米中貿易戦争から1年~トランプ氏の狙いは人民元安に追い込むこと
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月8日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。勃発から1年となる米中貿易戦争について解説した。
貿易戦争勃発から1年~米中ともに輸出が2兆円減少
アメリカと中国が互いに輸入品に重い関税をかけあう貿易戦争に突入してから1年となった6日、米中とも輸出額が2兆円前後減ったことがわかった。上乗せ関税の重みを回避するために米中とも、他国からの調達を増やしたことで世界の貿易網は一変している。
新行)最大25%を上乗せする関税の対象は、アメリカが中国に対して輸入する額の5割弱。中国は対米輸入額の7割に広がっています。
須田)そうは言っても、他の国から輸入を増やしたり輸出を増やしたりしているのですから、全体的にどれくらいのダメージになっているかはよくわかりません。ストレートに2兆円減少しましたということになると、アメリカのGDPが約1500兆円です。それから比べると大きなダメージになりますが、その分他の国へ対する輸出を増やしたり、サプライチェーンというものがありますから。全体的に世界の貿易がどれくらい減ったのかを見て行かないと、直接的なマイナス面は見えて来ないと思います。ただ、G20で米中貿易戦争については一旦水入りということになりましたよね。
新行)もう1度、交渉を再開しようというところですよね。
須田)その一方で、中国はアメリカから農産物を買い、アメリカは中国に対してファーウェイの部品輸出を解禁すると。中国にとって今回の貿易戦争の大きなダメージは、ファーウェイなどの電子機器類が、アメリカ以外の国の輸出に対しても影響したところです。アメリカにとっての大きなダメージは、大豆などの農産物だと思います。
アメリカ大統領選挙まで米中貿易戦争はペンディング
須田)この米中貿易戦争は、来年(2020年)暮れのアメリカ大統領選挙まで一旦ペンディング、先送りになるのではないかと思います。アメリカという国、特にトランプ政権は、中国だけではなくて北朝鮮やイランに対してもそうですが、経済面のみならず軍事面でも極限までプレッシャーをかけて、何らかの情報を引き出すという戦略で臨んでいます。そういう意味で言うと、アメリカは中国に対して手綱を緩めることはしないのではないかと思います。
トランプ大統領の狙いは人民元安
新行)そうなると世界の貿易網がまた変わって来る部分、影響を受ける部分もあると思いますが。
須田)中国でiPhoneなどの製品も作っています。日本から見てみますと、日本の主力輸出品は自動車、電気、機械とあります。その電気のなかに電子部品がある。電子部品を中国に輸出して、iPhoneの組み立て工場で組み立て、アメリカや他の国へと輸出する。それで何が起きるかと言うと、中国の生産拠点を外国に移そうではないかという動きが起こって来るのです。組み立て拠点を移すまでのタイムラグがあるので、そこはかなり影響が出ると思います。中国から生産拠点がどんどん移って行った際に、中国の貿易量は大きく減少して行きますから、それに耐えられるか。そこが減少すると外貨準備高の減少につながって、人民元安になる。これこそがトランプ大統領の狙いなのです。ただ、それをいま激しくやってしまうと大統領選挙にも影響を及ぼしかねないということで、一旦ペンディングにした。おそらく米中貿易戦争が本格化するのは、来年暮れの大統領選挙の決着がついた後、トランプ大統領が再選を果たした以降だと思います。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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