大相撲・朝乃山 トランプ大統領から言われた言葉

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、5月25日、大相撲夏場所で幕内初優勝を決めた、朝乃山英樹関のエピソードを取り上げる。

大相撲・朝乃山 トランプ大統領から言われた言葉

【トランプ米大統領来日・大相撲五月場所千秋楽】大相撲五月場所で優勝した朝乃山に米国大統領杯を授与するトランプ米大統領=2019年5月26日午後、両国国技館 写真提供:産経新聞社

「僕が入門してから、ずっと富山は応援してくれた。幕内優勝はひとつ恩返しになったと思います」(朝乃山)

「令和最初の場所」となった大相撲夏場所。注目の令和初代王者は、前頭8枚目、平幕力士の朝乃山でした。13日目、栃ノ心に行司差し違えで勝って、2敗で単独トップに立ち、14日目に初優勝を決めた朝乃山。三役に上がった経験がない力士の優勝は、61年夏場所の佐田の山(後に横綱)以来、58年ぶりの快挙でした。

さらに殊勲賞・敢闘賞も同時に受賞。まさに喜びずくめの千秋楽でしたが、何より朝乃山本人が喜んだのは、今場所から新設された「米国大統領杯」を最初に受け取る栄誉に預かったことです。千秋楽を観戦したドナルド・トランプ米大統領から、重さ約30キロのカップを直接手渡された際、声を掛けられて大感激。

「言葉に表せないほどうれしかったです。(大統領から言われた言葉は)おめでとう、かな……」

あまりに舞い上がっていて、トランプ大統領の言葉が日本語だったか、英語だったかも覚えていないという朝乃山。千秋楽、御嶽海に敗れ「大統領の前で勝てなかったのは残念」と語りましたが、いろいろな意味で、記憶に残るVになったことは間違いありません。

そして、この快挙に沸き上がったのが、朝乃山の故郷・富山です。富山県出身者としては元横綱・太刀山以来103年ぶりの優勝とあって、地元では号外が配られたほど。

もともと富山では、「郷土のスター」として人気が高い朝乃山ですが、今回の優勝で、さらにステータスが上がりました。

富山に住む両親を国技館に呼び、優勝決定の瞬間を生で見せてあげられたことは、最高の親孝行になりましたが、朝乃山がこの初優勝を見てほしかった人がもう1人います。母校・富山商業高校の相撲部監督だった、故・浦山英樹さんです。

一昨年(2017年)1月、初場所の最中にガンのため、40歳の若さでこの世を去った浦山監督。当時、朝乃山は幕下で、本名の「石橋」で土俵に上がっていましたが、この初場所は7戦全勝で幕下優勝。新十両昇進を確実にしました。浦山監督は、教え子の勇姿を病床で見届けてから逝ったそうです。

場所後の番付編成会議で、関取昇進が正式に決まった際、朝乃山は本名の「石橋広暉」から、現在のシコ名「朝乃山英樹」への改名を発表。朝乃山の「山」は、前述の富山出身横綱・太刀山にあやかると同時に、浦山監督への思いを込めた「山」でもあるのです。また下の名前「英樹」は、浦山さんの名前をそのまま受け継いだもの。

トランプ大統領が表彰状を読み上げる際、「アサノヤマ、ヒデッキ!」と名前を呼んでくれたことは、恩師へのこれ以上ない恩返しとなりました。

また高砂部屋にとっても、9年ぶりの賜杯となった朝乃山の初V。2010年初場所で横綱・朝青龍が優勝して以来ですが、その場所後に、朝青龍は酒席でのトラブルが発覚。責任を取る形で引退を決め、以来、高砂部屋は優勝から長らく遠ざかることになりました。

2016年九州場所では、当時、部屋で唯一の関取だった朝赤龍が幕下に陥落。1878年(明治11年)から続く名門が、創設以来140年目にして、関取が途絶えるという危機に直面しました。それをたった1場所で救ったのが、朝乃山の十両昇進だったのです。

地元・富山からも、高砂部屋からも、さらなる活躍を期待されている朝乃山。今場所は三役以上の力士と当たる回数が少なかったことから「恵まれた」という声もあり、新三役昇進が予想される7月の名古屋場所は、まさに真価を問われる場所になりますが、心配はなさそうです。

「ライバルを変えて、上の人をライバルにして稽古に精進する」

その意気やよし。今場所、ケガで休場した大関・貴景勝、千秋楽に土をつけられた御嶽海らライバルが待ち構える名古屋場所で、ひと皮むけた朝乃山がどんな闘いを見せてくれるのか、注目です。

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