ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（9月10日放送）ジャーナリストの須田慎一郎が出演。貿易赤字を巡るトランプ大統領の強硬姿勢とその目的について解説した。

トランプ大統領～日本に貿易赤字削減を強硬プッシュ

アメリカメディアは週末、「トランプ大統領が日本に貿易赤字削減を強く迫るつもりと姿勢を示した」と伝えた。そのなかでトランプ氏は、「安倍総理との関係は現時点で良好」としつつも、「その関係は当然すぐに終わるだろう」と、2国間の自由貿易協定を念頭に、圧力をかけた。

飯田）これに対して日本政府は、現段階では何もアクションはしていませんね。

須田）正式に何か申し出があったわけではないですから。もともと、アメリカ当局としてはUSTR（アメリカ合衆国通商代表部）と、日本は経済産業省がカウンターパートナーになって貿易協議を進めてきました。その頭越しにトランプ大統領が言い始めたわけですから、その真意、意図がどこにあるのか、日本だけでなくアメリカの交渉当局も戸惑っているのが実態です。

飯田）茂木さんと、USTR代表のライトハイザーさんでやるのが決まっている。これも、9月に協議があるはずですよね。

須田）アメリカがトランプ政権になってTPPから離脱したため、別途で日米間はFTAなどの貿易協定を結ばなければならない状況になっています。その作業をずっとやってきている。そのなかでトランプさんが頭越しに言い始めたということは、「この協議は一体どうなるのだろう？」という状況になっています。

トランプ大統領の真意

須田）トランプさんの真意を推し量ると、おそらくこういうことを言いたいのだと思います。いま日米間でやっているのは仕組みの問題ですよね。日米間で自由貿易協定を結び、どうやって2国間がWin-Winの関係になるのか。その仕組みづくりを一生懸命進めているのです。
トランプさんはそうではなく「仕組みの問題で平等公平になったところで、アメリカの対日貿易赤字が減らなければ意味がない」と言いたいのだと思います。「減らすために日本は何をするのか？」が問われているのだと思います。

飯田）アメリカにとっての貿易赤字、日本にとっての貿易黒字は、ある意味「輸出で稼ぐ」ということですよね。そうではなく、「アメリカで作れ」ということが1つ、あるわけですか？

須田）そうですね。「日本はもっとアメリカ製品を輸入しろ」というのも併せて問われています。特にトランプさんが言い始めているのは牛肉と自動車です。牛肉の問題は2～30年の長い歴史がある協議対象です。

飼料用トウモロコシなどの遺伝子組み換え作物を日本に買わせる

須田）もう1点、トランプさんは指摘していませんが、いま大きく浮上しかかっているのが遺伝子組み替え作物です。日米でルールが違うため、日本では比較的ハードルの高い状況になっています。「ルールを合わせろ」ということも言いかねないと考えていいと思います。

飯田）「基本的に遺伝子組み替えかどうかを表示しなければいけない」とか、いろいろな決まりが日本ではありますからね。

須田）そのなかで最大の焦点となっているのが、家畜の餌となる穀物、「飼料用穀物」です。具体的にはトウモロコシですね。アメリカ国内の飼料用トウモロコシのほとんどは遺伝子組み替え作物です。これを「もっと買え！」ということになってくると思います。

飯田）一方で飼料用穀物は、いまお米も補助金がかなり出ることもあり、食用ではなく飼料用に転作する動きもあります。そうすると日本国内でダブついてしまうことにもなりますよね。

須田）アメリカの場合、農地面積が非常に大きいため、値段が安いのですよ。それで高栄養の物が入って来ますので、日本はおそらく太刀打ちできないと思います。

飯田）そうなると、いま足下で総裁選をやっている状況で、はたしてそれを地方演説のときに言えるか、ということになっているわけですか？

須田）そうですね。それと消費者である一般国民です。つまり「遺伝子組み替えの飼料を食べた牛は安全なのかどうか？」が指摘される可能性が高いでしょう。私は安全だと思いますが、それを消費者に強いるわけにはいきませんからね。その問題が出てきます。「日本が牛肉そのものを輸入できないのなら、飼料用穀物で譲歩しろ。日本で飼育している牛にアメリカ産トウモロコシを食べさせろ」ということになってくると思います。

飯田）消費者からすると、いままではアメリカ産と日本産で分かりやすかったけれど、そうならなくなっていくかもしれない。
この辺りの話題は、トランプさんも中間選挙を前にして何か成果を出さなければいけないということですか？

須田）アメリカ中西部の農家にとって、かなりの量の飼料用穀物を作っていますから、相当の金額になる。非常に大きく注目していると思います。

飯田浩司のOK! Cozy up！
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