米中貿易問題~G20の時期に大阪で米中首脳会談開催か
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月13日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。中国への制裁関税が拡大する米中の貿易問題について解説した。
アメリカの制裁関税~中国からの輸入品すべてに拡大へ
トランプ政権は5月13日、中国からの輸入品全てに制裁関税を拡大する第4弾の詳細案を公表する。スマートフォンやノートパソコンなど消費者に身近なハイテク製品にも25%の関税が上乗せされる懸念があり、日本や韓国、台湾などアジアに広がる一連の供給ルートも影響を受ける可能性がある。
飯田)先週末に米中貿易協議、閣僚級協議が行われたが物別れに終わった。そして、10日(金)の日本時間午後1時1分から、第3弾の関税に関しては10%から25%に引き上げが行われた。更に矢継ぎ早に、アメリカ側はすべての輸入品にというところまで言及して来ました。
米の対中制裁関税~世界各国に影響を及ぼす第4弾の関税
須田)第3弾に関しては一般消費財が中心なので、アメリカ国内の消費者の影響はあるかもしれないけれど、トータルとしてはそれほど大きな影響はありません。心配されるのは第4弾です。ここにノートパソコンやiPhoneという電子機器、ハイテク製品が入っているために大きな影響を及ぼすでしょう。どうしてかと言うと、サプライチェーン、つまり供給網というものがあります。中国では製品を組み立ててはいるのですが、部品については、すべて中国で生産しているわけではなく、日本などのアジア各国から部品を輸入して中国で組み立ててアメリカに輸出する。そうするとそこに関税がかかって来て、対輸出にブレーキがかかるようになると、日本などからの部品の輸出についても大きな影響を及ぼす。それがドミノ倒しのように世界各国に広がることが、第4弾でいちばん心配されているところです。
なぜそういう事態になるのかと言うと、アメリカが問題視しているのは大きく2つあります。1つめは、これはどちらかというとトランプさんがということですが、アメリカの対中貿易赤字が出るということは、アメリカから見ると、中国から失業者を輸入しているようなものなのです。
飯田)そうか。他で作ったものを輸入して来るということは、国内で作らず失業者が増えるということだから、ある意味輸入しているということですね。
須田)これを何とかしようと。特にアメリカ内陸部の白人層を中心とする、失業者であるとか低賃金労働者の待遇を改善する、或いは就職を得るということは、トランプさんの大統領選挙の公約のいのいちばんです。だから絶対額としての貿易赤字を減らすというところも重点があります。
アメリカが最も問題とする貿易の不公平~追い詰められる中国
須田)それ以上に大きな問題なのは、貿易の不公平、不公正です。例えば、アメリカ企業が中国に出て行くと、ハイテク技術や先端技術を「とにかくこっちへよこせ」と、「よこさない限り中国の生産販売を認めない」という、ある種ルールを無視したかのような技術の収奪、スパイ活動やハッキング等々による技術の盗み取りを止めろということです。
もう1つは補助金です。国や地方政府の補助金。同じ土俵で貿易をやっていないではないかと。「お前たちはルールを無視して違法行為をやって、不公平な貿易をやっているからそれだけの貿易赤字があるのだ。何とかせい」と言っているのです。しかし、これについては高度な政治判断が必要です。だから閣僚級では決着を見ないために「やはり首脳会談をやってくれ」というものが、先だってワシントン入りした中国の大臣の最後の捨て台詞です。
飯田)劉鶴さんはそれの一点張りだったようですね。「詳しいことは習近平さんに聞いて下さい」みたいな。
須田)今回は、来たのはいいことだけれど、決着することは無かったのですね。
飯田)ここで決裂まで行かずに、一応何とか契りを残したというだけでも成果と見なければいけない勢いですか?
須田)ただ、中国としては飲めないですよね。これを飲んでしまうと、中国の優位性がすべて揺らいでしまう。それどころかこれまでのイリーガルな行為を自ら認めてしまうことになりますからね。
飯田)ダボス会議などで自由貿易を守って行くと言った手前、認めるわけにもいかない。しかも合意文書は表に出すということをアメリカは言っていたみたいですね。150ページほどあるやつを。
須田)それを出されたら中国国内がもたない。「アメリカに譲歩した、屈した」となってしまいますから。習近平体制そのものがもたなくなる可能性があります。追い詰められていますよ。
G20の時期に大阪で米中首脳会談開催か
飯田)今度の第4弾の関税、13日に枠組みについて発表しますが、実際にこれをやって行くには2ヵ月くらいかかるだろうと言われています。そうすると、G20のタイミングにちょうど引っ掛かりますよね。
須田)そこが1つ大きな焦点になって来る。近年の外交はマルチでは無くてバイだと言います。習近平さんとトランプさんがもしかすると、この問題で協議をする可能性もあるということです。
飯田)大阪で米中脳首脳会談みたいなものが、立ち話かもしれませんがあるかもしれない。そこまでに詰め切れるか。
須田)そうですね。ただ、これはトップダウンですから。イエスかノーかの2つに1つです。それが劉鶴氏にはできなかったということです。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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