迅速なチャーター機派遣の一方で遅かった指定感染症決定~新型肺炎への日本政府の対応

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(1月29日放送)に作家・ジャーナリストの河合雅司が出演。武漢からの日本人帰国について解説した。

迅速なチャーター機派遣の一方で遅かった指定感染症決定~新型肺炎への日本政府の対応

【新型肺炎 武漢滞在の邦人帰国へ】中国・武漢に滞在していた邦人が帰国後に検査を行う国立国際医療研究センター前には、多くの報道陣が集まった=2020年1月29日午前、東京都新宿区 写真提供:産経新聞社

新型肺炎~武漢から206人の日本人が帰国

206人の日本人を乗せたチャーター機の第1便が29日午前、羽田空港に到着した。そのうち5人が体調不良を訴え、特別な施設を持つ病院に搬送されている。政府は残りの日本人の早期帰国を実現するため、29日午後8時にも第2便のチャーター機を現地に派遣する方針。

森田耕次解説委員)湖北省武漢市に滞在していた日本人206人を乗せた日本政府の全日空チャーター機が29日午前、武漢から羽田空港に到着しました。東京都によりますと、そのうち4人に発熱や咳の症状があり、大田区の荏原病院で受け入れ、更に50代の女性1人が文京区の都立駒込病院に受け入れとなって、帰国した人の受診は合わせて5人ということになりました。中国本土の感染者は5974人に上り、中国本土の死者は132人になっています。帰国後に病院で受け入れた日本人5人ですが、東京都によると5人の容体はいずれも安定しているということです。ただ、5人のうち40代の男性と50代の男性は、都内の病院で肺炎と診断されました。新型コロナウイルスが原因かどうかは検査結果を待っている状況です。29日に帰国した206人は全員が日本国籍で、武漢の日本商工会役員の男性2人は羽田空港内で取材に応じ、次のように話しています。

 

役員男性A)急速に事態が変化するなかで現地に残っておりまして、非常に不安に思っていたところ、迅速にこういった形でチャーター機で戻していただくことができて、大変ほっとしています。

役員男性B)同じくほっとしていまして、日本政府の方々に感謝したいと思っています。通常のウイルス対策をしていれば大丈夫だという報道もあったので、とにかく外出しないようにと。マスクと手洗いを徹底すれば大丈夫だというのを信じてやっておりました。

 

森田)「帰国できてほっとした」と、まさに率直な声だと思います。29日に帰国した便には医師1人、看護師2人を含む医療チームが同乗しており、機内で問診票を配って全員の体温を測定し、発熱がないかどうかをチェックしました。症状のない人も東京・新宿区の国立国際医療研究センターにバスで送り、全員を検査します。陰性の場合でも2週間は外出を極力控えるよう強く求めます。全日空によると、29日に武漢から到着したチャーター機は内部の消毒作業を行ったということです。チャーター機での帰国希望者は現時点で残り約440人いるということで、政府は第2便を29日午後8時ごろ、第3便を30日に日本から派遣する方向で調整中です。第3便までに全員が帰国できるよう、第1便よりも大きな飛行機の利用も検討しているということです。ただ、菅官房長官は記者会見で次のように述べています。

 

菅官房長官)現在、中国当局を含む各方面と調整を進めているところですが、本日中の派遣に向けて最終調整中です。現時点では派遣の具体的な時間、回数について申し上げられませんが、帰国をご希望されていらっしゃる邦人については、すべて帰国できるように取り組んでいるところです。

 

森田)帰国された206人のうち5人が受診をして、2人は肺炎という診断が出たということですね。

河合)季節的にはインフルエンザも流行している時期で、中国でもインフルエンザが流行しています。検査結果を見ないと新型肺炎かどうかわからないということで、あまり過剰に反応しない方がいいと思います。

迅速なチャーター機派遣の一方で遅かった指定感染症決定~新型肺炎への日本政府の対応

【新型肺炎 武漢滞在の邦人帰国へ】中国・武漢に滞在する邦人を帰国させるため、出発の準備を行うチャーター機=2020年1月28日午後、羽田空港 写真提供:産経新聞社

中国国内で感染広がる~日本人男性が重篤な状態

森田)一方、中国の武漢で重い肺炎を発症し入院している60代の日本人男性ですが、28日の時点で新型コロナウイルス陽性の疑いが強いと、中国の病院側から連絡があったということです。菅官房長官が記者会見で明らかにしていますが、最終的な判定結果は未確定ということなのですね。

河合)他の既存症との兼ね合いで、より重篤になってしまうということも報告されています。何が作用しているのか、詳しい情報を待たなければ何とも言えないところがありますね。

森田)中国本土は感染者が6000人近く、死者も130人を超えているという状況で、日に日に拡大しています。

河合)急速に拡大したのか、(中国政府が)急速に情報を出したのか、この辺りがわかりません。中国の場合、かつてから(都合の悪い情報を出したがらないという)そういう傾向にあったわけで、今回も同じようなことだったのではないかと思っているところもあります。今回のチャーター機の派遣ですが、感染症をベースにチャーター機を出したのは初めてということで、そういう意味では日本政府は極めて迅速に動いたと評価しています。

森田)政府は30日、安倍総理を本部長として、すべての閣僚メンバーで構成する対策本部の設置を閣議決定する予定になっていますね。

河合)いずれにしても、感染が人から人へうつって行く程度、割合がよくわからず、罹患した人と接触したらみんながうつるわけでもないので、あまり過剰に反応すると社会がパニックになってしまいます。冷静に対応する必要があると思います。

迅速なチャーター機派遣の一方で遅かった指定感染症決定~新型肺炎への日本政府の対応

【新型肺炎】羽田空港から出る救急車=2020年1月29日午前、東京・羽田空港 写真提供:産経新聞社

国内でも中国人ツアー客を乗せたバス運転手が感染~東京、山梨、奈良などに立ち寄る

森田)28日には奈良県で、日本人初の新型コロナウイルス感染者が確認されました。中国人のバスツアー客を乗せていた運転手、60代のバス会社の社員ということで、この男性との接触者が104人認定されています。家族や医療従事者などの濃厚接触者が18人含まれるということで、加藤厚生労働大臣も「新たなステージに来た」と参議院予算委員会で述べています。

河合)予断を許さないし、危機感を持って対応しなければいけないと思います。こちらもどれだけ広がって行くのか、運転手さんだけで終わるのかもわからないですよね。

森田)この運転手さんは武漢から来た観光客を乗せて、東京、山梨、奈良などに立ち寄ったということで、他の社員には同じような症状は出ていないということですが、こちらも拡大しないかどうか気になります。

河合)同じバスに乗っていたからということなのか、患者だった人と運転手の間で会話などの濃厚接触があったのかはわかりません。みんなにうつるのであれば乗っていた人全員が新型肺炎になっていなければならないわけですが、そうではないですよね。

森田)政府は28日、感染症法上の「指定感染症」に新型コロナウイルスを決定したということですが、強制入院の措置も取れるようになるそうです。

河合)チャーター機の迅速さの割には、指定感染症にするのが遅かったと思います。

森田)こちらは施行日が2月7日ということですから、周知期間も含めると、そこまでは強制入院の措置も取れないということになります。

河合)実際に発症すれば強制しなくても医療機関にかかるでしょうから、大きな影響はないと思います。

番組情報

ザ・フォーカス

火曜〜木曜 18:00-21:20

番組HP

錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。

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