米中の貿易取引が激化~ドル安誘導するトランプ大統領の意図

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月26日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。それぞれが追加関税を課すと米中が発表するなか、米による貿易交渉の次の一手は何かについて訊いた。

米中の貿易取引が激化~ドル安誘導するトランプ大統領の意図

討議を前に写真撮影に応じる各国首脳。(右端から時計回りに)安倍首相、トランプ米大統領、フランスのマクロン大統領、ドイツのメルケル首相、カナダのトルドー首相、ジョンソン英首相、EUのトゥスク大統領、イタリアのコンテ首相=2019年8月25日、フランス南西部ビアリッツ(代表撮影・共同) 写真提供:共同通信社

日米は合意、米中は激化~アメリカの貿易交渉、次の一手は

日米貿易交渉は基本合意の一方、米中は23日、それぞれが追加関税を課す措置を発表し、年内には米中間で取引されるほぼすべての製品に追加関税がかかるという異例の事態になっている。対日本、対中国、アメリカの貿易交渉の次の一手は何なのか。先週、ワシントンを取材したジャーナリストの須田慎一郎さんに伺う。

飯田)いまのアメリカは大統領選という補助線を1本引かないと、理解することができないということですが。

須田)そうですね。それともう1つは、ここ最近のアメリカのメディア報道にも注目していただきたい。日本にいると、香港の大規模デモについては報道であまり取り上げられませんが、アメリカでは連日、新聞の一面トップで取り上げられています。テレビでもトップニュースで報じられています。

飯田)そうなのですね。

須田)アメリカのメディアは人権問題に敏感ですから、それに反応しているのだと思います。これも、アメリカの対中政策に大きく影響を与えていると思います。

大統領選を意識しているトランプ大統領の言動

須田)8月23日のアメリカ国内の動きを見ていただくと、いまアメリカがどういった問題に直面しているかが見えて来る。大きな数字上の動きとしては、ニューヨークダウが600ドル以上の大幅下落をしました。マイナス2.37%の大幅下落です。その背景に一体何があったかと言うと、アメリカは本当に忙しい国で、1日に大きなイベントが3つも起こりました。まず、中国がアメリカに対して報復関税を課すことになった。750億ドル相当の報復関税です。次に、パウエルFRB議長の演説。この演説に対して、トランプ大統領がダメ出しをしたということがありました。そしてもう1つは、中国の報復関税に対して、アメリカが追加関税を課すという反撃に打って出た。1日にこれだけのことが起こったため、マーケットが大きく反応したということなのです。1つ目のポイント、中国の報復関税については当然のことながら、アメリカの株式マーケットはネガティブに反応して株価が下落した。ワイオミング州で行われたパウエル議長の発言についても、マーケットは非常に注目していて、追加利下げが行われるのかどうか。それを示唆するような発言が出て来るのかということだったのですが、パウエル議長の発言を聞いてみると、彼としては積極的な利下げを示唆したのだと私は受け止めました。だからマーケットもそうだったようで、先ほどの中国の報復関税を相殺する形で、むしろ株価としては上げ基調になっていた。ところがそのまま放っておけばいいのに、トランプ大統領が報復関税を行うと言ったものだから、結果的にマーケットはネガティブに反応してどんと下げる動きになったわけです。トランプ大統領としては、大統領選挙を意識したならば、やはり株価ですよ。

飯田)そうですよね。

米中の貿易取引が激化~ドル安誘導するトランプ大統領の意図

なぜトランプ大統領は株が下がるような言動をするのか~ドル安方向へ持って行く

須田)通常であれば、株価が上がるような方向に持って行こうとする。それなのに、なぜネガティブな方向に持って行くように動いているのか。そこに疑問を持っていろいろと情報収集をしますと、トランプ大統領は歴代の大統領とは異なり、ドル安方向に持って行こうとしているのではないか。そういった意味で言うと、ドル安になるということは、円高なのですね。逆に言えば、株価が下がるということはドル安になる。

飯田)確かに、いまの足元の日本円とドル円相場ですが、1ドル104円75銭付近で取引されていて、ドル安、円高の方向に振れている。

須田)世界経済は不透明感が色濃くなって来ると、リスクヘッジという形で強い通貨にお金が移る。つまり円ですね。そしてもう1つは金、ゴールドにお金が移るという状況になります。トランプ大統領がやろうとしているのは、ドル安誘導なのだということです。そう考えると、そこまで複雑な思考ができるかどうかは別として、結果的にはドル安に動いて来ている。日本の防衛ラインは1ドル105円というところです。面白い指摘がありまして、イギリスのフィナンシャルタイムズが、日本の年金基金が円を買わせているのではないかという分析記事を出しています。

飯田)円を買わせているのではないか。

須田)はい。ですからそこに防衛ラインを引いていて、あまりにも円高にならないように調整しているのではないか、という記事を掲載しています。それ以上の円高にならないように円を売っている。

飯田)ドル安に行くとみんながドルを売ろうとするから、ドルを買い支える。

須田)そこに安倍政権の強い意志を感じるという記事です。そのあたりがトランプ大統領との、ある種の握りができているのかなと思います。ただ、ドルが安くなっているのは円に対してだけではなくて、ユーロに対しても、スイスフランに対してもそういう傾向を示しています。これがここからの大きなポイントになって来るのだと思います。

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