阪神・矢野2軍監督「金本とは大学でもタイガースでも一緒」
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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は今季限りで辞任を表明した金本知憲監督に代わって、次期監督就任の話が浮上している阪神タイガース・矢野燿大(あきひろ)2軍監督にまつわるエピソードを取り上げる。
巨人・高橋由伸監督に続き、阪神・金本監督も辞意を表明。監督交代が相次ぐプロ野球ですが、どちらも世代交代に悩むチームを引き受け、次世代を担う選手を育てている途中で、成績不振による辞任……。結果がすべての勝負の世界、指揮官が責任を取らねばならないのが常とはいえ、道半ばで、両者とも無念の思いがあったことでしょう。
巨人は原辰徳・前監督の復帰が確実視されていますが、阪神はどうやら、矢野2軍監督の昇格が最有力候補のようです。指導者としての実績ですが、一昨年・去年は1軍作戦兼バッテリーコーチとして金本監督を支えてきました。
今シーズンは2軍監督を務め、阪神2軍をウエスタン・リーグ優勝に導き、6日に行われたファーム選手権も制覇。「ファーム日本一」に輝いています。指揮官の資質は十分で、金本監督の「超改革」路線を継承するには、適任と言えるでしょう。ただ本人が受けるかどうかは、まだ微妙な情勢です。
矢野2軍監督と金本監督は、東北福祉大学でチームメイトでした。金本監督が浪人した関係で、大学では矢野2軍監督の方が1年先輩になりますが、高校までの学年は同じで「カネ」「ヤノ」と呼び合う仲です。矢野2軍監督は中日からトレードで、金本監督は広島からFAで阪神に移籍、再びチームメイトに。2003年、05年と優勝を経験した盟友でもあります。どちらも他球団出身なのに、阪神ファンからは生え抜き同様に見られているところも同じ。
現在、宮﨑でフェニックス・リーグを戦っている矢野2軍監督ですが、金本監督の辞任を聞き、
「大学もタイガースでも一緒。オレも悔しい」
とコメント。金本監督からは事前に報告を受けていたと言い、その無念の思いは、十分に分かっています。
今季、「超積極的」をスローガンに掲げ、ウエスタン・リーグ新記録のチーム163盗塁を記録した阪神2軍。辞任の際、「足を使った機動力野球をやりたかったのに、できなかった」とこぼした金本監督ですが、その人材はファームにたくさん揃っており、その有望な若手たちをずっと見てきたのが、矢野2軍監督なのです。
中日では星野監督、阪神では野村克也監督の薫陶(くんとう)を得て、再び星野監督に巡り逢ったのも不思議な縁ですが、中日時代は控え捕手だった矢野2軍監督。阪神では野村監督からキャッチャーとしての考え方を学び、正捕手の座をつかんだものの、星野監督就任の際は「自分をトレードに出した監督が来て、使ってもらえるだろうか?」と不安に思っていました。しかし、反対側のベンチからその成長ぶりをちゃんと見ていた星野監督は、そのまま矢野を正捕手として使ったのです。
17年ぶりの最下位に沈んだチームの立て直しは簡単なことではありませんが、今年亡くなった恩師に報いるために、盟友が成し遂げられなかった改革を推し進めるために、矢野2軍監督が大役を引き受けるかどうか? 今後の動向に注目です。