イギリスのEU離脱は“グレート・ブリテン連合王国解体”の始まり
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月16日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。イギリスのEU離脱について解説した。
イギリス・ジョンソン首相、16日にも内閣改造
12日の総選挙で与党保守党が大勝したイギリスのジョンソン首相は、16日にも内閣改造に乗り出す見通し。そして年明け、1月末のEU離脱の実現に向けた議会手続きを本格化させる。
飯田)保守党は650議席のうち、47議席増やして365議席となり、30年以上ぶりの大勝ということでした。
スコットランド国民党が48議席獲得~グレート・ブリテン連合王国の解体へ
須田)保守党の議席増というところにばかり注目が集まっていますけれども、もう1つ注目しなければならないのは、スコットランド国民党が13議席を増やして、48議席も獲得したということ。これはグレート・ブリテン連合王国が、解体の方向に向かっているということになります。イングランドとスコットランド、北アイルランドが分裂の方向に向かって行く、その大きなきっかけになる総選挙であったと言えます。もちろん改めて言うまでもなく、スコットランドはEU残留派です。その辺りはイングランドとまったく考え方が違います。スコットランドはスコッチウイスキーなど、EUとの貿易がかなり活発であり、それが産業の中心になっていて、残留した方がスコットランド経済には大きなメリットがある。その残留したいという気持ちが表れているのが、今回の議席数となった。そうすると近い将来、もう1度スコットランドはイギリスから独立するかどうかという住民投票が行われる可能性が、極めて高いのではないかと思います。
北アイルランドとアイルランドの問題
須田)そしてもう1つは、北アイルランドの問題です。北アイルランドの政党は増減なしでしたが、今回のEU離脱の柱というのは、北アイルランドとアイルランド共和国の間の税関はフリーパスである。その代わり、北アイルランドと本国の間の税関はきちんと設けるということで、これに対する反発が起こっているのです。これは言ってみれば、IRAなどの独立派のテロ活動を抑えるためという大義名分はあるのですが、そうすると「北アイルランドの存在は一体何なのか」というところになり、これも独立志向を強めることになるのだろうと思います。
飯田)もともと、アイルランドそのものはカトリックの国で、北アイルランドの部分は国教会の人も多いということで、あの形になっていた。けれども、今度はアイルランドと1つになるのかという話になって、これも揉めそうですものね。
須田)その方が、北アイルランドの多くの住民にとっては、もしかするとハッピーなのかもしれない。普通に考えて、宗教上の部分で分離が行われただけですから、一体化をすると。民族的には一緒ですからね。
飯田)ラグビーのワールドカップでは、同じアイルランドチームとしてやるのですものね。
須田)宗教の違いでしかなかったわけですから、むしろアイルランドという島のなかで一体化したほうが、自然だという方向に向かうのではないかと思います。
WTOのルールに乗って関税が決まって来る
飯田)日本企業への影響について、メールをいただいております。“山登り大好き”さん、相模原市中央区、62歳の会社員の方から。「うちは工場がイギリスにあるのですが、取引先と撤退が決まっていて仕事量が減り、この先不安です。本当に離脱は正解なのでしょうか?」と。産業面に与える影響は、当然出ますよね。
須田)イギリスに生産拠点を置いていて、EUと取引をやっているところは、そういう懸念や心配が出て来るのでしょう。しかし、たとえイギリスが合意なき離脱に至った場合でも、WTOのルールに乗って関税が決まって来ますから、ゼロとは行かないけれども、それほど大きな影響もない。ただ合意なき離脱にはなりそうもないので、離脱と同時に各エリアとFTAの協定、自由貿易協定を結ぶのだと思います。そのなかで、イギリスとEUとの間の協定によって、他の国よりも虎視眈々と狙っているのがアメリカですよ。イギリスとの間でFTAを結び、アメリカ・イギリスの一体化を狙っているのですが、それに対してEUは牽制しています。自分たちよりも有利な条件で結ぶことは許せないし、そういう協定を結ぶのであれば、まずEUとやって、その後で他の国として欲しい。日本もイギリスとの間でFTAを結ぼうという動きを加速させていますから、実際の離脱までに大きな枠組みが決まって行くのではないかと思います。
日本はEUとのFTAに準ずる形になる
飯田)13日に自民党の佐藤正久さんをお呼びして、解説いただいたのですが、来年(2020年)の年末に離脱になる。1度延長できるけれども、ジョンソンさんは延長しないと言っているから、そこまでに協定やFTAなりを結ばなくてはならない。日本とイギリスの議会での議決を経なければいけないことを考えると、時間はあまりないという指摘もありますけれども。
須田)それほど詳細な部分を詰める必要は、果たしてあるのか。FTAについてもEPAについても、前例があるわけですから。日本はEUとのFTAがあります。それに準ずる形になるのではないでしょうか。
飯田)なるほど。そうすると、現状とほぼ同じ。
須田)そういうことになるのではないかと思います。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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