アメリカ大統領選~民主党がトランプ氏に勝てない大きな理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月7日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。無罪となったトランプ大統領の弾劾裁判について解説した。飯田浩司が休みのため新行市佳が進行を務めた。

米ワシントンで、弾劾訴追について述べるペロシ下院議長=2019年12月5日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

トランプ大統領の弾劾裁判で無罪に、共和党からは1人造反

アメリカのトランプ大統領のウクライナ疑惑をめぐる弾劾裁判で上院は5日、「権力乱用」と「議会妨害」のいずれについても無罪評決を下した。ただ、共和党からは72歳の重鎮、ロムニー氏が唯一造反し、有罪としている。弾劾裁判で大統領と同じ党に所属する上院議員が有罪と判断したのは初めてのこと。

新行)トランプ大統領は無罪となりました。

ミット・ロムニー-Wikipediaより

再選がある議員はトランプ大統領とけんかはできない

宮家)これは想定内ですよね。要するに、ロムニーさんが気骨を示したということです。おそらくこの人は、これで引退なのでしょうね。一般論としては、引退するからこそ、こんなことができる。大統領がどんなに変わっている人でも、次の選挙に自分の再選がかかっている議員にとっては、大統領にけんかを売るかどうかということは、とても大きなことなのです。そして普通、再選がある場合でも、大統領選と同じで、予備選挙をやります。予備選挙をやって出馬するのならば、もしトランプさんと喧嘩をしたら、トランプさんの支持者が押しかけて来て反対候補を担ぎ、下手したら予備選挙で負けてしまう。そうなれば再選はできません。だからトランプさんにけんかを売れないのです。過去には落選させられてしまった人たちもいます。ロムニーさんのように、元大統領候補でそれなりの見識があり、一貫してトランプさんのことを批判していて、そして引退間際の人だからこそできるのです。他の共和党の人たちには簡単にはできません。だからいまトランプさんがとても強いということです。

ワシントンで、弾劾裁判の審理入りを前に記者団の取材に応じる検察官役のシフ米下院情報特別委員長(アメリカ・ワシントン)=2020年1月21日 写真提供:時事通信

トランプ大統領の支持層が反対する勢力を追い詰めている

宮家)CNNを観ていて面白かったのは、共和党の上院議員でロムニーさんのような人が造反したのと同時に、民主党の上院議員でも、有罪に投票したのだけれど、本当は「そうではない」と考える人もいるということです。振り返ってみたら、もっと議員個人が自分の良心に基づき、党議拘束なんてしないで自由に投票したら、もっといい議論ができたのではないでしょうか。残念ながら今回はトランプさんが圧倒的に強くて、自分を批判をする人をほとんど封じ込めてしまったわけです。だから、議論自体は非常につまらない。そもそも証人がいないのですから。証人がいなくて、どうやって裁判をやるのかと思うのですけれども、全部封じ込めてしまった。元安全保障担当補佐官のボルトンさんが言いたいことを言って、本を書こうとしていて、新しい情報が出るかもしれないとなったのに、トランプさんはそれも全部封じてしまったので、何も面白くない弾劾裁判になってしまった。逆に言うと、いかにトランプさんの支持層が岩盤で、統率が取れているかがわかりましたね。ここにはトランプさんに反対する勢力を追い詰めて行く共和党の姿が裏で見えます。決して健全だとは思わないけれども、それがアメリカのいまの実態です。

トランプ米大統領の一般教書演説を聞き、立ち上がって拍手をするペンス副大統領(後列左)と、着席したままのペロシ下院議長(同右)=2019年2月5日、ワシントン(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

格調の高いアメリカの理想、精神を大統領が語るのが一般教書演説

新行)先日は一般教書演説もありましたけれども、どのようにご覧になりましたか?

宮家)一般教書演説はアメリカで1年に1回、大統領と上院・下院の議長、上院は副大統領ですけれど、最高裁の判事も含めて三権の長が連邦議会の1つの部屋に集まり、大統領から格調の高いアメリカの理想や精神をもう1度確認してもらって、みんなで「アメリカ人でよかったな」ということを一瞬でも確認する場だと、これまでは思っていました。

新行)はい。

3日、米アイオワ州デモインの劇場で始まった民主党の党員集会(共同)=2020年2月3日 写真提供:共同通信社

トランプ大統領の一般教書演説は選挙演説

宮家)ところがトランプさんの一般教書演説は、私からすれば伝統的な一般教書演説ではない。彼の演説は、最初から最後まで選挙演説です。「俺はこんなことをやった、こんなに数字が増えた、中国に物を買わせた」などと言っているのです。アメリカの理想はどこに行ったのでしょうか? アフガニスタンから兵士が帰って来た、それはそうなのだけれど、それ以外にも国民はもっと聞きたいことがあるのです。しかし彼にはそれがまったくない。どの大統領でも、選挙の年の演説は選挙目当てであるのは事実ですが、やはりアメリカの民主主義や自由、リーダーシップなどの理想をちりばめてほしかったのだけれど、残念ながらそれはなかった。しかし、これが彼のスタイルで、これで彼は勝って来たのです。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

大統領選挙~民主党は勝てない

新行)今後の大統領選挙はどうなるのでしょう?

宮家)それは簡単です。日本には自由民主党はいくつありますか? 1つですね。では、アメリカには共和党がいくつありますか?

新行)1つですか?

宮家)違います、50個です。民主党も50個です。各州に民主党と共和党が1つずつあると思ってください。名前も少し違い、日本の新聞は民主党のアイオワ支部と言っていますが、実は支部ではない。独立した“アイオワの民主党”なのです。4年に1回の大統領選挙は、私に言わせれば一種のマジンガーZの合体競争みたいな感じで、50の部品を合体させるかどうかの競争なのです。合体して動けば勝ち、逆にそれで動かなければ負けなのです。どうやって50の州の共和党と民主党を団結させて、1人の候補の下でしっかりと動くかどうか、これを競う共和党と民主党の戦いです。いまの状況だと、トランプさんの共和党は完全に合体しています。しかし、民主党はまだ4人も候補者がいてわからない。しかも、サンダースさんでも誰でも、本当に50州をまとめきれるのか。今のままでは民主党は勝てませんよ。トランプさんは勝つ必要がないのです、相手が負ければいいのだから。

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