イランとアメリカの衝突は互いの国民に対する“プロレス的”なショーだったか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月10日放送)に地政学戦略学者の奥山真司が出演。トランプ大統領の表明から、全面衝突が回避されたアメリカとイランの関係について解説した。

イランとアメリカの衝突は互いの国民に対する“プロレス的”なショーだったか

【日イラン首脳会談】イランのロウハニ大統領(左)を迎える安倍晋三首相=2019年12月20日午後、首相官邸 写真提供:産経新聞社

安倍総理が中東歴訪実施へ~アメリカとイランが全面衝突回避と判断

安倍総理は一時見送りを検討した11日からの中東歴訪について、予定通り実施する方針を固めたと共同通信が報じた。アメリカのトランプ大統領がイランに軍事的な報復をしないと表明したことを受け、ひとまず全面衝突は回避されたと判断したようだ。

飯田)サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、そしてオマーンの歴訪です。アメリカとイランの、ソレイマニ氏という革命防衛隊の司令官の殺害から始まった一連の緊張ですが。

奥山)アメリカの報道を見ていると、「山本五十六を殺害したとき以来の、実際の相手の主権国家のなかの軍人を直接殺した意義深いものだ」という意見が多いのですよ。これは問題ではないかと思います。ここで日本人の名前を出すのかと。

イランとアメリカの衝突は互いの国民に対する“プロレス的”なショーだったか

米軍、中東に3千人増派へ イランのソレイマニ司令官殺害について話すトランプ米大統領=2020年1月3日、米南部フロリダ州(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

アメリカとイランの間で行われた“手打ち”

奥山)今回は、イランとアメリカで手打ちが行われたということです。彼らはお互い軍同士で、「お互いこうしよう」ということを、上の方ではある程度話がついているなかで行われたのではないかと思います。双方が破壊行為をやることによって、国民の情熱を抑えようと、国内に向けたものがあったのでしょう。

イランとアメリカの衝突は互いの国民に対する“プロレス的”なショーだったか

イランの最高指導者ハメネイ師(右)と会談する安倍晋三首相=2019年6月13日、イラン・テヘラン[ハメネイ師のツイッターより] 写真提供:時事通信

今後はイランによる嫌がらせ的なテロ行為が発生する

奥山)イラン側はアメリカと正面衝突はしたくない。イランは弱い方の立場で、アメリカはジャイアンみたいなものです。そのため何をするかというと、ジワジワと周りのところから攻めて行く。もし私がイランだったら、そういうやり方をします。例えば、石油関連施設で働いているアメリカ人を誘拐、あるいは殺害するなど。正面軍事突破という形でのイランからの報復ではなく、そういう細かいところでのアメリカに対する嫌がらせ的な行為、テロ行為が今後出て来ると思います。

飯田)それはアメリカと友好関係にある国々も標的になりますか?

奥山)なります。イラン側の狙いは直接アメリカではなくて、アメリカの信頼性を失わせる方向ということが彼らのなかにあります。

飯田)「アメリカについていてもメリットがないぞ」と。

奥山)その通りです。そこが危惧されるところですね。

飯田)中東でいちばんアメリカと友好関係にある国というと、イスラエルが思い浮かぶのですが。

イランとアメリカの衝突は互いの国民に対する“プロレス的”なショーだったか

ソレイマニ司令官の殺害を1面で大きく報じるイラン各紙=2020年1月4日(共同) 写真提供:共同通信社

ソレイマニ司令官殺害はイスラエルからの情報提供によるもの

奥山)そうですね。今回の攻撃に関しては、5月くらいからイスラエルがソレイマニ氏の居場所を全部特定しています。確認できませんけれど、アメリカはその情報を使って、ピンポイントで爆撃したのではないかと思います。

飯田)衛星で情報を取っているから、それでピンポイントにやったのではないかとも囁かれましたが、そういうことではない?

奥山)基本的には現地の情報がないと、正確な爆撃はできません。その情報はどこから来ているのか、イスラエルからかなりの情報を得ていると思います。

イランとアメリカの衝突は互いの国民に対する“プロレス的”なショーだったか

会談を前に握手するトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席=2019年6月29日、大阪市(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

「イランではなく、中国と対決して欲しい」のがアメリカに対する日本の要望

飯田)イラン側としては、破壊活動やテロ行為をやって行く。そして今回の事案が起こったときも、国際社会で真っ先に発言をしていたのは中国やロシアではないですか。最終的にはその辺と組むのでしょうか?

奥山)大きな枠組みで我々が考えなくてはいけないのは、アメリカ対中、ロ、イランです。中国とロシアとイランがアメリカの主敵であって、その文脈のなかでのイランとの対決なのです。そして、日本の国益にとって重要なのは、対中国です。「トランプ大統領、イランや中東をかまっていないで、早く東アジアの中国との対決に来てください」。これが日本政府からお願いしたいところなのです。中国はアメリカにも日本にも大変な脅威になるので、そこに目を戻していただきたいのに、余計なことをやってしまっているという状況にあるわけですから。そして、安倍総理の今回の中東歴訪に関しては、その狙いがあるのだと思います。

飯田)その文脈で、アメリカとイランの橋渡しを日本が担う。それを担うときに、日本は武力などが使えないではないですか。そのなかでどこまで橋渡しができるのかということですが。

奥山)できないですね。しかも、今回行く場所がサウジアラビアとアラブ首長国連邦、そしてオマーン。これは全部イランの敵というか、アメリカの友好国です。安倍総理は今回イランの近くには行きますが、最終的にはアメリカ側の勢力の代表として行くということになるので、イランにとっては「何をやっているのだ」という感じですね。日本とイランはとても仲がいいのですが、そういうところが印象として出て来ると思います。とにかく日本政府としてはアメリカに、「早く東アジアに戻って、中国の方に行ってください」というメッセージを発信するべきだと思います。

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