ニッポン放送「ザ・フォーカス」(1月29日放送)に作家・ジャーナリストの河合雅司が出演。トランプ大統領が発表した中東和平案について解説した。
パレスチナ和平案をアメリカが提案も、パレスチナは拒否
アメリカのトランプ大統領は、イスラエルとパレスチナの新たな中東和平案を発表した。パレスチナ側に非武装を条件として独立国家の建設を認める一方、パレスチナ自治区にあるユダヤ人入植地でもイスラエルの主権を認めるなど、イスラエル寄りの内容となっている。
森田耕次解説委員)トランプ政権は支持基盤でもあるキリスト教福音派にアピールするため、これまでもイスラエル寄りの政策を打ち出しており、2017年12月にはエルサレムをイスラエルの首都と認定すると。2018年5月には、実際にイスラエルにあるアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移しています。トランプ大統領は、アメリカを訪問していたイスラエルのネタニヤフ首相と会談を行った冒頭で、27日時点でパレスチナとイスラエルの中東和平案を、日本時間の29日午前2時に発表すると表明していました。中東和平は2014年以降、暗礁に乗り上げていますが、トランプ大統領は就任以来、仲介に意欲を示していました。示された中東和平案では、パレスチナ国家を樹立し、イスラエルとの共生を目指す2国家共存を守るとしている一方で、占領地であるヨルダン川西岸に建設されたユダヤ人入植地のイスラエル主権を認めると。帰属を争う聖地エルサレムは「分断せず、イスラエルの首都とする」と表明しました。イスラエル寄りの内容ということで、パレスチナにとっては事実上受け入れ不可能な提案となり、パレスチナ自治政府のアッバス議長は和平案を「陰謀だ」と非難し、拒否する姿勢を示しています。
河合)ホワイトハウスで発表されましたが、会見場にはイスラエルのネタニヤフ首相だけが同席していたということに象徴されますよね。明らかに国内選挙向けです。トランプ大統領は弾劾裁判の最中なので、こちらにも有利になるよう福音派の人たちに向けたメッセージということでしょう。端から和平なんて考えていない案を出したということですよ。
親米と反米で対立深まる中東
森田)パレスチナはそもそも東エルサレムを首都として、西岸とガザを領土とする独立国家樹立が悲願だということですから、これが実現不可能になってしまいます。一方でサウジアラビアやエジプトはパレスチナ支援を強調し、アメリカの努力を評価しています。逆に、アメリカやイスラエルと敵対するイランは声明を出して、「パレスチナ人とイスラム諸国に対する世紀の裏切りだ。この和平案は失敗に終わるだろう」と非難しています。中東はますます親米のサウジやエジプト、反米のイランが複雑になって来ますね。
河合)既に火種がたくさんあるなかで、更に新たな火種を投入した形になっています。この問題が1つあるわけではなく、これまでの問題がより複雑になって、より中東諸国とアメリカとの関係がおかしくなって来る。日本も石油の輸入問題がありますから、不安定さが増して来るのだろうと思います。
森田)アメリカとイランは、ソレイマニ司令官の暗殺をめぐってごたごたしていたのが収まりかけたかと思いましたが、この中東和平案でますます悪化する可能性が高まって来た。
河合)それだけ大統領選に自信がないのでしょうね。自分の支持基盤固めのために言わなくてもいいようなことを言ったり、新しい政策を打ち出したりということの繰り返しなので。世界中が振り回されてしまっていますよね。
番組情報
錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。