G20大阪サミット開幕~米中問題の他に注目されること
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月28日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。28日に開催されたG20大阪サミットについて解説した。
G20大阪サミット開幕
日本で初めて開催される主要20ヵ国・地域首脳会議(G20)大阪サミット2019は、6月28日に大阪市の大規模展示場、インテックス大阪で開幕。今回のG20では安倍総理が議長となり、2日間の日程で米中貿易摩擦など世界が直面する諸課題について議論する予定で、29日の閉幕時には首脳宣言を取りまとめる方針である。
飯田)20の国と地域と言いますけれども、オブザーバーなどを含めるとそれ以上の人たちが来る。これをまとめるのは大変ですよね。
宮家)メディアだけで7000人が来るのでしょう。準備も大変だけれど、中身も大変です。宣言を出さなくてはいけないですよね。今回は多国間の部分と2国間の部分があって、多国間の方から行くとセレモニーも多いです。議題としては経済をやってイノベーションをやって、インフラをやって気候変動をやって、ついでにプラスチックのゴミ問題も含めて議論をする。そしてそれを首脳宣言にまとめる。
多国間の問題のなかで難しい米中のコントロール
宮家)昨年(2018年)もそうだったけれど、宣言のなかでは自由貿易のことを言いたいのですが、自由貿易をいちばんやっていないのは中国とアメリカなのです。自由貿易をやれ、保護貿易主義に反対と言うと、アメリカが反対するのですから。中国だって自由貿易と言いながら、補助金をジャブジャブやっている。補助金は止めろと言おうとすると、それはダメだとされてしまう。そんなことでは宣言は纏まらないですよね。普通は事務方がこの日のために何ヵ月も文言を詰めているはずなのですよ。いくつかの部分でどうしても意見の合わないところがあって、それを最後に首脳で決めるのです。しかし、トランプさんや習近平さんがごねると宣言ができなくなってしまうから、大変なのですよね。これがまず多国間の問題です。
米中印の首脳会談
宮家)もっと関心が高いのは2国間の問題で、私が今回注目したのは3つあります。順不同で行くと1つは日中、習近平さんは来年(2020年)に国賓で来られる可能性が高まっているのだから、こうなると中国との首脳会談は失敗がないのです。失敗しそうになったらやめてしまえばよいのですから、日中首脳会談は開くものはすべて成功なのですよ。日中はこれで一応OKですよね。次に面白いなと思ったのは、これから日米が首脳会談をやると思うのですけれど、その後にインドが入って、日米印の首脳が会談をするというもの。他の場ではあったかも知れませんが、私の知る限り初めてだと思います。
飯田)珍しいですよね。
宮家)大きな流れで言うと、2018年あたりから、元々は日本が言い出した話なのですが、自由で開かれたインド太平洋という概念をアメリカが提唱しました。そういう発想の国際感覚で、日米印がここで首脳会議で会うということは、インド太平洋という概念が着実に動いているという印象を与えるので、非常に意味のあることだと思います。3つ目に、「韓国はどこに行ったのかしら」ということです。空港には着いたようですけれど、まったく誰も話題にしない。可哀想だけれど。
飯田)立ち話程度はするかも、という感じ。
宮家)お客様ですから無視はできません。しかし、ここまでコンタクトのない日韓関係は珍しいのではないですかね。
飯田)日米印の話が出ましたけれど、少し前だったら日米韓でやって、北朝鮮に対してどうするかという話を必ずしていた。
宮家)日米韓がなく、代わりに日米印というのも変ですよね。本当は日米韓印くらいやって、本来ならばそれを誰かが仕掛けてもよいと思うのだけれど、今回まるでそんな雰囲気にならないところに、韓国の孤立を感じます。
インド太平洋~今後は日米豪印と言う時代が進む
飯田)日米印のところなのですけれど、直前にアメリカとインドの外務大臣が会談をして、インドにロシアからミサイルを持って来るのはやめなさいということで、少し揉めている。
宮家)そんなことを言ったってインドは昔から非同盟の国であり、アメリカとの関係もあまりよくなかった。だから、当時のソ連に依存していたわけです。
飯田)兵器も買っていたのですよね。
宮家)だから日米印で首脳会議をやって、いくらモディさんが政策を変えると言ったとしても、インドにはインドの言い分があるので、そんなに簡単には行かないと思います。今後もインドが非同盟の国であることを忘れてはいけないですよ。
飯田)なるほど、どこにも与しないと。
宮家)そういう部分もまだ残っていると思います。
飯田)そうすると、その辺はさておきつつ、価値観として同じだということを出して行く。
宮家)そうでしょうね。インドは世界最大の民主主義国、1ヵ月以上かけて選挙をやるような国もめったにないです。
飯田)やっていましたね。
宮家)その意味でインドは価値観が共通で、戦略的な位置も中国の南部にあるという意味で重要です。別に包囲網を作ろうというわけではないのですが、日本にとってはインド洋というマラッカ海峡を通った後、中東の湾岸地域まで行くときに重要な水域があるのです。それがインドの南にあるわけですから、当然その海域の安定は日本にとっても大事なものですので、あらゆる意味でインドとの関係は更に重要だということだと思います。
飯田)昨日(27日)は2国間、立ち話なども含めて日本としては8ヵ国の地域とやった。いろいろなところとやったなと思いますけれど、例えばインド太平洋の話で言うと、オーストラリアも重要な国ですよね。
宮家)そうですね、一時は選挙で現職首相が変わるのではと心配されましたが。いまは基本的に大丈夫ですね。最近韓国はちょっと脱落気味なのですけれど、日米があってインド、自由で開かれたインド太平洋という観点から行くと、これに加わるオーストラリアは極めて重要な国です。韓国を除いて新しい日米豪印、こういう時代がこれから進んで行くのだろうと思います。
トランプ大統領の発言と憲法改正の問題の関係性
飯田)メールでいただいたのは“さどう”さん、川崎市中原区の方。「私は直感で感じたことがあるのですが、憲法改正を掲げて安倍政権は参院選に臨みますよね。トランプ大統領がツイートした『アメリカが他国を守るのはおかしい』という発言、この時期にあまりにもでき過ぎではないかと思うのですが、どうですか? ぜひご意見を聞かせてください」。
宮家)これは憲法改正の問題と近いのだけれども、それよりもっと本質的な問題だと思うのです。いま憲法改正をしようとしている方向は、「自衛隊を合憲化しないか」ということだろうと思いますが、トランプさんが言っていることは一見ムチャクチャだけれど本質を突いている部分もある。アメリカは日本が攻められたら防衛義務があるけれど、日本にアメリカを守る義務はないのですよ。だから不公平かどうかと言われたら、基地を提供して、あれだけの予算を付けてホストネーションサポートをしているのだから、文句は言わせない。しかし、不公平だとは言わないけれど相互的かと言われれば、それは微妙です。「現実的にはそれを相互的と言うのだ」と言う人がいるかもしれませんが、防衛義務という観点なら日本に対米防衛義務はない。NATOの他の国はどんなに小さな国でも、アメリカを防衛する義務が集団的自衛権ですからあるのです。確かに、トランプさんの言っていることでムチャクチャなのだけれど、ときどき正しいことがある。その1つがこれです。いますぐに日米同盟関係を変えろ、何とかしろということではありませんが、中長期的にはそれをより相互的にするかしないかという議論が、日本国内であってもおかしくないです。その結果、アメリカと相互的に防衛義務を負うべきだとなったら、では憲法はどうするのかという議論になって行くのが普通の流れだと思います。
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