米の中国への追加関税~一部を延期する理由
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月14日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。アメリカが中国に課す追加関税の背景について解説した。
中国に関する追加関税第4弾、アメリカが一部延期を発表
アメリカのトランプ政権は13日、中国からの輸入品のほぼすべてに関税を課す、追加関税の第4弾を9月1日に発動すると正式に発表した。また、アメリカの消費者に配慮して、携帯電話やパソコンなど一部の製品については12月15日まで適用を延期するとしている。
飯田)以前から予告はされていました。ただ、一部は12月まで伸ばした。クリスマス商戦をにらんでということが言われていますね。
これまでは中国の消費者が関税を負担~アメリカの消費者にも負担が出始める
高橋)この関税の掛け合いは、そこだけを見てしまうのですけれど、実は価格がどうなるかがいちばん大事なのです。いままでの関税ですと、アメリカが中国製品について掛けるのですけれども、価格はそれほど上がっていません。つまり中国の方が輸出価格を少し下げて、関税を負担しているということです。しかし、だんだん広げて来ると、さすがに価格上乗せをするものが出て来たということだと思います。その内の目立つものが、PCモニターやビデオゲームなどですよね。そういうものはおそらく価格が上乗せされる。そして価格が上乗せされると、さすがにアメリカの消費者も黙っていない。逆に言うと、価格が上乗せされるということは、関税の負担をアメリカの消費者がするという形になってしまう。そうなるとまずくなるということです。
飯田)景気との見合いも含めてトランプさんが判断すると。
高橋)ええ。だからそれはそれで戦略的にやっていて、いままでは関税を課してもアメリカ国内の価格は上がらないように、代替品で他から調達できるものにしていたのですけれども、今回はだんだん最終製品になって限界になって来たのだと思います。それでもかなりの数で課していますからね。そして価格が上がらなければ、トランプさんとしてはいくらでも関税をかけていいと思ってしまいますよ。
中国に多額の関税を掛けてその収益の一部を農家の補助金へ
飯田)負担は向こうがすると。
高橋)価格が上がらないで、中国企業が負担しているならそれでいいではないかという感じですね。要するにアメリカが中国に輸出すると、今度は中国の方で価格を上げるのですけれど、実質アメリカの農産物をストップしているのですよね。そうするとアメリカの農家もけっこう困ってしまうのですよ。しかしこれは、中国製品に対して多額の関税をかけて、最終収入が多いのでその一部を農家の補助金に回すと思いますよ。
飯田)なるほど。
高橋)そうすると中国企業が負担している税金で、アメリカの農家に負担を回すと、一石何鳥にもなるではないですか。
飯田)アメリカとしては、懐は痛まずに済む。
高橋)全然痛まないですよね。関税を課して、中国企業が負担して、それをアメリカの農家に回すのならばまったく痛まないですよ。これで選挙対策にもなるし。おそらくフェイズが変わって来て、米中の貿易戦争はだんだんそういう形になるのですけれど、結論的に言うと私は中国経済がずっと痛むままで終わると思いますね。
中国製品の価格を上げないように操作~価格に敏感なアメリカ人
飯田)アメリカの消費者が負担するようになると、トランプ政権の支持率が下がるのではないかと言われていましたが、実際は。
高橋)価格の問題です。私はこれをずっと見ていたときに、中国製品は代替性があるからアメリカの価格はあまり上がらないのではないかと思っていて、いままではそうですね。しかしさすがに全品かけるとなると、上がるものが出て来るからそこは少しセーブしたということではないですか。
飯田)代替が少し難しい辺りを中心に。
高橋)選んだのだと思いますよ。アメリカの消費者物価は細かくあって、中国製品なども各地方のデータがすごく細かいのですよ。だから、それを見ているとけっこう分かるのですよね。中国製品の、これをあげたら上がるなというものが。アメリカは詳細な分析をしているのだと思いますけれどね。
飯田)このクリスマス商戦、サンクスギビングからの商戦というものは、アメリカの個人消費の半分くらいを占めるということも言われますよね。
高橋)ものすごく大きいですよ。アメリカ人は価格にすごく敏感で、昔よく言われたのは、ガソリン価格が上がると大統領選が危なくなるという話があるのですよ。だから当然、こういう中国製品も見たらわかるでしょう。その価格が上がっていたら、「トランプ氏が変なことをやっているな」と言われても困るということではないですか。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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