ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月3日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。イラク・アメリカ大使館襲撃事件でのアメリカの動きについて解説した。
イラクのアメリカ大使館襲撃、沈静化するもアメリカは部隊派遣へ
イランが支援する武装組織のイラクにある拠点をアメリカ軍が攻撃したことに対し、イラクの首都バグダッドでアメリカ大使館が襲撃された事件。エスパー国防長官は750人規模の部隊を中東地域へ派遣することを表明した。襲撃はイラン側の指示によってか、1日に沈静化している。
飯田)トランプ大統領は年末にツイートしていましたが、一連のことを含め亡くなった人が出ているのは「すべてイランの責任だ」と言っていて、「これは警告ではなく脅しだ」とも言っています。
宮家)それもまた酷い言い方ですけれどね。この問題には2つポイントがあります。1つは単にイラクのシーア派による米大使館襲撃ではなくて、過去数年のイランとアメリカの中東全域における代理戦争の一側面でしかないのですよ。最近はアメリカ軍が、イラク国内もしくはシリアの、イランに近い民兵の基地を攻撃しましたよね。これでイラン系の人々からすると一線を越えたのでしょう。やられたらやり返しますが、直接やるわけにはいかないからこうやって大使館を占拠する。大使館占拠はイラン革命のときにもやっているのでいかにもイラン的だなと思います。もちろん裏にイランがいることは認めないとは思いますが、実際にはイラクのシーア派の民兵はかなりの部分はイランの支援を受けているはずです。イラクの首相も今は辞めるか否かというところで大騒ぎなのですが、これもどちらかというとイランに近い人だと言われています。その意味ではイランの影響力がイラクでは圧倒的に強いということです。もちろんバーレーンは人口の過半数がシーア派だし、レバノンでもパレスチナでもイエメンでも、どこでもイランの影響力は拡大しているわけです。全体を見れば米イラン間の1つの作用に対する反作用だと見ていいと思います。
2つ目に大事なことは、要するに泥縄だということです。トランプさんは中東から手を引くということで、米軍を撤退をさせています。その中で今回750人をクウェートへ送るらしいのですが、一体何をやっているのでしょう。あんな風に撤退だと言ったら足元を見られるに決まっているのだから、そういう形で敵は行動を強める、こちらも被害が出たら軍事攻撃をやらざるを得なくなります。これまでの動きはいったい何だったのでしょう。もっとうまいやり方があったのではないかと言いたくなる気持ちもあります。
飯田)トランプさんもツイッターでいろいろと書いていましたが、今回の襲撃は「ベンガジとは違うのだ」と。2012年にベンガジの領事館襲撃があって、あれはかなり人も亡くなりました。それをこの大統領選の時期に思い出させるというのはあまりいいことではないと思います。
中東からのアメリカ完全撤退はない
宮家)だけど、現在のイラクにあるアメリカ大使館にはほとんどアメリカ人はいないはずですよ。世界でも有数の大きさで、一時はありとあらゆる種類の米国人がいたのですが、もう状況が悪くなったからいないはずです。2004年以降イラクを壊してしまったからああいう形にならざるを得ないのですが、あまりに泥縄だなと思います。トランプさんの気持ちもわかりますが、もっと他のやり方があったのではないかと思います。
飯田)今後の流れとしては、アメリカのプレゼンスは中東地域から下がっていくことになるのでしょうか?
宮家)終わりのない戦争はやめて、アフガニスタンやシリアから出ていきたい気持ちもわかります。ただ、アメリカが中東から完全に撤退するのは全く別の問題ですよ。湾岸地域には巨大な第五艦隊がいますし、カタールには巨大な空軍基地があります。そこの地域に今までいた米軍の部隊が急にいなくなることはないと思います。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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