日米貿易協定案~「譲歩したのか、していないか」与野党の基準の違い
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月16日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。政府が日米貿易協定承認案を国会に提出したニュースについて解説した。
日米貿易協定承認案を国会に提出
政府は15日、アメリカとの間で署名した日米貿易協定の承認案を国会に提出した。自民党の森山国会対策委員長は、24日の衆議院本会議での審議入りを目指す考えを明らかにしている。
飯田)今月(10月)7日にワシントンで署名式が行われた日米貿易協定。15日の予算委員会でも、野党から「譲歩したのか、していないのか」と質問がありましたが。
譲歩したのか、していないのか~どこを基準にするのかで評価が変わる
佐々木)「何を譲歩とするか」という基準が難しいです。農産物に関しては、TPPの基準で収まっているので譲歩ではありません。問題は自動車だと思います。本来TPPでは自動車関税を撤廃するという話がありましたが、それを先送りしたことが譲歩になったのかというところです。ところがトランプ大統領は、TPP基準どころか追加関税と言っていました。そこをスタート地点とするのであれば、先送りにしたことは、「よくやりました」ということになります。でもTPPを基準にしていたら、先送りにしたことは譲歩していることになります。どこをスタート地点にするかによって、評価の基準は変わって来ます。
飯田)そうすると野党はTPP基準でやろうとして、政府や与党側は当然…。
佐々木)「トランプ大統領が言っていることよりは引き出しているよね」という話になります。
飯田)だから議論がかみ合わないのですね。
佐々木)そういうことです。
飯田)TPPの自動車の部品を撤廃とうたっていますが、相当時間をかけての撤廃ですよね。
佐々木)これから長い年月をかけてやりますね。
飯田)20年、30年かけてようやくみたいな。
佐々木)そうです。トランプ大統領は何を言っているかわからないし、絶えずゴールポストを動かすという状況のなかで、これだけの交渉をして、とりあえず先送りで済んだことは、個人的に評価します。
飯田)今回、トランプ政権もこのあと選挙があるということで、早期妥結を目指した。輸出量に関する話が出ていますが、貿易外のサービスの立て付けは今回、議論にのぼらなかったですよね。
トランプ大統領は常に国内有権者しか見ていない
佐々木)結局トランプ大統領は、対外的にどうするかという外交的な視点ではなく、国内の有権者にどう見えるかということを中心に据えているのではないでしょうか。そういう意味で言うと、日米貿易協定はあまり重視していないのだと思います。もちろん自動車に関しては、国内の自動車工場の雇用の話が出るので気にしなくてはなりません。ただ少なくとも現状、関税撤廃という話にはしていないので、そこはわざわざ見せなくていいのではないかというのが、トランプ大統領の判断だったのだと思います。
飯田)日本としては、トランプ大統領がそういうやり方で来るとわかっていると、貿易交渉としては与しやすいかもしれませんね。
佐々木)トランプ大統領がアメリカ国内有権者向けに、いい顔をできるような材料を提示してあげれば、ホイホイ来るだろうという考え方ができるかもしれません。
飯田)あのトウモロコシを買いますという話も、それに合致している気がしますよね。結局、誰がいつ買うかはわかりません。
佐々木)あの話は何だったのでしょう。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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