新型コロナウイルスの蔓延によって国内で高まる“習近平政権への不満”

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月29日放送)に慶応義塾大学法学部教授・国際政治学者の細谷雄一が出演。新型コロナウイルスの最新情報について解説した。

【新型肺炎 武漢滞在の邦人帰国へ】中国・武漢に滞在する邦人を帰国させるため、出発の準備を行うチャーター機=2020年1月28日午後、羽田空港 写真提供:産経新聞社

新型肺炎、日本人で初の感染を確認

中国武漢を中心に拡大している新型コロナウイルスによる肺炎。28日、武漢への渡航歴がない奈良県に住む日本人男性がウイルスに感染していることが確認された。日本人の感染が確認されたのは初めてで、厚生労働省は国内で人から人に感染した可能性が高いとみている。

飯田)一方で外務省によると、新型コロナウイルスの肺炎の感染が拡大した武漢から日本人を乗せたチャーター機ですが、日本時間の29日午前6時前に、武漢の空港を出発したということです。湖北省に在留する206人の日本人が搭乗し、羽田空港への到着は29日午前9時ごろの予定です。年末から報道が出始めましたが、感染が拡大していますね。

細谷)実際には、発表されている数字の10倍以上の人が感染しているのではないかと言われていますが、グローバリゼーションが広がって、アジアでもグローバルサプライチェーンのような分業体制が広がっています。さらに中国の観光客が日本に来る。これらの人の動きをコントロールするのは極めて難しいです。衛生状態という面で、日本は例外的に管理が厳しい国ですが、そうではない国がたくさんあります。そのなかで感染を止めるのは難しいというのが現状だと思います。

「春節」の大型連休が始まり、帰省客らでにぎわう中国・北京駅。新型コロナウイルスによる肺炎の発症者が各地に広がる中で、大部分の人がマスクを着用していた=2020年1月24日 写真提供:産経新聞社

2003年のSARSの教訓が生かされていない

飯田)数字そのものが信頼できないとなると、一体何を信じればいいのかとなりますよね。

細谷)本来であればもっと早く対応すべきでした。ところが中国は国家が報道を管理していますので、この手の問題が起こると、常に対応が遅くなります。2003年のSARSであれだけ大きな問題になりながら、20年近くたって教訓を得ていません。武漢を中心に、国民の不満が政府に対して大きくなっています。一方では米中貿易摩擦で景気が悪化していて、習近平政権は非常に対応が難しいと思います。

2020年1月20日、中国湖北省武漢で肺炎の発生の原因として特定されたコロナウイルスの発生源とみられ閉鎖された華南海鮮卸売市場近くのバス停留所で待機しているマスク着用の中国人居住者 EPA=時事 写真提供:時事通信社

犠牲者が多くなれば高まる政権への不満

飯田)この不満の高まりは、1949年から続く共産党の一党独裁を揺るがすことになりますか?

細谷)デジタル権威主義と言われていますが、徹底して政府が国民を監視している社会ですので、すぐに政権基盤が緩むということはないと思います。しかし選挙がなく、政権交代がない中国では、国民の不満の高まりに対して、政府は常に敏感に対応しなければなりません。今回の問題は、特に政府のコントロールが難しい事案です。米中貿易摩擦なら、中国政府がアメリカに対して譲歩することで合意を得ることができますが、このような感染の場合は政府の対応にも限界があり、しかも初動が遅れました。そういう意味では中長期的に、中国国民の現政権に対する不満があります。隠蔽して正確な情報を伝えなかったことで被害が広がり、犠牲者や死者が出るということになれば、政権に対する不満の高まりにつながるかもしれませんね。

飯田)デジタル権威主義で、データを何でも吸い上げるという社会構造は「便利でいい」と言う人が日本にもいますが、それが万能ではないということが今回、見えた気がします。

細谷)そうですね。SARSのころと比べると、高速鉄道や道路のインフラが整備されて、国内での人の移動が増えています。さらに一帯一路をはじめとして、国際的な周辺国への人の移動も多い。2003年のSARSのころより、政府は圧倒的に人の管理が難しい状況です。デジタル権威主義で監視していながら、森をなぎ倒したりする台風のような巨大な不満に対して、政府はそれを監視したところでコントロールできません。

飯田)そういううねりも、台風の目のようなものになる可能性を秘めていると。

細谷)いくつかのなかの大きな1つになるでしょうね。

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