「半端ないって」はマラソン大迫もお忘れなく

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ニッポン放送しゃべる編集部がスポーツトピックスを伝える「スポーツアナザーストーリー」では、7日のシカゴマラソンで2時間5分台をマーク。男子マラソンの日本記録を更新した、大迫傑(おおさこ・すぐる)にまつわるエピソードを取り上げる。

「半端ないって」はマラソン大迫もお忘れなく

カラー」 大迫が日本新で3位  シカゴ・マラソンで日本新記録を出し、日本実業団陸上連合から1億円の目録を受け取る大迫傑=シカゴ(共同通信)

大迫は、早稲田大学出身の27歳。大学時代は箱根駅伝で活躍し、おととしは日本選手権で5000m・1万mの2冠を達成。この2種目でリオ オリンピックにも出場しました。

しかし去年、自身のツイッターで「大迫、ボストンマラソン走るってよ」と、マラソン挑戦を宣言。去年4月のボストンマラソンで、2時間10分38秒のタイムを叩き出し、初マラソンでいきなり3位入賞の離れ業を演じてみせました。日本人選手が表彰台に立つのは、87年の瀬古利彦以来、実に30年ぶりのことでした。

大迫はさらに、去年12月の福岡国際マラソンにも出場。全体で3位、日本人トップの2時間7分19秒とステップアップ。そして今回、シカゴマラソンで、2時間5分50秒をマークし、3位に入賞。同学年のライバル・設楽雄太が今年2月の東京マラソンで作った2時間6分11秒の日本記録を塗り替え、日本人初の2時間5分台に突入したのです。

日本記録更新のご褒美で、日本実業団連合による報奨金・1億円も獲得。「非常にうれしい。過酷な気象条件でタイムが出るか分からなかったが、最後の1マイルでいけると思った」という大迫。実は、サッカーW杯で盛り上がった6月、ツイッターでこう宣言していました。

「シカゴマラソンで決勝弾を決められるように頑張ります。俺は大迫傑だ」

「半端ないって」は、サッカーの大迫だけじゃない。マラソンの大迫もお忘れなく、ということです。そして有言実行で、大舞台でみごと結果を残しました。

マラソン・大迫の「半端ない」ところは、トラック競技と、アメリカでの武者修行で磨き抜いた「スピード」です。いま、マラソンのタイムはどんどん速くなっており、先日、非公認記録ながら2時間1分台を叩き出したランナーも現れました。夢の1時間台突入も現実味を帯びる今、日本のランナーたちは、その「高速化」の流れから取り残されているのが現状です。

早くからマラソン転向を期待されながら、去年までずっとトラック競技に軸足を置いていた大迫。その理由は「マラソンに行くなら、ある程度スピードを極めてからでないと、世界では勝てない」と分かっていたからです。

そして、日本流のトレーニングでは世界トップに追いつけないと、大迫は拠点をアメリカに移し、名指導者、アルベルト・サラザール氏が主宰する「ナイキ・オレゴン・プロジェクト」に参加。世界のトップランナーたちを集め、科学的トレーニングで鍛え上げていくこのプロジェクト。大迫は持ち前の負けん気を発揮して、世界のトップランナーたちに食らいついていき、今や強豪ランナーの仲間入りを果たしました。

そして、ペースをレース中に自ら調整できるのも、大迫の強みです。前半は風の影響もあってペースダウンする場面もありましたが、先頭集団から引き離されることなく、後半は25~30キロを14分28秒、30〜35キロを14分31秒、35キロ以降を14分43秒と驚異的なラップを刻み、3位でゴールを駆け抜けました。

大迫のモットーは

「自分と対話し、100%の力を出し切る」

残りのエネルギーや、レース展開を見て、瞬時にどう動くか的確に判断できるのも、大迫の「半端ない」能力の一つです。
シカゴで優勝したモハメド・ファラー(英国)のタイムは、2時間5分11秒。大迫との差は39秒ですが、その差は2年間で埋められると、大迫本人は本気で考えています。目指すは東京オリンピックでの金メダル。記録を抜かれて燃えている設楽ともども、2年後の走りが楽しみです。

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