香港騒乱で隣接都市に控える武装警察~なぜ駐留軍ではなく警察なのか

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(11月11日放送)に産経新聞論説委員・フジサンケイビジネスアイ編集長の山本秀也が出演。香港騒乱における、中国の今後の動きについて解説した。

香港騒乱で隣接都市に控える武装警察~なぜ駐留軍ではなく警察なのか

「カラー」緊急ルポ「部隊控える香港境界の街」 武警車両集結、野太い声  中国広東省深圳の競技場で警備に当たる武装警察隊員=2019年8月16日(共同)  写真提供:共同通信社

深圳にはまだ中国の武装警察が駐留~いつでも介入できる態勢に

共同通信によると、香港島東部の地下鉄の駅前で11日朝抗議活動を行っていた若者らに向け、警察官が実弾3発を発砲し、2人が負傷した。うち21歳の男性が重体。香港政府は強硬姿勢を強めている。

森田)産経新聞の先日の報道ですと、香港と隣接する広東省の深圳にまだ中国の武装警察が留まっているようですね。

山本)武装警察を指揮する共産党の政法委員会という組織があり、力を使うときの党の意思決定機関の1つなのですが、ここがどうも前線指揮を深圳に置いているという情報があります。これは迅速に対処するために置いているのだと思います。

森田)状況が悪化すると、武装警察が香港へ入って来ることもあり得るのですか?

山本)あり得ます。しかし、法律的な手続きだと、既に香港に駐留している人民解放軍を使う方が簡単なはずです。香港基本法に治安出動の要件が書いてありますから。

森田)駐留軍を出す可能性もあると。

山本)ただ、軍隊を使うことになると国際社会の反応がずいぶんと違うのを、中国も天安門事件のときに実感していますから、武装警察を使った方がという考え方はあると思います。武装警察と言っても軍隊なのですが、だから深圳に置いているのでしょう。

森田)いきなり軍隊よりは、武装警察の方がという考えはあるのですね。

山本)どちらにしても、やることは似たようなものですね。

香港騒乱で隣接都市に控える武装警察~なぜ駐留軍ではなく警察なのか

15日夕、香港・金鐘の政府庁舎前で、放水車の放水を受けるデモ隊=2019年9月15日 写真提供:産経新聞社

民主派の議員逮捕で選挙妨害を画策か

森田)それから、香港では抗議活動の発端となった逃亡犯条例の審議を妨害したということで、民主派の議員6人が起訴されて別の民主派議員1人も近く起訴される見通しのようですね。

山本)これも言語道断で、議会での行動ですよね。それをなぜ警察が介入して議員を逮捕するのか。

森田)この7人のうち4人が今月24日の区議会選挙に立候補しているという報道がありますね。

山本)香港では立法会というのが小さな国会があって、その下に地方議会に当たる区議会があるのですが、この2つの議員は兼ねることが可能なのです。国会議員が渋谷区の議員もやるようなことが可能だということです。ただ、それも実際に立候補している議員を逮捕してしまったら、これは選挙妨害ですよね。そうなってくると24日の選挙を妨害しようとしているのではないか。もっと穿った見方をすると、香港の混乱を広げることで選挙ができない状態だと宣言する口実をつくろうとしているのではないかというものまでありますよね。

森田)そうすると、24日の区議会選挙までにさらに状況が悪化する可能性もあるということですね。

山本)予断を許しませんね。24日の戦況というのが、前回の雨傘運動のときには運動の支持があまり広がらなかったことによって、民主側が負けているのです。今度は民主派が勝ってしまいそうだと。しかも、区議会議員選挙というのは小さな権利しか持っていないのですが、香港の選挙のなかで唯一有権者の直接投票が可能なのです。だからどれだけ香港政府、後ろにいる中国への批判が強いのかというのが数で出てきてしまいます。それは見せたくないという意思が働いているのかもしれません。

森田)こうした動きを弾圧し過ぎて、中国大陸でも民主化を求める動きが出てくることを習近平さんは心配しているのでしょうか。

山本)警戒はしているかもしれませんが、簡単にできないような監視と暴力体制を国内では築いてしまっています。ですから、むしろいま心配すべきなのは、国内の監視と暴力体制が一応一国二制度を約束した香港に持ち込まれようとしていることです。

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