“新・悪の枢軸”たる中国・ロシア・イラン~オマーン湾合同演習の目的

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月27日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。中国とロシア、イランの3カ国による中東のオマーン湾でのについて解説した。

“新・悪の枢軸”たる中国・ロシア・イラン~オマーン湾合同演習の目的

イラン・ロシア・中国合同海軍訓練中にオマーン湾のチャバハールに係留中にロシア海軍ノイシュトラシミー級フリゲート艦「ヤロスラフ・ムドリ」に敬礼するイランの船員(イラン陸軍事務所が2019年12月27日に配布した資料写真)AFP PHOTO / HO / Iranian Army office<AFP=時事> 写真提供:時事通信社

反米で一致する3か国による政治的な対抗措置

中国国防相のゴウ・ケン報道官は26日の記者会見で中国、ロシアの海軍がきょう27日から30日までイラン近海のオマーン湾で合同演習を行うと発表した。友好関係にある3ヵ国が軍事力を誇示してイランを圧迫するアメリカを牽制する狙いがあるとみられている。

飯田)イランメディアによるとこの3ヵ国による軍事演習は初めてだということです。

宮家)軍事的に言えばあまり意味がないとは思いますが、政治的な意味は大きいです。中国、ロシア、イランと聞くとブッシュ政権のころの、悪の枢軸という言葉を思い出しました。当時はイランとイラクと北朝鮮がそれでしたね。それがいまや、中国、ロシア、イランですよ。これはいつものアメリカなら「新・悪の枢軸」というところですよね。しかしトランプ大統領は何も言いません。これに北朝鮮を入れたら悪の枢軸4者です。普通のアメリカならそう言ってもおかしくないのに、時代は変わったという感じがします。もう1つ大事なことは中国、ロシア、イランがたまたま一緒になっているわけではないことです。彼らは彼らで目的を持っています。冷戦後の世界情勢はが間違っていて、それを直すためなら武力を使ってもいいという発想です。これがヨーロッパではロシアによるクリミア、ウクライナへのちょっかいです。中東ではイランによるイラク、パレスチナ、レバノン、シリア、イエメンへのいろいろなちょっかいですよね。中国は、もちろん国内の問題もありますが、南シナ海、東シナ海、そしてインド洋までもちょっかいを出しています。こうみると彼らは現状を変えようとしていますね。日本は現状が一番いいのですが、それを変えようとする人たち、中国、ロシアとイランが揃いも揃ってというのは、決して偶然ではありません。やはり1つの方向、反米で一致していますね。それはそれでいいですが、中国、ロシア、イランの海軍は一体何をするのでしょうか。「三役揃い踏み」みたいな感じでお披露目をやるのはいいですが具体的にオペレーションまで一緒にやるということでは必ずしもないでしょう。恐らく、アメリカそれ以外の国も含めた有志連合など、ペルシャ湾内外の動きがありますね、それに対する対抗措置なのでしょう。極めて政治的な動きです。

飯田)この中国、ロシア、イランの3ヵ国は対外的には現状変更しようとしている一方で国内的みると自分たちの国での人権の抑圧といいますか、民主的な制度がどこまで整っているかの疑問があります。

宮家)ロシアも人権侵害というより、突然人が消えていく国ですから。イランは何が起きているかわかりませんが、宗教指導者の独裁であることは間違いありません。不十分ですが選挙があるだけマシですが。中国にいたっては選挙もなく人権もない、特に少数民族にあのような弾圧を行っている、ということになると、やはり三国とも同類ですね。

演習がオマーン湾であることが日本へのメッセージにもなり得る

“新・悪の枢軸”たる中国・ロシア・イラン~オマーン湾合同演習の目的

イラン学生通信(ISNA)が13日、AFP通信に提供した、オマーン湾で黒煙を上げるタンカーの画像=2019年6月13日 写真提供:時事通信

飯田)価値観以外の部分で日本は連携をしていくしかないと。

宮家)どの国も日本にとっては大事な国です。ですが、日本が求めている現状維持と彼らが考える現状変更は明らかにぶつかります。その意味で今回中国、ロシア、イランがオマーン湾で合同演習するということは、まさに日本の東京からペルシャ湾までのシーレーンに対して三国が「ただじゃおかない」という1つのメッセージにもなり得るので、我々としては決して黙ってはいられません。これは明らかに航行の自由、物の自由な流れ、政治的な圧力のない流れに反対する動きだと考えなければなりません。

飯田)このオマーン湾は地理的にはどの辺ですか。

宮家)ペルシャ湾の入り口がホルムズ海峡ですよね。そのホルムズが南にばーっと広がってインド洋に向かっていく海域がオマーン湾です。

飯田)ちょうど入口ですね。

宮家)ホルムズ海峡への入り口です。それは日本にとって大事です。おそらく自衛隊の船が行きますよね。あの船が活動する地域と重なると思います。

飯田)ホルムズ海峡の中にはいかないと報道されているので入口、まさにオマーン湾ということですね。

宮家)中国、ロシア、イランに、日本は有志連合には参加はしませんが独自には行くというメッセージですよね。ある意味では日本にとって政治的勝負なのでしょう。

飯田)これから年を明けてからこの辺が国際政治のなかでも注目されると。

宮家)中東地域ですから私の関心は特に高いのですが、日本では、紛争があったり、石油が止まらないとあまり中東には関心がありませんが、今こそあの地域を関心を持って見ていただけるとありがたいです。

飯田)石油が止まったときだけ大騒ぎするのではなく、こういう流れから。

宮家)こういう流れのなかで、今中東で何が起きているのかを考えていただけると、いいと思います。

飯田)大国同士のぶつかり合いが中東で起こるかもしれないということですか。

宮家)先ほども言いましたが、軍事的にどれだけ意味があるのかは疑問です。アメリカの第5艦隊と第7艦隊は圧倒的に強いですから、そこはあまり心配はしていません。

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