ジャーナリスト・福島香織が現場で見た香港デモ~若者が最前線で闘う理由

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(10月2日放送)では、1日と2日の香港デモの動きについて注目。ジャーナリスト・福島香織が現場からレポートし、作家・ジャーナリストの河合雅司が解説した。

ジャーナリスト・福島香織が現場で見た香港デモ~若者が最前線で闘う理由

至近距離で発砲に猛反発 男子生徒が警官に撃たれたことを受け、九竜地区のショッピングモールで開かれた抗議集会=2019年10月2日、香港(共同) 写真提供:共同通信社

香港デモ~警官に撃たれた高校生、命を取り留める

1日、中国で建国70年となる国慶節の祝賀行事が行われるなか、香港各地では抗議活動が呼び掛けられ、警察との激しい衝突に発展した。警察は男子高校生に実弾を発砲し、一時は重体だったが命は取り留めた。香港警察によると、合わせて4ヵ所で6発の実弾を発砲したが、残りの5発は威嚇射撃だったという。

森田耕次解説委員)1日の抗議活動による若者側と警官の怪我人は100人以上で、うち2人が重体という情報も入って来ています。この高校生は重体になったものの、何とか命は助かりました。ここで、香港で取材をしているジャーナリストの福島香織さんと電話がつながっています。こんばんは、よろしくお願いします。

福島)よろしくお願いします。

森田)1日の動きを教えていただきたいのですが、福島さんはどういったところを取材されていたのでしょうか?

福島)湾仔(ワンチャイ)から中環(セントラル)、東莞(ドングアン)の辺りですね。男の子が撃たれたのは九龍半島ですから、私は現場にはいませんでした。

森田)抗議活動は国慶節ということもあって、相当激しかったのでしょうか?

福島)いままででいちばん激しかったと思います。各地で起こっていて、最初から6ヵ所に分けて行われたのですが、私の取材していた香港島も火炎瓶や催涙弾の応酬で、かなり危険な状況でした。

森田)1日の国慶節の日は、決戦日と位置づけていました。普通選挙実現などの5大要求を中心に、デモをされていたわけですよね。

福島)そうです。アメリカが香港の人権・民主主義法案を本格的に可決する方向に行っています。その後に香港は地方選挙があるので、そこを目指して盛り上がろう、という雰囲気になっています。10月1日は国慶節で、北京で大きなお祝いがあるため、香港はこれに対抗して、中国共産党に対する抗議を鮮明にしてやれと、前々からかなり大きな行動をすることは予告していました。

ジャーナリスト・福島香織が現場で見た香港デモ~若者が最前線で闘う理由

実弾発砲で高校生重体 警官隊とにらみ合うデモ隊の若者ら=2019年10月1日、香港(共同) 写真提供:共同通信社

多くの施設が閉鎖

森田)地下鉄の駅が閉鎖になったり、商業施設もすでに休業だったところが多かったようですね。

福島)地下鉄の駅は全部で93あるのですが、少なくとも45は確実に封鎖されていました。完全に香港の地方は分断されていました。

森田)そうしたなか、九龍半島で高校2年生の男子生徒18歳が、かなりの至近距離で撃たれたようですね。

福島)その様子は香港大学の「キャンパスメディア」という、学生たちが自主的にやっているメディアがあるのですが、撃たれる瞬間のスクープ映像をトップにしており、非常に近い距離から心臓を狙って撃たれたように見えました。

森田)福島さんはその後、病院にも取材に行かれたようですね。

福島)容体が急変したらどうしようと思って、病院には行ってみたのですが、私が着いたときには手術は無事に終わって、容体も安定した状況でした。目は覚めていませんでしたが、エリザベス病院に転送される前にご家族が来た話や、学校の校長先生が来た話などは、先に来ていたメディアの人に確認を取りました。

ジャーナリスト・福島香織が現場で見た香港デモ~若者が最前線で闘う理由

中国・北京で建国70周年記念軍事パレードに参加する(前列左から)習近平国家主席、江沢民元国家主席、李克強首相(中国・北京)=2019年10月1日 写真提供:時事通信

撃たれた高校生の学校で集会

森田)きょう(2日)はどうなのでしょうか、抗議の動きは広がっているのですか?

福島)比較的穏やかで、1日のような激しいデモはほとんどありませんでした。撃たれた男の子が通っていた学校では朝から集会があり、学生や卒業生が集まって、抗議集会を開いていました。

森田)高校生も参加しているのですね。

ジャーナリスト・福島香織が現場で見た香港デモ~若者が最前線で闘う理由

集会に参加し、音楽に合わせてスマートフォンを揺らす生徒ら=2019年9月2日、香港(共同) 写真提供:共同通信社

将来に強い危機感を持つ香港の若者が

福島)そうですね。若い子だと、11~13歳くらいの中学生の姿もあります。いちばん前で激しい暴力をやっているのも、10代の子が多いです。10代~20代前半で、全体的に若い人たちの運動という印象はあります。

森田)ですから、若い人たちを中心に、民主化を守らなければいけないという考えが強いわけですね。

福島)50代や60代の人たちは、香港繁栄の恩恵を十分に預かっている人たちなのです。彼らはどちらかと言うと守りに入って、あまり香港の問題を大きくしたくないのですが、10代の子たちはこれから香港と共にずっと生きて行く気持ちが強いので、このまま香港に自由がなくなったらどうしようとか、かなり切羽詰まった気持ちでいるのは事実です。

森田)これから、ますます衝突が激しくならないといいのですが。

ジャーナリスト・福島香織が現場で見た香港デモ~若者が最前線で闘う理由

15日夕、香港・金鐘の政府庁舎前で、放水車の放水を受けるデモ隊=2019年9月15日 写真提供:産経新聞社

出口の見えない香港問題~政府とメディアが信用を取り戻すまで社会は安定しない

福島)すでに自殺者という意味で、犠牲者が出ています。いろいろな不審死の噂もありますし、太子(プリンス・エドワード)駅で亡くなった方がいるという噂もあります。また、拘置所に入れられている人たちが拷問を受けているという噂も出ていて、警察や政府全体に対して大きな不信感があるのです。情報の出どころがはっきりせず、大手メディアが信用できないということで、社会全体の不安感が増している気がします。そういうことが暴力の引き金になったり、抵抗運動になったりするので、政府が信用を取り戻すために誠実に対応する、メディアが信用を取り戻すというような根本的な問題を解決しなければ、社会は安定しないと思います。

森田)ありがとうございました。河合さん、いかがでしたか?

河合)出口が見えないというか、要求は逃亡犯条例の改正案の撤回から始まったわけですが、いまはそれ以外にも4つの要求をしてデモ活動が行われていますが、仮にこの要求している4つのことが叶ったら、元に戻るのか。それができない状況に入ってしまっているのではないかと思います。どう収束して行くのか、中国政府にも香港政府にも、デモをやっている人たちにも見えなくなっている状況です。国際社会がこの問題を見守って行かないと、香港だけの問題では済まない気がします。

森田)世界中でこの問題を注視して、民主化を守って行かなければいけないですね。

ザ・フォーカス
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