オリラジ中田が語る、メディアアーティスト落合陽一の魅力
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毎週水曜日午後6時から放送のニッポン放送「オリエンタルラジオ 中田敦彦のオールナイトニッポンPremium」。2時間半にわたる“本音”トークの中から、allnightnippon.com編集部が厳選した内容を、中田敦彦の“熱い語り”そのままに、毎週お届けする。
「オリエンタルラジオ 中田敦彦のオールナイトニッポンPremium」今週の“中田論” 第9回(11月28日放送分)
毎週、番組の冒頭でこれまでの番組のあらすじを伝えてきました。10月に始まって一体何がこの番組で行われているのか。ネットニュースにもよくなりますしね。今週はサイゾーさんで叩かれてたかな。ホントね、デビュー以来サイゾーさんに褒められたことないね。
じゃああらすじをしゃべるのかって話なんだけど、ちょっとその前にお話をしたいなって思っていたのが、落合陽一さんっていうね。天才科学者かつアーティストと呼ばれて、出した本がバカ売れする。あの落合陽一さんにお会いすることができまして。
「WEEKLY OCHIAI」というNewsPicksという媒体に落合さんが番組を持ってらっしゃいまして。ゲストとして僕が出たと。お笑いをアップデートするというテーマで「WEEKLY OCHIAI」っていう番組自体が、毎回専門家を呼んで、その専門家の所属しているジャンル。専門家というかその界隈の人だね。界隈の人のジャンルについてアップデートするっていう会議みたいな。そういうテーマの番組なんだよね。
落合さんって何がすごい話題になったかというと情熱大陸かな。カレーを吸う人っていうので。カレーを吸う人だけだと分からないかな。あまりにも忙しくて3~4時間しか寝なくて。それ以外は研究だの、なんだのってしていて。俺、落合さんについても全然知らなかったんですよ。半年? ここ数ヶ月? NewsPicksを見始めてから「WEEKLY OCHIAI」ってなんだろう。若い人が番組を持ってるな」って感じで見ててさ。天才って言われてんだ。年も結構下なんだよね。20代後半ぐらいですかね。それで筑波大の学長補佐とかをやっちゃってて。
なんかその、情熱大陸で特集された時は、あまりにも時間が無くてもらいもののグミをひたすら食べながら腹を満たして、忙しすぎてレトルトカレーのパウチ――あれって普通は温めて米にかけるわけじゃないですか。それを温めもせず空けてストローでチューチュー吸ってまた仕事にいくっていう。
ワーカホリックっていう段階じゃない変態的な生活スタイル。これさ、俺面白えなって思って。どんな人なんだろうって。まず俺に興味ある? って思うわけじゃん。ゲストとして出るからお話はしてくれるけど、「お笑いをアップデートする」っていうテーマで、中田敦彦でしょ。俺が「お笑いをアップデートする」ということの論客として正しいかどうかっていう議論はあると思うけど、それはさておき。お笑いと俺に興味ある? 国家と科学とアートについて考えて、寝る時間がない人がなんで中田敦彦とお笑いについて語り合わなきゃいけないんだって思ったんだけど(笑)
最初ね、正直に言おうと思って「すいません、落合さんの言ってること分からないっす。『WEEKLY OCHIAI』ってファンで結構見てるんですけど、何が面白いって何を言ってるか分かんないっす、正直、落合さんが』って。
それに対して、NewsPicksの佐々木さんが「そういうことね」ってよく相槌を打ってるんだけど、「いやどういうこと!?」って思うし。女性MCの石山アンジュさんもうなづいてんだけど「嘘つけよ! 誰がわかんだよ」って。
俺けっこうさ、もちろんビジネスの知識とか科学の知識はないよ。でも俺さ、なんていうかどっちかっていうとさ。こんなことを言うとまた炎上するけど、どっちかっていうと“学のある方”だって認識があるわけですよ。慶応大学を出てインテリ芸人みたいな感じでさ。NewsPicksで講演会とかやったりしてるやつがさ、(落合陽一については)チンプンカンプンで。わかんないよ。でも大概の人がチンプンカンプンだと思うんだよ。
なのになんで説明しないのって思ってたの。それをちゃんと落合さんに言って。でも落合さんは「そうですか?」みたいな感じなの。「あんまり分かってもらえてないっていうのが意外だなあ」みたいな顔してるのね。マジで? マジでそんな顔するのとか思いながら話を進めてたのね。
でも落合さんがどういう人なんだろうっていうのが、話をしてみて初めて分かったんだよね。どういう人なのかっていうことなの。お笑い芸人かどうかっていう議論ってもういらなくないすか? っていう話を俺が確かしてたのね。「芸人なんですか? 芸人じゃないんですか? どこを目指しているんですか?」って質問があるけど、それってもうどうでもいいよっていう話をしていて。
これまでもね、例えばとんねるずさんが歌をやっていたりもするしさ。俺らに始まったことでもないし。それから(私が)アパレルやるって言ったって、アパレルを作ってる芸人さんはいっぱいいるわけで。もうやりたいように生きるってことだし、それに対して新しいことをやる面白さがお笑いでもあるわけじゃないですか。生き様じゃないですか。立川談志さんだってそうでしょ、ってノリで話してたと思うのね。
いきなり俺がワーッと喋ってたら、落合さんが横からパッと入ってきて「桂三度さんについてどう思われます?」って聞いてきたの。「えっ?」って俺なったんすよ。桂三度さんって世界のナベアツさん。元ジャリズムの渡辺鐘さん。俺は一度もジャリズムさんの話も、渡辺鐘さんの話もしてないのにいきなりだよ。俺がワーワー言ってたら「三度さんについてどう思いますか?」「えっ、何がですか」ってなったわけですよ。止まるんですよ、会話がね。
そこから落合さんに「どういうことですか?」って聞くと、落合さんがその質問をした意味がわかったの。桂三度さんってその名前の通り、三度キャリアを変えている人なのね。元々はコンビ芸人だったけど、放送作家になって、ピン芸人になってブレイクして、今は落語家さんをやってる。そういうキャリアの変遷を経てる。
そういうことで、「中田さんは今まで話を聞いているとキャリア変遷っていうものに価値を見い出したり面白さを見い出したりしているけど、そういう意味でいうと桂三度さんはどう思いますか?」って質問だったんですよ。
普通ね、俺だったらそう質問するのよ。「今の中田さんの話を聞いていると、こうこうこう思って、キャリアの変遷はこうだと思うので、そういった場合桂三度さんをどう思いますか?」って聞くわけなんですよ。
これを全省きすんの。ここがムチャクチャおもろいんす。なんかその後もね、そういうことばっかり言ってくるんです。僕がね、お笑いって今ひな壇芸人の様式美みたいなもの。こうやったらこうやってこう落とすのがお笑いやろ。ここはこうやろみたいな指摘がよくあるじゃないですか。そういう笑いの取り方ってあるけど。芸人さんがガーって集まる番組だと、パンパンにその同調圧力が働いて。その空気を読んでこう落とすみたいな集団プレーのサッカーがうまく構築され過ぎていて、逆につまらないみたいな風になってしまい、その文脈とは全く違う坂上忍さんとかマツコ・デラックスさんとかってそういうのをぶっ壊すようなことを言うじゃないですか。
蛭子さんのロケとかね。蛭子さんのロケって鉄火丼がめちゃくちゃうまいってい港町のロケに行って、普通のカレーを食って帰ってきたりするでしょ。「あれだけ大将が鮮度の良さを説明したのに、なんでアンタはカレーを頼んじゃうの」って太川陽介さんに怒られたり。そういうところが面白い。
でもさあり得ないですよ。鉄火丼がイチオシの店でカレーを食って帰るって普通のタレントだったらあり得ないし。よしんばね、例えば俳優さんとか女優さんが気まぐれで「天ぷら」とか「カレー」って頼んだ時に制作側の保険としてお笑いが「じゃあ僕、鉄火丼いかしてもらいます」
これが喜ばれる、仕事が増える芸人みたいな感じで。要するに、空気を読む、調整する、ツッコむ、フォローをする。それのさ、芸達者が良しとされてきたわけですよ。そんな中でそれがもうつまらなくなったのってどうなのって。(今はそう)なっちゃってるじゃないですか。だからぶっ壊したことをやるしかないでしょって。俺がひな壇で「そうですね、ああですね」ってやっているよりは。ラジオ番組でもハガキ職人さんが送ってきた面白いハガキを読む、落とす。それは分かるよ。
だけどそれだけか。お笑いのラジオってそれだけか。面白いラジオってそれだけかって思うんですよ、っていう主張をしたわけ。そうしたら落合陽一さんが質問してきたのは「ということはハリウッド映画はお嫌いですか?」って。
意味わからないでしょ。これ意味わかります? 分からないでしょ? クイズみたいなんです。そうしたら俺が「どういうことですか?」って言うわけですよ。ジワジワ聞いて分かったのは、落合陽一さんにとってハリウッド映画っていうのはどういう意味かっていうと、ハリウッド映画っていうのはもう作るフォーマットが決まってるの。こうやってこうやって作って、こういう風に盛り上がって、こういう風に終わらすっていうフォーマットがかなり成熟して出来上がっちゃってるから、ハリウッド映画はそういう様式美だと思ってると。落合陽一さんはどっちかっていうと様式美礼賛のタイプで。歌舞伎とかそういう伝統芸能に通じる面白さがハリウッド映画にもあると思っていると。
だけれども、中田さんはどうやら様式美や成熟した構築の文脈っていうものに対して飽きるタイプの人間だ。そういうものをぶっ壊したいタイプの人間だ。とするのであれば、「ハリウッド映画はお嫌いですか?」っていう質問なんですよ。よくよく聞いたらね。そんなのさ、直で聞く!? 人間の会話、これ?
でもその時、パッと見えたのが『DEATH NOTE』の『L』ね。天才捜査官のLってキャラクターがいるんですよ。Lって急に核心を突くようなことを言うキャラクターなんですよ。それって頭良い人というか、すごく頭が良くて、さらに言えば頭の良いとしか仕事をする必要がない人。普通は翻訳をするんですよ。
自分と違うレベルの人間ともいっぱい話をしていかないといけないし。レベルっていうのは頭のじゃないよ。その専門分野のって意味。他ジャンルとも話さなきゃいけないじゃん。だけど落合さんがやってることってド・アカデミックの世界で学長補佐とかやってて。その専門家達としか話さないとか。ドアートの世界でそのアート界隈の人としか話さないみたいなことが成り立つビジネスでやってるし、そのスピード感がむちゃくちゃ早いから俺みたいに説明をするとこれだけの時間がかかる。
落合陽一の質問って何って話に14分かかっちゃうわけ。これを2秒でやって生きなきゃいけない。それで正解に辿り着きたいっていうのが落合陽一なの。俺がやってるのは翻訳、啓蒙、広める、伝播するって仕事でしょ。タレントとして、お笑いとして。
あの人は深めるって仕事だから。Lって捜査して犯人を見つけたらいいわけじゃないですか。捜査の過程をみんなで共有したり国民と分かち合う必要がないです。だからああいう質問になるんだ。Lなんだなって発見がすっごい面白い。
Lってすっごい人気のキャラクターでしょ。魅力的なんですよ。なんか分からないことの面白さっていうのがあるんですよ。なるほどな。広い、みんなに伝わるっていうことの面白さもあるけど、狭い、みんなに伝わらないっていう面白さが実はあるんですよ。
読みづらい小説ってあるでしょ。ドストエフスキーの「罪と罰」とかさ、「ドグラ・マグラ」とかね。読みづらい、訳わからないっていうことを愛されている小説だったりするんですよね。
だから落合さんのゼミの生徒ってもう弟子のようなもんじゃん。理解しているのかなと思いきや、落合さんのゼミの生徒って講義を全部録音して何回も何回も聞き直して、自分で調べてじゃないと全くわからないんだって。授業が分からない。でも生徒がついてくる。面白えなって。
そう考えたらさ、俺はさ毎回あらすじを言ってたの。それでいいのか…。25分ぐらいかけてあらすじをいって。「俺はゴリゴリのラーメン二郎を作るぞ」って言ってたけど、ムチャクチャ食べやすくしてるの。「みなさんにはこれからラーメン二郎を食べていただきます。ラーメン二郎というのは、このようにこってりとしたラーメンです」って。いま待てよと。俺はまだまだ優しかったね。二郎界の中の二郎になれてないんですよ。
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