警官が若者に発砲で2名負傷~香港社会の分断は退職する警官も出る激しさ

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(11月11日放送)に産経新聞論説委員・フジサンケイビジネスアイ編集長の山本秀也が出演。香港での政府と民衆の衝突の激化について解説した。

警官が若者に発砲で2名負傷~香港社会の分断は退職する警官も出る激しさ

香港でデモ隊の1人(中央)に発砲する警官(手前左)(2019年11月11日公開の映像より)AFP PHOTO / CUPID NEWS AFP=時事

続く香港騒乱~警官が若者に発砲で2名負傷

共同通信によると、香港島東部の地下鉄の駅前で11日朝抗議活動を行っていた若者らに向け、警察官が実弾3発を発砲し、2人が負傷した。うち21歳の男性が重体。

森田耕次解説委員)香港島の東部、西湾河の地下鉄駅前で11日朝、道路に障害物を置くなどの抗議活動を行っていた若者らに向けて、警官が実弾3発を発砲しました。2人が怪我をして、このうち21歳の若者が病院で緊急手術を受けましたが、重体です。香港では、催涙弾を避けようとしてビルから転落したと見られる男子学生が11月8日に亡くなったということで、初の死者ということで反発が強まっていました。そこで、11日は香港各地で若者たちが鉄道や道路に障害物を置いて、交通妨害を行っていました。現地からの映像によると、西湾河では路上で若者ともみ合っていた警察官に黒シャツマスク姿の別の若者が近づいて、警官が至近距離から1発発砲しました。そして、黒シャツの若者が腹部を抑えて倒れました。さらに、別の若者が警官に近づいて警官が2発続けて発砲し、この若者も怪我をしています。発砲の音にはびっくりしましたし、映像も衝撃的でした。

山本)映像はインターネットで見られるのですが、これは酷いですね。

森田)香港政府は警官が発砲し、男性に当たったことを認める声明を発表しております。メールもいただいています。渋谷区の“よういち”さん「また1つタガが外れたのでしょうか。香港の発砲、今回は映像があります。前回の大学生の死亡は直接の映像がなく、情報としての事件でしたが、今回は見る人が実感できてしまいます。反政府側の抗議はテロのように過激化、先鋭化し、それに呼応するように弾圧も激しくなり、何人も死者が出そうです。今朝のテレビで彼らのスローガンが「香港人頑張ろう」から「香港人は復讐する」と変わった説が話されていましたが、さらに騒乱が酷くなったときに自由陣営の国々は彼らを救うことができるのか。難しい判断を迫られそうですね」というメールです。

警官が若者に発砲で2名負傷~香港社会の分断は退職する警官も出る激しさ

死亡した男子大学生が転落した現場近くで花を手向ける人たち=2019年11月8日、香港・新界地区(共同) 写真提供:共同通信社

死者を象徴にして、さらなるデモの過激化が予想される

山本)まったくその通りです。いまのメールのなかにもあった最初の死者は8日に病院で亡くなったのですが、この方はどういう状態で亡くなったのかはっきりわかりません。問題は、運動をやっている人々が仲間を1人殺されたと受け取ったことです。日本の過去の安保闘争でも、樺美智子さんが亡くなって、これが象徴になりましたよね。同じような可能性があるところまできて、今朝の発砲事件です。映像を見ればわかりますが、若者ともみ合っている状態のところに1人近づいてきました。近づいた黒シャツの男性は手に何も持っていないのに、男性に向けていきなり発砲しているのです。これは映画のようにパタンと倒れてしまって、それきり警官が駆け寄っている間に血が流れています。これは火に油を注ぐことになるでしょう。実際に現地の報道を確かめてみたのですが、既に香港市内の繫華街のあちこちに放水車や装甲車が配置されたという情報が流れています。今夜も事態がさらに悪化しそうな気がしますね。

森田)安全な場所と危険な場所の区別はないということなのでしょうか。

山本)香港も広いので何とも言い難いのですが、荒れる場所に行くと非常に危険ですね。

森田)西湾河も在留日本人が住むエリアだと聞くのですが。

山本)かなり下町なのですが地下鉄が通っていて、これがセントラル方面に1本で出られますので、日本人の駐在員はこの沿線上にはあちこちいると思います。

森田)これだけ激しくなった原因なのですが、今月4日に習近平国家主席が上海で香港の林鄭月娥行政長官と会ったときに、習近平主席が「暴力と混乱の静止が最重要任務だ」と林鄭月娥長官に話したようですね。

山本)治安の回復を求めたようですが、同じ文脈で香港の法律を強めて押さえつけろという党の決議も出ていますので、警察側としては上からのプレッシャーもあって強く出なければいけないということで、銃器の使用もためらわなくなっています。非常に危険な状態だと思います。

森田)それで強硬姿勢を香港政府が強めていると。

警官が若者に発砲で2名負傷~香港社会の分断は退職する警官も出る激しさ

香港・新界地区で、警察がデモ参加者(左端)に実弾を発射する瞬間とされる映像=2019年10月1日 香港大学学生会提供 写真提供:時事通信

香港人同士の争いで社会に混乱広がる

山本)そこから手に負えなくなると、いよいよ中国の治安出動ということになるのですが、その前の段階で香港人同士を争わせているという風にも見ることができます。

森田)香港人同士で。

山本)香港の統治のスローガンで「香港人による香港統治」という大前提があったのですが、これが悪い形で実行させられていると見ることも可能だと思います。もちろん中国の武力介入も許されないことなのですが、これはこれで悲惨なことですよね。実際に香港社会のなかで分断が激しくなっていますね。これは報道でも出ていますが、警察官の家庭でも奥さん、子どもと旦那さんの意見が合わなくなって会話が成り立たないとか、警察官を辞めてしまう人がいる状態です。香港社会に修復の難しい亀裂が広がりつつあると思います。

ザ・フォーカス
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