ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（1月31日放送）に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための対策本部の初会合が開かれたニュースについて解説した。

新型コロナウイルス感染症対策本部で発言する安倍晋三首相（中央）＝2020年1月30日午後、国会内　写真提供：産経新聞社

政府は中国武漢市に滞在歴のあるすべての入国者を追跡調査へ

政府は30日、新型コロナウイルスによる肺炎の拡大を防ぐため、安倍総理を本部長とする対策本部の初会合を国会内で開いた。発生地の中国武漢市に滞在歴のあるすべての入国者を対象に、日本国内での連絡先を確認し、健康状態などを追跡調査する方針を決定している。なお、現地に残る日本人の早期帰国に向け、第3便となるチャーター機は31日午前に羽田空港に戻る。

飯田）総理は症状の有無に関係なく、ウイルス検査を含む健康管理を徹底すると表明しています。チャーター便で帰って来られた方のなかには、無症状だけれど感染していたという方が2人いたということです。

宮家）帰って来られた方々は、これから2週間は本当に辛い思いをされると思います。もしみなさんの周りにそういう方がいらしたら、優しくしてあげてほしいと思います。うちの女房や娘も、18年前のSARSのとき北京から東京に帰って来て、やはりいろいろと嫌な思いをしました。みんなパニックだし、心配だし、誰も悪気があるわけではないのですが…。できるだけ冷静に考えながら接してほしいと思います。

【新型肺炎　武漢滞在の邦人帰国へ】中国・武漢に滞在していた邦人が帰国後に検査を行う国立国際医療研究センター前には、多くの報道陣が集まった＝2020年1月29日午前、東京都新宿区　写真提供：産経新聞社

各国で異なる帰国者への措置

宮家）それからもう1つ、いろいろ比較して思うのは、各国の措置の違いです。日本は帰って来た人をホテルに行かせるなど、いろいろな形でケアしていますが、オーストラリアなどは有無を言わさず1200キロ離れた離島に連れて行って隔離するのですから。

飯田）2週間はいなさいと。

宮家）日本の対応は比較的、優しいのではないかと思います。周りの国はもっと厳しい感じですよね。

飯田）軍の施設に2週間いなさい、という国もあります。アメリカでは予防拘束的に拘束することは、人権的に、或いは憲法との絡みでどうなのかと議論になっているようです。

宮家）これはどこの国も同じだと思うけれども、残りの大多数の人たちを守るのか、実際に感染された方、または、その可能性のある方を守るのか。もちろん両方守らなくてはいけないのだけれども、どちらに重きを置くかで、少数の人たちに対する扱いが変わるということですよね。

飯田）30日に安倍総理も答弁をしていましたけれども、検査を拒否されたお2人もいまは検査を受けたいと言っているということですが、法律上それを強制するものは日本にないと。法律にのっとるというのが法治国家ですものね。

宮家）もちろんそうです。そういう形で日本は戦後、国をつくって来たわけですから、そこは難しいところです。しかし、幸いなことにいまは検査を受けてくださっているわけですから、やはり粘り強く説明するということですね。くたくたに疲れて飛行機にやっと乗れたという状況では、当然気が立っていたり、ナーバスになっていますので、仕方がないと言わざるを得ないと思いますけれどね。

飯田）この2週間で落ち着いて、周りも冷静にそれを迎える。

【新型肺炎】羽田空港から出る救急車＝2020年1月29日午前、東京・羽田空港　写真提供：産経新聞社

中国政府の「封鎖宣言」は大失敗

宮家）ただ問題は、それで済まない可能性があるのです。その方々は何とか2週間の間にうまく行ったとしても、その他に中国からどんどん感染者が帰って来る可能性がある。それを考えると気が遠くなりますよね。

飯田）日本人でチャーター機で戻って来た人は、こうして自由のない生活を強いられているのに、なぜ中国から来た人たちは、ということが…。

宮家）しかも武漢だけではなくて、中国全土で広がっている可能性すらあるのです。

飯田）30日の報道ですでに、中国の31の省や直轄市など、すべてから出たという情報がありました。

宮家）習近平さんの武漢「封鎖宣言」は大失敗だとアメリカの友達が言っていました。中国人は「そこに居ろ」と言えば、政府を信用していないから、必ず「そこから出る」ということです。日本人は「そこにいろ」と言われたらそこにいるけれど、中国人は出てしまう。封鎖宣言などを出したから、逆に何百万人も出てしまったのだと。

飯田）500万人が封鎖前に出て行ったと言われています。

宮家）短期間でね。十分な準備もせずに出て行っただろうから、拡散していると考えるべきだと友達は言うのです。だからこの問題は、まだ始まったばかりだと考えなくてはいけないと思います。