なぜケニアはマラソンが強いのか? 【ひでたけのやじうま好奇心】

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リオデジャネイロオリンピック。
残す注目競技は、21日の夜9時30分からの男子マラソン。
しかし、かつて日本のお家芸と言われた男子マラソンは、メダルから遠ざかっています。
1992年のバルセロナオリンピックで銀メダルを獲得した森下広一(もりした・こういち)さん以来、24年出ていません。

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【画像】森下広一選手 (写真提供:産経新聞)

一方、ここ数年、飛躍が目立つのがアフリカのケニアです。
今回のリオの女子マラソンでケニアの選手が金メダルを穫りましたが、男子も強い。
4年前のロンドンオリンピックは2位と3位がケニアの選手。
8年前の北京オリンピックの金メダルはケニアのサムエル・ワンジル。
シドニーで銀、アトランタで銅メダルを穫った日本で馴染みのあるワイナイナもケニアの選手でした。
という事で、近年はアベベ以来のマラソン王国エチオピアと近年力を付けているケニアが表彰台を独占するケースが目立っています。

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【画像】ジェミマ・スムゴング選手 (写真提供:産経新聞)

では、なぜケニアは、マラソンが強いのか?
一部、有名な話もありますが、巷で言われている様々な説をご紹介します。

①「家畜を奪ってくることを伝統的にやってきたDNAがあるから強い!!」
ケニアの中でも、高原地方の「ナンディ」という部族(集団)から特に長距離アスリートが多数輩出されているそうです。
このトップランナーを輩出しているナンディという部族は、遠くの村から家畜を奪って、命がけで走って逃げる「牛泥棒」を伝統的に行ってきたと言われています。
牛を持ってきた人は英雄扱いされるそうで、時には牛を求めて、160キロも移動する事もあり、その長距離移動のDNAが受け継がれている可能性があるという事です。

②「通学距離が長いから強い!」
この長い距離を移動する習慣は今でも受け継がれているそうで、ケニアでは、10キロメートル前後の長い距離を走って通学する児童・生徒がいるそうです。

③「走りの燃費が良いから強い!」
様々な研究者が指摘しているのが、ケニア人の燃費のいい走り。
筑波大の准教授、榎本靖士(えのもと・やすし)さんがエネルギー消費量の目安となる酸素摂取量を比較したところ、ケニア人は日本人より1割強少なかったそうです。

④「天然の高地トレーニングが出来るから強い」
ケニアの中央高地のあちこちに「キャンプ」と呼ばれる練習拠点があって、若いランナーたちが、起伏の激しい丘や土の上、林の中を競い合って走り回っているそうです。

⑤「ケニアン・ドリームのハングリー精神があるから強い」
ケニアでは、マラソンで結果を残せば、国の英雄になれるだけでなく、豪邸に住める程のお金持ちになれるそうです。
高額の賞金を出すマラソン大会が増えてきた為、賞金で土地を買い、家を建てて、ゆくゆくは大農場を経営する。
こういった「ケニアン・ドリーム」を夢見て、日々努力しているそうです。

1つ疑問に思うのは、五輪のマラソンで活躍してきたのは、日本の実業団にいたケニア人選手が多い事。
ソウルオリンピックの銀メダリストのワキウリをはじめ、他にも、アトランタ銅、シドニー銀のワイナイナ、そして北京で金のサムエル・ワンジルも日本の実業団出身。

日本のトレーニングや環境が優れているのか?
あるランナーが匿名を条件に答えてくれたところ、「答えはNO」。
日本の陸上界は、若い選手が箱根駅伝、実業団でチヤホヤされるだけで、指導方法はあいまい。
陸連でも、往年の名選手がふんぞり返っていて、リーダーシップを取れる人がいないという状況。
そんな状況の日本に、なぜ、ケニア人ランナーがやってくるのか?
日本に来ている理由はただ1つ。「お金がもらえるから」。

現在、男子マラソンの歴代記録トップ10はアフリカ勢が独占。
マラソンの世界記録は2時間2分台に突入していまして、世界のメジャーレースでは2時間3分から5分台の好タイムがバンバン出ている状況。
それなのに、リオ五輪選考レースのタイムだけを見れば、日本は20年前と同レベル。2時間7分から9分あたり。
かなり力の差がありますが、手だてはないのか?
フルマラソンを2時間40分台で走るランナーで、「世界最速の社長」とも言われる、オーディオブック大手の「オトバンク」の社長、久保田裕也さんにお話を聴きました。

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【画像】オトバンク社長 久保田裕也さん 世界最速への道―オトバンク社長・久保田裕也のブログ

日本のお手本となりそうなのは、アメリカの「オレゴンプロジェクト」。
これは、スポーツメーカーのナイキが打倒アフリカを目指して、15年程前に立ち上げた超エリートランナー育成プロジェクト。
オレゴンにあるナイキ本社の近くに広大な土地を購入して、アフリカ勢以外のエリートランナーを毎年1人だけ採用。
独自のトレーニングで選手を育成しています。
実際にこのオレゴンプロジェクトから今回、イギリスのファラーが1万メートルでオリンピック連覇を果たしています。
実は、この「オレゴンプロジェクト」に、日本人ランナーも所属しているんです。
そのランナーは、今回、5千メートルと1万メートルの日本代表・大迫 傑(おおさこ すぐる)選手。
早稲田大学時代、箱根駅伝で活躍した、あの大迫選手です。

では、どんな練習をしているのか?
大迫選手を例に挙げると、大学時代、チーム全員で長い距離を揃って走る練習が中心。
一方、オレゴンプロジェクトではスピードを重視します。
400m、800mといった距離をレースより速いスピードで走るそうです。
マラソンの高速化が進む中、アフリカ勢のスピードに負けない練習をしているんです。

東京オリンピックまで、あと4年。
日本が古い体制や根性論から抜け出して、マラソンニッポンを復活させる事が出来るのか?

あ、その前に、21日の夜9時30分の男子マラソン。
あまり期待はされていないようですが、ヒーローは突然現れるもの。
日本の3選手、佐々木、北島、石川選手にアフリカ勢の選手を上回る走りを期待しましょう。

リオデジャネイロオリンピック 男子マラソン 日本代表選手
●佐々木悟(ささき・さとる)選手   30歳 ※自己ベスト2時間8分56秒
●北島寿典(きたじま・ひさのり)選手 31歳 ※自己ベスト2時間9分16秒
●石川末廣(いしかわ・すえひろ)選手 36歳 ※自己ベスト2時間9分10秒

8月19日(金) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

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