習近平氏「平和発展の道を進んだ」~違和感のある建国祝賀会での発言
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月1日放送)にジャーナリストの有本香が出演。中国の建国祝賀会で行われた習近平国家主席の演説について解説した。
中国の習近平氏、過去70年~世界を驚かせる発展と演説
建国70周年を控えた中国で9月30日夜、建国祝賀会が開かれ、習近平国家主席が各国の来賓や共産党幹部を前に演説を行った。習近平氏は中国が過去70年で「世界を驚かせる発展を遂げ、平和発展の道を進んだ」と総括。将来の課題を克服するため、「団結は力だ。党中央の周りに団結し、愛国主義精神を大いに発揮するべきだ」と呼びかけた。
飯田)1日の軍事パレードは過去最高のものとなる、大陸間弾道弾の新型のものなども公開される見通しだというような、勇ましいことも報じられていますが。
違和感のある「平和発展の道を進んだ」
有本)過去70年間、確かに発展は遂げて来たのかもしれません。ただ、隣の国の国家主席のことなので文句を付けたくはないのですが、「平和発展の道を進んだ」と世界中の人が聞いたら、みんな違和感があると思うのですよ。対外戦争をずいぶんやっていませんか? 朝鮮戦争、中印国境紛争、ベトナムとも中越戦争をやっています。
飯田)旧ソ連とも、ダマンスキー島で。
有本)それから戦争にはなっていないけれど、台湾海峡でも90年代にいろいろとありましたよね。一応いまは中国の領内、国内ということになりますが、チベットだって軍事侵攻しました。
飯田)ウイグル、チベット。
有本)国内でも人権問題なんて生易しい言葉では言えない、特定の民族を弾圧するということが世界的に問題になっているわけです。それと、平和発展の道を進んだと言うのに、軍事パレードをやるというのはどうなのでしょうかね。
飯田)そうですね。
有本)最近、ショックだったことがあります。私が毎週木曜日に出ている「虎ノ門ニュース」というネット番組で、9月に佐藤正久参議院議員が久しぶりにゲスト出演してくださいました。
飯田)外務副大臣。
この四半世紀で大きな脅威となった中国
有本)90年代に台湾で総統選挙をやるときに、中国が台湾海峡へミサイルを撃つというような事態になった。そのときにアメリカの空母が2隻、台湾海峡に差し向けられて、中国の攻撃が止まった。そういうことがあって、当時の台湾の人が「アメリカの空母が来てくれて頼もしいと思った」ということを言っていました。けれど佐藤さんが言うには、仮に今後、同じ事態が起きたとしても、おそらくアメリカはあのときのように、速やかに空母を差し向けるようなことはしないであろうと。それくらい中国の力がついてしまったと言っています。この四半世紀でガラっと変わってしまったのですよ。
飯田)情勢が。
有本)むしろ、力のバランスが完全に変わってしまったということです。これに向き合っている日本はどうなのかと言うと、あまり変わっていないではないですか。
飯田)国内の議論も含めて、何も変わっていない。
有本)何も変わっていないと言ってもいいですよね。集団的自衛権の行使を一部認めるというような、憲法解釈の変更ということはありましたが、本質としてはほとんど変わっていません。
飯田)現場で武器を使えるかどうかという議論になってしまったり。
国防を実行しなくてはいけない段階にある日本
有本)いまも有事となったときにどうなるのか、誰も予測がつかないところにいるでしょう。一方で台湾は、着々と中国の脅威が大きくなっていることに対して備えをしています。日本だけが何となく覚束ない感じなのです。日本に関して言うと、今後それこそ平和発展の道を変わらず歩いて行くために、もはや国防を真剣に考えたり議論するという段階ではなく、きちんと実行する必要があります。
飯田)国防を考えると、軍事部分の安全保障の話ということで、「戦争をする気なのか」という批判もあります。その一方で、情報戦などの部分も中国は非常に長けているわけですよね。
有本)8月の終わりに台湾に行ったときも、あちらの与党民進党の方と話をしていたら、自分たちがいまいちばん苦慮しているのは、中国からのフェイクニュースだと言っていました。
飯田)言語も同じだけに。
有本)いろいろなものが差し込まれて来るらしいです。「へぇ」と私が聞いていたら、日本だって他人事ではないでしょう、日本もあるはずですよと言われました。
飯田)台湾の方が研究をしているというわけですね。
サイバーやセキュリティでも立ち遅れている日本
有本)その辺りも、日本サイドはどのように対応しているのかと言うと、政府の対応はやはり覚束ない。例えばサイバーの世界、セキュリティの分野でも日本は立ち遅れていますよね。ですから現代における、武器を交えて戦争をするという話ではない部分も、日本は消極的でおっとりしている。大丈夫なのかなと思いますよね。
飯田)香港での民主、自由を求める戦いに関しても、日本の国会や政府は及び腰です。
香港の問題に対して与野党一致して応援するべき
有本)一応、G20のときに習近平国家主席に対して、安倍総理は香港の問題をつきつけていますが、政府として、あるいは国会としては音なしの構えでしょう。10月から国会が始まりますが、私はできたら冒頭で香港の問題を扱ってほしい。中国に対して、「平和的に解決する。そして香港における本来の一国二制度が趣旨としていたこと、50年間守るとしていた香港の自由は保障すべきだ」という声明なり何なりを、全会派一致で決議してもらいたいと思います。あまり望めそうにありませんが、野党側の人たちだって、香港デモの主導者の人が来日したときに会ったりしているではないですか。
飯田)アグネス・チョウさんとかね。
有本)ですからこの場面においては与野党一致で、日本の民主主義の府が、香港の求める民主を応援することはできるのに。
飯田)価値観を共有するわけですからね。
有本)そういう話題が聞こえて来ないのは、非常に悲しいですね。
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