「香港、警官発砲」に各国から批判~強く言えない日本政府の事情
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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(10月3日放送)に産経新聞論説委員・フジサンケイビジネスアイ編集長の山本秀也が出演。香港デモに対する各国の反応について解説した。
香港デモ、3日未明まで警察と激しく衝突~実弾発砲に怒り
反政府デモが続く香港で、警官の実弾発砲に怒るデモが3日未明まで行われ、警察とデモ隊が激しく衝突した。1日、中国建国70周年の日に行われたデモでは、警官が発砲した実弾により18歳の男子高校生が負傷。これに対する抗議として、数千人がデモ行進を行った。
森田耕次解説委員)高校生が左胸を警察官に撃たれたということで、2日も発砲現場となった新界地区など各地でデモ隊が道路を占拠したり、警察署の周辺で火炎瓶を投げたりするなど、過激化したということです。警察によりますと、1日の衝突では12歳を含む269人を逮捕して、およそ1400発の催涙弾を発射したということです。6月に本格化し、逃亡犯条例の改正案を発端とした抗議活動の逮捕者が2000人を超えてしまったということですが、1日あたりの逮捕者としては10月1日の269人がもっとも多かったということです。
山本)1日はもともとデモ自体を認めていませんでした。もちろん、荒れている現場もデモの枠外でやっているわけですけれども、それにしても香港警察は非難されて然るべきですね。至近距離から警告・威嚇もなしに突然発砲して、しかも胸を撃っています。そして結果論ですが、相手は未成年でした。これは過剰警備です。
森田)香港の警察は、すぐに発砲してしまうものなのですか?
山本)イギリス領時代から、ピストルを抜くハードルは低い警察でした。職質中に愚連隊に絡まれたりすると、すぐ上に向けて撃つということはありました。
森田)怖いですね。
香港警察の背後には、中国からのプレッシャー~耐え切れず辞める警官も
山本)ですが、これは背後の中国から「何とかしろ」というプレッシャーもかかっています。実際に、プレッシャーに耐えられなくなって、辞めてしまう警官も出ているようです。家族のなかで、子どもたちとまったく会話が成り立たなくなってしまったとか、いろいろあると思います。いずれにしても、これは香港政府の無為無策。それから背後にいる中国のプレッシャーと、香港返還からずっと貯めていた市民の怒りが爆発したという局面ですから、天と地くらいの温度差がある話ですね。
森田)中国の習近平指導部はどうなのでしょう? アメリカなどに相当批判されるのではないかと思うのですが。
山本)彼らがいままで何とか抑えたのは、治安出動です。軍隊や武装警察という、事実上の国内治安向けの軍隊があるのですが。
森田)深圳(シンセン)で訓練していたという。
山本)それがその軍隊です。ただ、法律的なハードルから言うと、香港に駐留している人民解放軍を出す方が法的には簡単なのです。香港基本法にもそれを想定した条例があるので、行政長官からの要望に基づいて北京がオーダーを出せばすぐに出るのですが、いきなり軍隊を出すと評判が悪過ぎるのはさすがに中国もわかったようで、武装警察を国境に集めたということでしょう。
中国国内では偏向報道
森田)中国国内では、当然この香港のデモは放送が中断されてしまうわけですよね。
山本)やっていることは伝わっているのですが、非常にけしからん動静として伝えられています。実際に騒ぎを怖がって、この夏は中国大陸からの観光客が激減しました。それから、まさに一昨日(1日)発砲のあった新界は国境に近いところですから、買い出し屋が日帰りで来るところなのですよ。買い出しの爆買い自体が、スーパーに行っても物がない事態になって、香港市民の不満を誘うことになったのですが、それだけ関係が深いところなのです。
各国の対応~日本政府ははっきりと批判するべき
森田)それから、イギリスはどうなのか。最近は香港に口出しするのでしょうか?
山本)今回、ラーブ外務大臣の発言は早かったと思います。「発砲は言語道断」というようなことを言っていました。もともとはイギリス領ですから、今日の香港の姿はイギリスと中国の合意で決まったので、イギリスは責任を持つべきだと思います。当然中国は拒みますし、イギリスとの合意は過去のものだという言い方もしましたが、それを鵜吞みにしてはいけません。何を言われようと口を出し続けて、目を光らせなければいけません。
森田)アメリカはどうなのですか? 米中で閣僚級の貿易協議がありますよね。
山本)貿易協議はもちろん貿易をしたいという話になるのでしょうが、香港に対しては、2日にも議会のトップがかなり強いことを言っていましたし、国務省も香港の総領事館員がデモ現場まで見に行っていました。だから、中国は「アメリカが後ろで糸を引いているのだろう」という言い方をしています。アメリカが無関心でいるとしたらおかしいですよね。むしろもっと積極的に、先頭に立って発言して欲しいです。
森田)日本政府はどうなのですか?
山本)菅さんもデモについては発言しているのですが、「話し合いで平和的に解決して」というようなことを言っておられました。もっと、「銃撃は言語道断だ」とはっきり言って欲しかったですね。
森田)ちょっと腰が引けているような。
山本)最近、日中関係がよくなりつつあると言われていますから。
森田)習近平さんが来年(2020年)の春に来日するのでしたか。
山本)それが頭にあるのかもしれませんが、言うことは言わないといけませんよね。
森田)この香港の問題は、まだまだ尾を引きそうですね。
山本)結末が見えないです。周庭(アグネス・チョウ)さんも一生懸命、日本語のツイッターで発信していますので、声に耳を傾けたいと思います。
中国建国70周年の習近平氏の演説では「一国二制度を維持」と表明
森田)習近平さんは軍事パレードや国慶節で、自分の強さを誇示して、一国二制度については。
山本)一応「やります」と言いましたが、あの演説は彼なりに抑えた演説だったと思います。「平和統一、一国二制度」という原則を言うところで止めましたから。あの人はすぐ、いらないことを言いますからね。
森田)この間の演説では、一応抑えていたということですね。
山本)ニュースがないことがニュースなくらい、つまらない演説でした。つまらないと言ったら叱られますが、何も飛び出たところがない演説でした。
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パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。