“経験者”佐藤優が語る東京地検特捜部の取り調べと勾留手続き~IR汚職事件・秋元司容疑者に起こること

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(12月26日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。IR汚職事件での東京地検特捜部の取り調べについて解説した。

元政策秘書と元私設秘書の自宅などが東京地検特捜部の家宅捜索を受け記者団から質問される自民党・秋元司衆議院議員=12月9日午後、国会内 写真提供:産経新聞社

秋元司容疑者、10日間の勾留決定

日本のIR(統合型リゾート)事業をめぐる汚職事件で東京地裁は26日、収賄容疑で逮捕された秋元司容疑者の勾留を認める決定をした。勾留期限は2020年1月4日。贈賄側の中国企業「500ドットコム」の顧問ら3人についても、同日までの勾留を認めた。

森田耕次解説委員)IR事業をめぐる汚職事件、東京地検特捜部に収賄容疑で逮捕された衆議院議員の秋元司容疑者と中国企業「500ドットコム」側との間で現金300万円の授受があったのは東京・永田町の議員会館のなかの事務所だったと見られることがわかりました。特捜部は25日、関係先として千葉県・印西市の自民党の白須賀貴樹衆議院議員の地元事務所、宮城県石巻市にある自民党の勝沼栄明前衆議院議員の地元事務所も家宅捜索しています。2人は2017年12月、秋元容疑者と共に深圳にある「500ドットコム」の本社を訪問していたということです。新たな情報としては、東京都内にある大手パチンコチェーンの本社を東京地検特捜部が26日に家宅捜索しました。このパチンコチェーンの会社は秋元容疑者と関係の深い都内のコンサルタント会社と取引があり、特捜部は秋元容疑者の資金の流れを調べています。このコンサル会社は秋元容疑者の元政策秘書が代表取締役を務めていて、芸能タレントのマネジメントや企業経営コンサルタント業務などを目的に、2011年につくられたということです。東京地裁は秋元容疑者の勾留を2020年の1月4日まで認める決定をしました。

東京拘置所に入る、衆院議員の秋元司容疑者を乗せたとみられる車両=12月25日午後0時42分 写真提供:共同通信社

佐藤が語る勾留手続きの様子~「身に覚えがありません」という判子で処理されるショック

佐藤)勾留の手続きは捕まった翌日ですよね。朝一番でバスに乗せられるのです。手錠をして、捕縄をつけられて。2人くらい刑務官がついて、東京地方裁判所の地下2階に仮監というものがあるのです。これは、仮の監獄という意味です。これは一畳半くらいしかなくて、畳の上に座っていると座布団がないのでお尻が痛くなるのですよ。拘置所も仮監も時計がないので、そこに何時間座らせられたのかわかりません。仮監に入る前にはパンツを含めて1回全部脱いで、裸になって検査があります。しばらく経ったら呼び出されて、エレベーターに乗せられて部屋に通されたと思ったら、窓がないのです。10畳くらいのその部屋には、お年を召したおじいさんと中年のおじさんがいて、すごく暗い声で「ここは裁判所です」と言うのです。窓もなく、傍聴人もいません。そこで、「あなたはこの容疑で逮捕されました。これを認めますか」と逮捕状を読みます。それで、「こんなことはやっていないです、仕事の上でやったことです」と言ったら「はい、わかりました」と言って横にいる裁判所の書記官に目配せをして、判子をポンと押すのです。それには「身に覚えがありません」と書いているのです。だから、何があっても「身に覚えがありません」ということになるのです。

森田)26日の取り調べに対して「身に覚えがありません」と話している、ということでした。

佐藤)これは何を話しても「身に覚えがありません」という判子にしかならないのですよ。それで下の部屋で数時間待たされて、「決定が出ました。勾留が10日間延長されます」となって帰るのです。

森田)まさにその手続きを秋元容疑者はしたわけですね。

佐藤)仮監に入るときの素っ裸を含めてのショックと、何を話しても「身に覚えがありません」で処理されると。ベルトコンベアの上に乗った気分になって、早く自白して楽になろう、という気持ちに普通の人はなるのです。こういう儀式ですね。

秋元司衆院議員の事務所からダンボール箱を運び出す捜査関係者ら=2019年12月19日午後、東京都江東区 写真提供:産経新聞社

東京地検特捜部の本気度~広がる捜査範囲

森田)そして、拘置所に帰っていくわけですね。この事件はかなり拡大して、白須賀衆議院議員と宮城の勝沼前衆議院議員に加えて、パチンコチェーンの本社も家宅捜索ということで、東京地検特捜部も本気モードということでよろしいでしょうか。

佐藤)本気モードです。国会議員を捕まえるのは10年やっていないわけですし、贈収賄は16年ぶりですからね。これでこけたら組織の沽券に関わります。それから、警察官は正義感が強いですから、背後には「桜を見る会」や閣僚が2人も辞任したことで、野党のだらしなさや権力の緩みに危機感を感じたからでしょう。

森田)かつての巨悪に立ち向かう地検特捜部のような。

佐藤)彼らの世界ではそうなのですよ。拍手喝采が欲しいですから、いろいろと情報をリークして。今回、逮捕状が請求されているという情報が、朝日新聞だけに逮捕される前の朝に出ているでしょう。あれはとてもヤバイ話ですよ。もしそれで逃げてしまったらどうしますか? 国家公務員法違反の情報漏えいがどこかで起きているわけでしょう。だから、筋に関しては検察筋と書かないですよね。関係者だったら弁護側かどうかわかりませんから。これは少し変なのですよ。秋元さんを擁護するわけではないですが、報道先行のやり方は鈴木宗男事件のころに戻ったような感じですね。小沢事件や石川事件のときは、その辺りが非常に慎重でした。村木厚子さんの事件もありましたので、慎重になっていたのがいまはリーク先行になっています。

森田)かつてのゼネコン汚職のときに近い感じになっていますね。

佐藤)特に朝日新聞の報道が先行しているのが非常に気になります。

森田)安倍政権はこのIRを成長戦略の柱に据えているところもあります。

佐藤)ですから、権力内部での闘争になってくる可能性もありますよ。

森田)中国企業がバックにいるということも、アメリカのカジノ会社と中国のカジノ会社の関係も含めると、いろいろな裏を考えてしまいますよね。

佐藤)これは掘っていくとかなり面倒くさい事件になるから、検察としてもどこかのところで歩留まりをつけなければいけなくなると思います。

森田)そして、パチンコチェーンの本社の家宅捜索というのも、これからどう広がっていくのか見通せないところがあります。

東京拘置所

年末年始にかけて集中的な取り調べが行われる

佐藤)ですから検察としては千客万来路線で、「秋元さん、1人じゃ寂しいだろう。たくさん来るからな。部屋も空けてあるからな」という感じだと思いますよ。

森田)宗男さんのときの佐藤さんみたいな感じですか。

佐藤)私の場合は逆で、私のような小物を捕まえてから親へ手を伸ばしていきました。ただ、鈴木さん以外の国会議員には伸びませんでしたからね。それこそ、松岡利勝さんなどいろいろな名前は出ていたのですがね。1人だと「個人の逸脱」なのですよ。2人だと「組織犯罪」になります。2人にするかどうかで、政局に与える影響も大分変わってきます。

森田)地検としてはこの年末年始でずっと取り調べを行ったり、押収した証拠物を分析したりして、寝ずの捜査をしていくのでしょうか。

佐藤)それと同時に、もうすぐお休みに入るでしょう。役所ですから差し入れもなくなって、面会もできません。そういったときに一気に落とすと。ここでも本気度を感じますね。

森田)ただ、国会が1月20日くらいに開会するのではないかということですから、多少時間との勝負だということですね。

佐藤)しかし、国会が許諾をすればなかに入れられるわけですからね。もう1つは、これは認めた場合ですが、本人が外へ出てきたくなくなるということがあるのですよ。それから検察側からは、「対外的には『認めていない』ということにしておいて“ハンサム”にしてあげるから、認めちゃいなよ」というオファーもあるのです。「対外的には『認めていないですごく戦っている』ということにしておくから」と。

森田)そういうこともあるのですか。

佐藤)「実はこの人はこうやったのだ」という話をして、「あなたもやらないか」と誘われるのですよ。向こうは取り調べのプロですからね。

ザ・フォーカス
FM93AM1242ニッポン放送 月-木 18:00-20:20

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錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。

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