香港林鄭月娥行政長官が非公開の場で語った「人民解放軍介入の有無」

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月4日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。香港の林鄭月娥行政長官が私的な会合で述べた内容について解説した。

香港の林鄭月娥行政長官が辞任を否定

抗議活動が続く香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が、非公開の会合で「選択肢があるなら辞任して謝罪したい」と述べたとする報道を受け、3日の記者会見で辞任の意向を中国政府に伝えたことはないと強調した。また私的な会合の内容が公開されたのは不適切だと、不快感も表明している。

飯田)ロイター通信が報道したのですが、8月下旬に行われた実業家グループとの非公開会合のなかで、選択肢があるなら辞任して謝罪したいと述べたと。音声も公開されたのですよね。

香港林鄭月娥行政長官が非公開の場で語った「人民解放軍介入の有無」

香港国際空港の出発ロビーを占拠した逃亡犯条例の改正反対派(中国・香港)=2019年8月13日 写真提供:時事通信

中国政府が武力介入することはない~時間をかけて香港の民主的な体制を保つべき

佐々木)ロイター通信は日本語の記事にもしていて、『特別リポート:「可能なら辞任する」、香港トップが明かした胸の内』という見出しになっています。辞任したいけれど中国政府が辞任させてくれないと前から報道されていたので、それを裏付ける内容です。香港で問題になっているのは、人民解放軍が武力鎮圧するかどうかというところですが、林鄭月娥長官はここで、「中国政府は軍介入の代償は大きすぎると分かっており、国際的な体面に注意を払っている。だから経済大国として国際的に認められるようになって来て、こういうプラスの変化を投げ捨てることが政策に含まれていないことは明白である」と言っています。要するに、「武力介入はしないだろう」と発言しているのです。さらに今後どうするかについて、「中国政府はじっくりと構えて乗り切るつもりだという見解を示している」と。短期的なことはなさそうなので、香港の人にとってもこの発言が公になったことは、大きな後押しになるのではないかと思います。

飯田)息の長い活動というか。

佐々木)そうです。デモ側もここで一気に決着をつけないで、時間をかけて香港の民主的な体制を保つという運動に展開するのがいいのではないでしょうか。

飯田)中国側としては2014年に雨傘革命があって、街頭の占拠などもあった。それが自然と、潮が引くようになくなって行ったという流れに乗せたいのだとも言われていますよね。

香港林鄭月娥行政長官が非公開の場で語った「人民解放軍介入の有無」

集会に参加し、音楽に合わせてスマートフォンを揺らす生徒ら=2019年9月2日、香港(共同) 写真提供:共同通信社

香港の若者の貧しさの不満が中国共産党への不満につながっている

佐々木)そうですね。今回が雨傘革命のように収まらなくなっている原因の1つに、香港の置かれている状況が前と変わって来ている部分があります。大陸の経済活動が発展して巨大になり、香港の地位が相対的に低下している。2010年代に入ってから、先進国の若者が貧しくなりつつある状況があります。日本でもその状況をあちこちで目にしますが、香港の若者も貧しくなっていて、その不満が中国共産党への不満につながっているということがある。

飯田)たしかに香港の住宅価格なども上がっていて、大学を卒業して就職したところで香港に家が持てず、ずっと自宅暮らしを続けなければならないと言われています。

佐々木)土地が狭いですからね。日本なら東京は大変だから地方に移住するということができますが、香港ではできません。国外に行くか留まるかですから、閉塞した状況です。

飯田)その原因の1つが、中国本土で勃興して来た中間層が、香港で住宅を買うからだということです。

佐々木)それでますます地価が高騰する。しかも中国政府は深圳、マカオ、香港を一体とした経済エリアを成長させようと、長期的には狙っています。そうなると香港は独立した地域ではなく、深圳の一部のようになる可能性もあります。そうなると、ますます香港の相対的地位が低下するのは間違いないので、素晴らしい香港を維持して行くのは難しくなる。

飯田)いまの現状を維持して行くということも、逃亡犯条例ができれば難しくなるという、相当な危機感が香港市民にはあったわけですよね。

香港林鄭月娥行政長官が非公開の場で語った「人民解放軍介入の有無」

28日、香港で、警官隊が発射した催涙ガスから逃れるデモ参加者=2019年7月28日 写真提供:時事通信

日本は香港と台湾を支えるべき

佐々木)香港は日本に対して期待しているのです。東アジアで孤立しつつあるという話をしましたが、日本も民主主義国家としての矜持を保ち続けていて、そこが台湾や香港と共に中国に対抗する1つのラインになっているのです。だから我々も、香港と台湾を支えるという日本社会としての誇りを持つべきだと、個人的には思います。

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