日米安保60年~アメリカなき世界秩序のなかで日本はどうやって国を守るのか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月15日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。日米安保条約の署名から60年を迎えた現在の日米関係について解説した。

日米安保条約の署名から60年

1月19日、現行の日米安全保障条約の署名から60年を迎える。アメリカ訪問中の梶山経済産業大臣は13日、ライトハイザー通商代表と会談した他、14日にはEUを交えた貿易相会合を実施。同じく訪米中の河野防衛大臣は15日、エスパー国防長官と会談。また、茂木外務大臣はポンペオ国務長官や韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相と会談する。

飯田)昭和35年の60年安保。そこから60年です。

日米安保60年~アメリカなき世界秩序のなかで日本はどうやって国を守るのか

日米貿易協定交渉の最終合意を確認した文書に署名した安倍晋三首相(左)とトランプ米大統領(アメリカ・ニューヨーク)=2019年9月25日 写真提供:時事通信

対米依存から逃れられない日本

佐々木)この60年で一貫した課題は、アメリカとの距離をどうやって置くのかということです。置いた方がいいのか、置かない方がいいのかという議論も含めて、それが大きな課題でした。国民民主党の前原誠司さんは民主党政権時代の外務大臣ですが、数日前に毎日新聞のインタビューに応えていて、「対米依存の高さが日本の弱みだった」と言っています。確かにそうで、核抑止力と敵地攻撃力、装備、情報収集の4つのカテゴリーで米国に依存しています。この米国に委ねていることの多さが、対米交渉力を著しく落としていた。そのために日米貿易摩擦や、他の分野でも妥協を強いられなければいけなかったのです。そこが中国と日本の違うところで、中国はアメリカに何も依存していないので貿易摩擦でも強く出られるのですが、日本は徹底的にアメリカに従属するしかありませんでした。そこを何とかしなければいけないのは確かなのですが、アメリカへの依存を減らしたら、軍事力をどれだけ増やすのか。NATOだと軍事費がGDP比4%ですが、日本はそれよりもずっと少ないです。

飯田)取り払われたとはいえ、未だにGDPの1%くらいというのが暗黙の了解になっていますものね。

佐々木)これだけ社会保障費が増大して、教育にも予算が割けていないなかで、防衛費だけ増やすというのは到底国民の理解を得られません。そんななかでアメリカから独立することは、これだけ核保有国に囲まれている現状だと現実的ではありません。

飯田)中国、ロシア、北朝鮮と考えると。

日米安保60年~アメリカなき世界秩序のなかで日本はどうやって国を守るのか

デジタル市場競争会議で、「GAFA」と呼ばれるグーグルなど米IT大手4社の担当者を前に発言する菅義偉官房長官(左手前から2人目)=2019年11月12日、首相官邸 写真提供:時事通信社

アメリカなき世界秩序のなかで日本はどうやって国を守り、世界平和にどう寄与するのか

佐々木)しかも、トランプ氏は再選されそうな勢いですが、そうなると更に3年か4年付き合わなければいけないわけで、アメリカとの関係はなかなか難しいものがあります。これには答えがないのですよね。

飯田)かつて言われていたのは、アメリカの戦争に引き込まれるということでしたが、いまは逆にアメリカが退きつつあるのではないかという話ですよね。

佐々木)アメリカとの戦争に引き込まれると散々言われて来ましたが、そんなことは1回もなかったではないですか。現実的に、日本にアメリカがそこまで要求することはあり得ません。後方の補給や沖縄の基地を使ったベトナム爆撃はありましたが、それ以上の武力投入をアメリカが求めることはありませんでした。トランプ時代になると、世界の警察からアメリカが撤退して行っています。オバマ時代からその片鱗はあって、中東からリバランスと言って東アジアへ移ると。東アジアへ来てくれれば、我々としては嬉しかったのですが、その東アジアからさえも撤収しようという話になって、特に在韓米軍は撤退という話も出ています。そうなると、アメリカなき世界秩序のなかで日本はどうやって国を守り、世界平和にどう寄与するのかというところのグランドデザインを描かなければいけない時期に来ているのですが、誰も議論できないですよね。そこで議論しようとすると、すぐ「軍事大国を目指すのか」という批判が起こります。

飯田)「軍歌の足音が聞こえて来る」などと言います。

佐々木)そういう話になってしまって、議論が成立しなくなってしまう。どこかで引き受けて、議論できる政治家が出て来なければいけない。国民民主党が言っていることは真っ当だと思うし、この人たちが主導して野党で議論して欲しいと思います。

日米安保60年~アメリカなき世界秩序のなかで日本はどうやって国を守るのか

新潮社『「反権力」は正義ですか(新潮新書 846)』著:飯田浩司(※画像はAmazonより)

「反権力」という枠組み自体が幻想だった

飯田)「野党の立場でも議論しよう、安全保障に与党も野党もない」とおっしゃっていた方の多くが、自民党に入っています。長島昭久さんもそうだし、細野さんもそうです。結局、党派性を前面に押し出す人の方が票を取ってしまうところなのですか?

佐々木)そうですね。細野さん、長島さんという政治家には期待しているので、2人とも自民党に行ってしまったのは少し残念ではありました。

飯田)私の書いた『「反権力」は正義ですか』という書籍がもうすぐ出ますが、そういう気持ちを盛り込んだつもりでいるのですよね。

佐々木)「反権力」と言っていれば、とりあえず世の中が済むという時代は終わった。そもそも「反権力」と言っていれば済んでいた55年体制だって、あの反権力は形に過ぎませんでした。「与野党激突」と国会では社会党と自民党がやっていたのですが、あれは国対政治の賜物であって、裏では手を握って「きょうはこれくらいにしましょう」とそれぞれが話し合っていたわけです。もはや「反権力」という枠組み自体が幻想だったということが明らかになっているのに、そこが認識されていないし、いまの時代の変化について来られていない人が、野党には特に多い感じがします。

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