ゴーン被告保釈から見える日本の“慣習”にある取り調べの問題点

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月11日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。カルロス・ゴーン被告保釈の裏にある日本の人質司法について解説した。

ゴーン被告保釈から見える日本の“慣習”にある取り調べの問題点

東京拘置所を出る日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告=2019年3月6日午後、東京都葛飾区 写真提供:産経新聞社

カルロス・ゴーン被告保釈~日本の人質司法とは

3月6日、保釈保証金10憶円を東京地裁に納付し、東京拘置所から保釈された日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告。保釈が認められた訳と、日本の人質司法の在り方について須田慎一郎が解説する。

飯田)最初の逮捕から108日経って保釈ということになりました。検察の筋で、認めないとずっと拘留されることがよく言われており、人質司法という呼ばれ方もしますね。

須田)多くの新聞では異例の保釈と言って、この保釈自体が驚きなのだという報道の仕方をしますが、本来はこれが普通だと思うのですよ。多くのメディアはどちらかと言うと東京地検特捜部寄りの論調や記事が多いから、そういう表現を使っているしそう思い込んでいるのかもしれません。でも僕はこれがあるべき姿ではないかなと思うのですよね。

ゴーン被告保釈から見える日本の“慣習”にある取り調べの問題点

【ゴーン被告保釈】弁護士事務所を出るカルロス・ゴーン被告=2019年3月6日午後、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

なぜゴーン被告は拘置され続けたか~証拠隠滅も口裏合わせもできないはずだった

須田)カルロス・ゴーン被告は、言ってみれば会社法違反で逮捕されているわけですよね。つまり有価証券報告書の虚偽記載よりも、特別背任罪の方が本丸なのです。それについてはすでに起訴されていて、起訴されたということは取り調べはもう予定されていない。ではなぜ保釈されないかと言うと、理由はただ1つ。保釈してしまうと証拠隠滅をしたり、あるいは口裏合わせを関係者とするのではないかという見方をされていたので、保釈が認められなかったのですね。
ところが今回の日産自動車の事件を見てみると、事実上の司法取引をして、本来なら刑事責任を問われないといけない日産サイドの人間を、責任は問わないという条件のもとに全面的な協力を受けている。証拠や供述についても、ほとんどが日産自動車サイドから東京地検特捜部に提供されているのですよ。つまり、ゴーン被告サイドから強制捜査で押収されて、決め手になるような証拠はどこにもないのです。

飯田)もうすでに。

須田)そうすると証拠隠滅のしようがないですよね。自分の手の届かないところにあるわけだから。残っているのは口裏合わせですが、でもそこで誰と口裏合わせをするのですか? 唯一考えられるのはケリー被告ですが、そこについても一定程度は認めるということになっている。本来やらなければいけないのは日産自動車サイドですが、そこはゴーン被告にとって敵なのですよ。

飯田)そうですよね。司法取引をしているわけだから。

ゴーン被告保釈から見える日本の“慣習”にある取り調べの問題点

日産自動車前会長カルロス・ゴーン容疑者の勾留理由開示手続きが行われる東京地裁の法廷=2019年1月8日午前(代表撮影) 写真提供:共同通信社

日本の“慣習”にある取り調べの問題点

須田)ですから、もう証拠隠滅も口裏合わせのリスクもないと考えていい。それでもなぜ保釈が認められなかったのかと言えば、かねてからの慣習と言いましょうか。東京地検特捜部、あるいは捜査当局の取り調べに否認を続けると、ペナルティのような形でずっと保釈が認められず拘置所にとどめ置かれるということが、長らく行われて来た。それで何が起こるかと言うと、「この環境に耐えられないから応じよう」ということになる。検察が言っている通りのストーリーで供述調書にサインしてしまおうと、そういう誘惑に駆られてしまうのです。すると自白の強要が進んで来て、結果的にはそれが冤罪の温床になるのですよ。
東京地検特捜部は、「捜査はまだ継続している」という言い方をしていますよね。海外のゴーン被告の知人だとか企業に対して資金提供が行われていて、更なる会社法違反に問われるかもしれない、つまり再々逮捕の可能性がゼロではなかった。これは相当な無理筋だと思います。完全な有罪に持ち込むために、そこも視野に入れていたのではないかな。流石に裁判所はいい加減にしろ、ということだと思いますけれどね。

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