アメリカ政権が交代しても米中関係は変わらない―その理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月13日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。中国の劉鶴副首相が米中事務レベル会合の開催を明らかにしたニュースについて解説した。

アメリカ政権が交代しても米中関係は変わらない―その理由

会談を前に握手するトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席=2019年6月29日、大阪市(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

アメリカと中国が事務レベル会合を開催へ

中国の劉鶴副首相は12日にアメリカの経済団体代表と会談し、10月上旬に開催する米中の閣僚級貿易協議に向け、来週にも事務レベル会合を行うことを明らかにした。米中は1日に互いの輸入品ほぼすべてに追加関税を拡大する制裁、報復措置の一部を発動。アメリカはさらに10月1日に制裁関税の第1弾~第3弾の税率引き上げも予定していたが、トランプ大統領は閣僚級の協議を睨んで、実施の時期を同15日に2週間延期する表明をしている。

飯田)同じようなニュースを永遠と読んでいる気がしますね。

宮家)そうですね。2018年、2019年の前半とあまり変わらないですよね。いつも言っていることだけれど、これは単なる貿易戦争ではなく、米中の覇権争いです。しかもこれは10年、15年と続く。中国はトランプ大統領を見ていて、半分匙を投げていると思います。「こいつではだめだ」と。となれば、来年(2020年)の大統領選挙でいなくなるかもしれないから、少し待ってみようかと普通は思います。アメリカの方だって選挙がかかっていますから必死です。トランプ大統領が選挙に勝つためにはどうしたらいいかと言うと、移民問題で移民を叩き、経済をよくしたまま中国を叩く。そうやって勝とうと思っているわけだから、中国との関係で譲歩するわけがありません。

アメリカ政権が交代しても米中関係は変わらない―その理由

米中の貿易摩擦を背景に、大幅な値下がりが続く日経平均株価を示すモニター=2019年8月6日午前、東京都中央区 写真提供:産経新聞社

アメリカ政権が交代しても終わらない米中貿易戦争

宮家)何らかの暫定的な合意ができるとしたら、米中対立のおかげで世界経済がおかしくなって、マーケットが悲鳴をあげ、為替も株価も動く。それは嫌だから、米中がどこかで一時的に、表面的な暫定合意をするということはある。でも、それで問題が解決するかというと、するわけがない。これはだらだら続くのですよ、少なくともトランプさんがいる間は。12日、13日と欧米の識者に話を聞いてわかったことですけれど、アメリカ人たちは仮に次期大統領が民主党になっても、構造的に中国との関係はよくならないと言っています。中国だって1度自由化してしまったら、中国共産党のグリップがなくなってしまう。それは死活問題ですから、この問題はずっと続くのです。もしマーケットにいる人で、具体的な品目に関係がある人は、一喜一憂しなければいけないですけれどね。

飯田)それに関わる産業の人が。

宮家)お金が関わるからね。個々の品目ではなく、米中関係を大きな流れで見たときには、近い将来の完全な合意はないし、あっても暫定的なもので、あくまでもマーケットに対する一時的な対応にすぎないと私は思います。

飯田)もし政権交代しても態度が変わらないとしたら、中国側としては、先延ばしで行くということになってしまうのですか?

アメリカ政権が交代しても米中関係は変わらない―その理由

正念場に来ている中国経済と共産党体制

宮家)でも、そんなことをやっていると、今度は中国経済自体が曲がり角になってしまいます。経済学用語ですけれども、Middle-income trap(中所得国の罠)という概念があります。これが中国では時間の問題なのです。中国の特色ある中所得国の罠、中国がそれに直面するのは時間の問題ですから、中国自身がある程度の自由化をし、規制緩和をし、構造改革をしないと、経済自体が再活性化しない。やらなくてはいけないのですが、それをやると共産党が傷つく。

飯田)中所得国の罠、大体の所得が1万ドルですか。

宮家)1人当たりの所得が1万ドルを超える状況になると、いままでのような安い賃金による輸出主導ではなく、もっと内需を拡大して、イノベーションをする必要がある。そうしないと所得が2万ドル、3万ドルには行かないという理論ですが、中国はまさにそこへ差しかかっているのだと思います。そのことは、中国でもわかっている人はわかっているのだけれど、そんなことをすれば共産党が潰れてしまう。だから国有企業も本当は改革しないといけないのですが、改革ができていない。むしろ逆行している。中国としては本当にいまが正念場ですね。

飯田)その状況で、いままでだったら地方から安い労働力が沿岸部に出て来ていたけれども、一人っ子政策が効いていて、このまま高齢化するかもしれないという話もありますよね。

宮家)人口は急速に高齢化もするし、賃金が上がると輸出だけでは商売にならないから、外国企業の一部は撤退を始めています。そのような状況でどうやってイノベーションを続け、経済レベルを維持するか。これは大変です。しかも政治的なグリップは持っていたい。そんなうまい話はあるわけがないと私は思います。でも、彼らは強引にやってしまうのですよ。

飯田)それで体制が揺らぐのではないかと、30年~40年前から言われ続けて来たけれど。

宮家)彼らは経済的な利益よりも、政治的な利益の方を優先しますから。仮に経済がおかしくなっても、共産党の指導、独裁は変わらないと思います。

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