう動くのか。「100票動く」と分析している安倍さんの側近もいるくらいです。
それから党員票です。自民党の某ベテラン職員の方と話しました。ざっくり100万人の党員票があるけれど、その70万人くらいの方は、ちゃんと会費を払っていて、自民党が下野したときも絶対離れずに支えてきた人たち。政治への意識が高いわけです。そして、地方は地方で、経済も含めていろいろ問題を抱えている。だから、単純な盛り上がりのムードだけでなく、しっかりと選択肢を持って投票するから、これからの議論やいろいろなことを考えて、まだ一般の党員の方がどのような判断を下すか分からない。

安倍総理も早く正式に出馬し、政策論争を繰り広げて欲しい

鈴木）国の総理大臣を決める選挙なのだから、我々としては、論戦して欲しいわけです。早く安倍さんが出馬表明してこの2人で、厳しい時代になるであろう日本の将来についてどう向き合うのか、そういう議論を早く始めて欲しい。

飯田）公開討論なども一騎打ちでやることになりますが、総理･総裁サイドが「逃げ回っている」という報道もありますね。

鈴木）実際そういう話は聞きます。「討論をぜひやって欲しいと言ったら『やらない』と言われた」とか、あるテレビ局のプロデューサーもそういう話をしていました。
1対1の選挙だから、何が起こるか分からないし、そういう議論のなかでリスクもあるわけですから。僕らのように投票権のない一般人からすれば、議論をして欲しいですね。

飯田）一方で、参院の竹下派、吉田幹事長などが言っているのは、「個人攻撃みたいになるのなら、討論をする意味がない。もっと政策でやって欲しい」と言っています。

鈴木）これは多分石破さんの戦略で、僕も驚きました。かなりその部分に先鋭化していますよね。だから、そういうところを攻めるように腹を決めたのかなと思います。
吉田さんが言っているように、何度も言いますが政策論争をやって欲しい。総理も早く出馬表明してステージにあがって欲しいと思います。

OBである古賀誠氏は岸田議員の出馬を望んでいた

鈴木）それから、今回は青木幹雄さんとか、OBが動いているでしょう？　先週、私は古賀誠さんに取材したのですが、古賀さんも岸田さんに出て欲しかったのですね。

飯田）古賀さんがいた宏池会の後輩ですからね。

鈴木）自分が後継に指名しましたから。「総裁候補になって欲しかった。そういう思いで自分は決断して、譲った」と言っていました。だから、出馬しなかったことは寂しそうでした。
もう1つ聞いたのは、参議院のドンと呼ばれていた青木幹雄さんについて。青木さんと古賀さんの間では、「岸田さんでやろう」という話もしたらしいのです。OBとしても、「現在のあまり議論のない総裁選が果たしていいのか？　自分たちの時代はもっと活発な自民党だった」という思いから動いている気がします。
OBの動きや古賀さんの発言で気になったのは、総裁選までもうすぐだと思って取材していたら、「いや、告示までまだどれだけ時間があると思っているの。何が起きるか、分からないよ」と言うのです。だから何か起こすと思い、詳しく聞こうとしたら、そこはニコニコ誤魔化されて聞けませんでしたけどね。ここはOBたちも何かもう一動きあると思います。

飯田）古賀さんというと、前の総裁選のときは野田聖子さんを一生懸命推していましたよね。今回はどうですか？

鈴木）「前回は大義があった。誰も出ない総裁選はマズいから、野田さんが出るのであれば、ということであって、今回は少なくとも石破さんと選挙になるから、大義はない」というような表現をしていました。だから、野田さんで動くことはしないのかな、という感じを受けました。

飯田）一騎打ちのなかでどこまで深められるか、ですね。