日米貿易交渉~アメリカが事実上TPPに融合しつつある事情
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月16日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。食料品・農産物に関する日米貿易交渉について解説した。
日米貿易、国産牛のアメリカ輸出拡大へ
日米貿易交渉でアメリカが、日本産牛肉に設定する低い関税枠200トンの上限を撤廃することで合意したことがわかった。アメリカへの牛肉の輸出は右肩上がりに伸びていて、更なる販売拡大が期待されている。
飯田)一方で日本は、アメリカ産ワインの関税を貿易協定発効後7年目に撤廃する方向で、9月末ニューヨークで開く首脳会談での署名を目指しているということです。
アメリカで人気のある和牛ブランド
須田)食料品や農産物だけを見ると、事実上はアメリカがTPPに参加、融合しつつあるのではないかと思います。それも、部分的に体制が整って来たところもあります。アメリカ国内の肉屋やレストランにおいて、日本を起源とする和牛はブランドとして売られています。もちろん日本から輸入されたものも、和牛というブランドで売られます。アメリカ国内でも肉質が柔らかいということで人気があり、大きな需要があるのですが、生産体制が整ったということで、このような開放や引き下げにつながったのだと思います。
飯田)なるほど。ニーズが出て来たということですね。
日本はアメリカ産ワインの関税を貿易協定発効後7年目に撤廃
須田)それを一気に開放してしまうと、その部分のマーケットが日本からの和牛に席巻されてしまうことを恐れたのではないでしょうか。一方で、アメリカ産ワインの関税を貿易協定発効から7年目に撤廃するということは、ライバル国との関係を意識しているのだろうと思います。例えばチリです。日本とチリの間で経済連携協定(EPA)が、2007年に結ばれています。
飯田)もう10年以上前ですね。
須田)2007年に結ばれて、2010年にはチリ産ワインの関税がゼロになりました。2007年当時、チリ産ワインとアメリカ産ワインの日本国内における消費量はほぼイコールだったのですよ。しかし今日においてどれくらいの差がついたかと言うと、10倍以上です。
飯田)10倍以上。
日本でアメリカ産ワインの10倍以上伸びているチリ産ワイン
須田)スーパーマーケットやコンビニエンスストアの店頭を見ていただくと、アメリカ産ワインは関税がかかっていますから、隅に追いやられていたりコンビニでは扱われていなくて、チリ産ワインがメインのところに居座っているという状況です。10倍伸びているというのは頷けるのですが、それに対してアメリカのワイン農家は相当焦っている。日本は大きな消費国ですからね。
飯田)2007年、そのころを思い浮かべると、カルフォルニアワインなどがあったなという感じですものね。
須田)ナパワインなど、アメリカ国内で飲むと安くて美味しいのですよ。白ワインも好まれていて、シャルドネ酒などは値段の割に美味しいです。フランスワインにも対抗できるのだけれども、関税が障壁になっていて、なかなか入って行くことができない状況です。これに対してアメリカのワイン生産者から不満が上がっていて、今回はワインに絞って、このような協定が結ばれたということです。トータルで見るとFTA、EPAであることは間違いないし、結果的にTPP11の枠組みを強く意識していたのだろうと思います。
飯田)確かにいまスーパーの店頭を見ていると、TPPが発行してこの方、オーストラリア産なども安くなった感じがします。その辺にシェアを奪われるということも影響しているのでしょうね。
須田)そうですね。ワイン1ボトルを1000円以上で飲むというのは特別な感覚で、チリ産ワインなどは500円以下で十分美味しいものがありますからね。
飯田)トランプ大統領とは、国連総会の場で署名という流れですかね?
須田)ただ、懸案材料はまだ残っていて、例えば米はどうするかとかね。
飯田)カルフォルニア産米であったり。
須田)ワインの対抗商品と考えると、アメリカ産の米も十分美味しくなって来ている。生産量は多くないのですが、高級品です。おにぎりにしても意外と、最近のアメリカ産の米は美味しいのですよ。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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