女子レスリング伊調馨 OL生活から復活優勝でオリンピック5連覇への第一歩

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、23日にレスリングの全日本選手権で優勝。ブランクからの復活を遂げた女子レスリング・伊調馨選手のエピソードを取り上げる。

女子レスリング伊調馨 OL生活から復活優勝でオリンピック5連覇への第一歩

天皇杯全日本レスリング選手権 女子57キロ 決勝 伊調馨対川井梨紗子 勝利した、伊調馨 提供産経新聞

 

「本当に久々の緊張感の中で、たくさんの方に『楽しんでレスリングやれ』ってアドバイスいただいて、のびのびやろうと思って、マットに上がりました」
23日、東京・駒沢体育館で行われたレスリング・日本選手権。女子57キロ級決勝は、五輪4連覇中の伊調馨(34)が、リオ五輪63キロ級金メダル・川井梨紗子(24)と対戦。金メダリスト対決は10歳年上の伊調が制して33年ぶり13度目の優勝を果たしました。

1次リーグ初戦では川井梨紗子に敗れていた伊調。しかし、2度目の対戦となった決勝の舞台では譲りませんでした。第1ピリオドで場外に出されて1点を先行され、第2ピリオドでも1失点。2点のビハインドを背負いましたが、そこからアクティビティータイムを守り切って1点を返し、1点差。そして残り20秒、勝負あったかと思われたシーンで、意を決して前に出ると、川井の頭を押し込み、右足を取って尻もちをつかせると、タックルで押し込んでテークダウンを奪い、2点を奪取。劇的な大逆転勝利で、復活優勝を遂げたのです。
勝った瞬間、目を閉じ、雄たけびを上げながら、両拳を突き上げた伊調。

「気持ちがあふれました。でも、ちょっと良くなかったですね……、あれは。ガッツポーズは満足しちゃっている感じがあるから……」

4連覇を達成したリオ五輪後、引退か、現役続行で東京五輪を目指すかは明言しなかった伊調。その後、元強化本部長の栄和人氏によるパワハラ問題が発覚しました。第三者委員会の裁定によって、伊調も被害を受けた1人に認定。
渦中の人となりましたが、春頃から試合を見据えた練習を開始。悩んだ末に現役続行を決め、10月の全日本女子オープン選手権で2年ぶりに復帰。優勝してこの日本選手権への出場資格を獲得したのです。

マットから離れた2年弱は、OL生活も経験しました。満員電車に揺られ、スーツで会社に出勤する日々。今年4月から練習を本格的に再開。支えてくれたのは、伊調が栄氏のもとを離れてから指導を仰いだ田南部力(たなべ・ちから)コーチでした。
リオ五輪から体重が約5キロ落ちて、53キロ前後。まともにレスリングができない状況でした。練習環境の確保にも苦労しましたが、田南部氏が外部コーチを務める日体大レスリング部の世田谷キャンパスを借り、朝と夕方の2部練習で約4時間、練習を重ねた伊調。
日体大の女子部員にも気軽に胸を貸し、得意技のタックルを伝授。10歳以上も年が離れた選手たちと接することで、競技ができる喜びを改めて実感し、筋力とともに、実戦感覚も取り戻していきました。

今回の日本選手権優勝で、来年6月の全日本選抜選手権で優勝すれば、世界選手権出場の切符をつかめることになった伊調。世界選手権でメダルを獲得すれば、東京五輪代表に決まります。

「まずはきょうの戦いの反省をしっかりして、(来年)6月に向けて、ここからどんどん上げていきたいと思いますし、その先に東京五輪が見えてくるといいなあ、と思います」

前人未踏のオリンピック5連覇まで、まだまだ道は険しいですが、第一歩を踏み出した伊調馨。川井梨紗子との熾烈な代表争い含め、どんな戦いを見せてくれるのか、注目です!

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