日米貿易協定案~今後重要となるデジタル貿易の議論が必要
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月4日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。日米貿易協定承認案について解説した。
日米貿易協定承認案、きょう参議院本会議で可決承認へ
日米貿易協定承認案が3日、参議院の外交防衛委員会で可決され、4日の参議院本会議で承認される見通しとなった。承認されれば、来年(2020年)1月1日に協定が発効する見通しとなる。
飯田)自公両党と、日本維新の会の賛成多数で可決。4日の参議院本会議にかかります。
フランスではIT企業に対してのデジタル課税が決定
佐々木)車と農業の話ばかりがクローズアップされていますが、私は今後のことを考えると、デジタル貿易協定案の方が重要だと思います。ちょうど4日に、フランスがデジタル課税を決めました。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)のような大きなIT企業が、フランスでサービスをした場合にはそれに課税する。トランプ大統領が怒って、それに対抗して関税を課すともめています。日本とアメリカのデジタル貿易協定案は、デジタル配信についてはお互いに課税しないというものです。
飯田)それも入っているのですね。
佐々木)加えて、アメリカの企業が日本で何かをサービスしたときに、どういう仕組みでやっているかというアルゴリズムやプログラミングなどについて、日本側は開示を求めないということです。お互いサービスの根幹で、企業秘密なので開示を求めない。ただし独禁法のような、何か必要なときにはある程度介入して開示が認められるという協定です。これは、いいとも悪いとも言い切れません。
日本でのアマゾンジャパンの納税は数億円だけ~楽天は300億円
佐々木)フランスがやっているデジタル課税は重要です。なぜならGAFAが世界を席巻していますが、徴税ができないという問題があります。日本も典型です。楽天は年間300億ぐらいの税金を日本政府に納めていますが、アマゾンジャパンは年間数億しか納めていません。アマゾンジャパンは「アマゾン本体がやっているサービスの補助をしているにすぎない」という話なのです。アマゾンジャパンは税金を納めていないけれど、アマゾンが本国のアメリカに税金を納めているからいいというロジックです。EC分野でアマゾンの存在がこれだけ大きくなっているのに、日本に税金が納められないのはどういうことか。
飯田)日本でも売上が相当な額ですよね。
佐々木)そうだと思います。
飯田)例えばそれに1%課税するだけでも、ものすごい税金ですよね。
佐々木)消費増税分くらい稼げるのではないでしょうか。それでは、どこに課税するのか。下手をすると、どこにも課税していないとか、タックスヘイブンで財産を移転している可能性もあります。そういう問題があるので、ある程度は課税した方がいいと思います。しかし、それをやり過ぎるとITの進化や普及ができなくなってしまう。これからその市場規模が期待できるのに、成長阻害をするのはどうなのか。特に日本の場合は、ヤフーとラインが合併して持ち株会社をつくることになりました。あれが今後、東南アジアに出て、東南アジアの大きい市場を取る可能性もあるわけです。そのためにも、ガチガチに締めすぎると日本も得をしません。
今回の貿易協定を国際基準に~今後の東南アジア市場を考えると締めすぎたくない
佐々木)今回のアメリカと日本の貿易協定は、国際標準にしようという狙いがあります。日米だけでなく、対東南アジア、将来的には対アフリカなど、潜在的な市場にも当てはめる狙いがあります。日本政府としては、自分たちの首を絞めることはしたくないのです。GAFAの次にやって来るのは、中国企業BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)かもしれません。その影響力をどのくらい許容するのか。締めすぎると自国のIT企業の成長を阻害するから、そのバランスをどうするかというところを議論しなければなりません。
飯田)この審議で、そういうところを含めてやるべきですね。これは産業政策とも絡むところですか?
佐々木)そうですね。自動車や農業も大事ですが、次世代を考えると、もう少し先のことを考えたほうがいいと思います。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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