メキシコへの関税見送り~日本も他人事ではないアメリカの“禁じ手”
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月10日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。アメリカがメキシコと不法移民対策で合意し、メキシコからの輸入品への関税を見送ったニュースについて解説した。
アメリカ、メキシコへの関税見送り
アメリカのトランプ大統領はメキシコからの全輸入品に6月10日から課すとしていた、5%の関税を見送ると発表した。不法移民対策でメキシコと合意し、トランプ氏にとって大きな成果を得た形となった。
飯田)ディールで譲歩を引き出したということで、移民を食い止めるような強硬措置をメキシコが取ることで合意したそうです。
須田)言うことを聞かせたということなのでしょうが、このまま関税が課せられてしまうと、メキシコ経済が壊滅的な打撃を与えられるのですね。日本も自動車メーカーがメキシコに生産拠点を置いています。部品や半製品をそこに持ち込んで、組み立ててアメリカに輸出する。アメリカとメキシコの関税が低いことを利用して、サプライチェーンの一角としてメキシコが位置付けられています。これが関税をかけられてしまうと、場合によってはメキシコから生産工場を全部移転してしまうということになりますから、メキシコとしては慌てて不法移民対策で同意したということです。
ただ私が思うに、この関税という貿易上のツールが、この手の経済や貿易に無関係な要求のために使われるのは、やり過ぎではないでしょうか。これは禁じ手だろうと私は思いますが。
飯田)ある種の内政干渉を行うツールとして、関税を使うということですね。
禁じ手である“関税”に味を占めてしまったアメリカ
須田)日本も他人事ではありません。日本にも同じ要求が突き付けられる可能性もなきにしも非ずです。ただ単純に、日本からアメリカに対して巨額の貿易製品が行って、日本が膨大な貿易黒字を抱えていることに対しての関税発動ではなく、安全保障政策について日本がアメリカの言うとおりにならなかったら、とか。外交上言うとおりにならなかったら、となると、関税というツールが出て来る可能性はあります。関税は間違いなく貿易上の問題なのですが、貿易上の不満を解消するために関税に頼るというのも、近代の貿易交渉としては禁じ手とされているのですが、アメリカはその味を占めてしまったのではないかなと思います。
日本も他人事ではない
飯田)G20のタイミングでムニューシンさんと麻生さんが会談をした。そこでは為替条項の話は出なかったということですが、須田さんが常々ご指摘になっていらっしゃるのは、この為替条項こそが問題なのだということです。
須田)そうです。アベノミクスは円安に誘導することで、特に大企業や輸出関連企業、自動車電気機械などの業績を回復させて株価を押し上げるやり方をやって来た。ですから旧民主党政権時代はドル円で80円~90円だったのが、一気にピーク時は125円、平常でも110円前後を推移しています。これが曲がりなりにもアベノミクスの成果を生み出して来た源泉なのですよ。
飯田)これと関税とどっちを取るかと言われたら、具合が悪いですね。
須田)見て見ぬふりをして来たアメリカが言い出したら、怖いなと思います。それを言い出す前に日本としては、農業や他の部分でも譲歩する必要性が迫られているのかなと思います。
飯田)包囲網が縮められて来た感じがありますね。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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