ニッポン放送「ザ・フォーカス」(11月14日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。ヤフーとLINEの経営統合で起こる危険性について解説した。
ヤフーとLINE「統合協議は事実」
ヤフーを展開するグループ会社と無料通信アプリを手掛けるLINEは14日、両者の経営統合に関して「協議を行っていることは事実」とするコメントを発表した。いずれも現時点では決定した事実はないとしている。実現した場合、さまざまなインターネットサービスを一手に扱う巨大グループの誕生となる。
森田耕次解説委員)ヤフーを展開するZホールディングス、無料通話アプリを手掛けるLINEが経営統合ということで、14日午前の東京株式市場では両者の株式に買い注文が殺到したそうです。IT分野での相乗効果に期待が高まっているということで、あるネット証券の関係者は「ソフトバンクグループが国内ITサービスの領域で陣地を拡大し、ナンバーワンになりたいのではないか」という指摘をしています。LINEの親会社は韓国のIT大手ネイバーということで、韓国メディアも大々的に報道しています。
佐藤)私は「安全保障屋さん」でもありますから、非常に不安ですね。特定の民間企業1社、それがかなり寡占的な立場を得ながら個人情報を得るのです。民間企業ですから、それを必要とするどこかの国家に売ってしまうことだってあり得ます。
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【ヤフーがZOZOと資本提携】サプライズで登場したソフトバンクグループの孫正義会長(左)とZOZOの前沢友作前社長=2019年9月12日午後、東京都目黒区 写真提供:産経新聞社
国家と並ぶ巨大な権力を持つことへの警戒
森田)これだけデータを持っていて、それを海外に売ってしまう危険性があるのですね。
佐藤)国民の動向、日本の世論の動向を誘導できることに歯止めをどうやってかけるのかというところで、日本と関連する企業が大きくなることを手放しで喜ぶわけではなく、安全保障上の脅威が生じないようにどこで国が介入するかということを決めておいた方がいいと思います。それから、きちんと税金を払って貰うと。GAFAの真似をしておかしなことをしないように、日本できちんと納税して貰う。その辺のグリップは初動からやっておく必要があります。
森田)GAFAの課税問題は国際的な問題になっていますものね。それから、情報というところで言うと国でも会議が始まってきましたが、GAFAについては独占禁止法違反にならないように新しい法律をつくる動きになっているようです。このデータの独占、下の企業へ不当にならないように、というところですね。
佐藤)非常に注目して見たいです。国家と並ぶ巨大な権力を持つわけですから、その権力に対してはメディアもユーザーも警戒を持っていないと、いつの間にかそういった企業に我々が従属してしまう危険性があります。
森田)国家と並ぶ巨大権力、まさにGAFAですよね。アメリカも相当警戒しています。
佐藤)ですから、GAFA対国家という世界的に起きている戦いが日本のなかでも起きる可能性があります。
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LINE株式会社のオフィスが入るJR新宿ミライナタワー付近の電子広告=2017年4月27日午前、東京都新宿区 写真提供:産経新聞社
多国籍企業であることによる不安
森田)喜んでばかりもいられません。データをこれだけ握られるというところで、我々も警戒しつつ、国も規制する必要があります。
佐藤)しかも、多国籍企業ですからね。日本の企業とは必ずしも言えません。パートナーとなっている国と日本の関係が100%良好なのかと言うと、そこにも不安があります。そういったところが新聞報道で弱い気がします。
森田)そこは確かにあまり出てきませんね。
佐藤)これでお祭り気分になって、日本の経済が活性化するのではないかというムードだけに流されるのは危ないと思います。
森田)アジアの2国間の関係も影を落としています。
ザ・フォーカス
FM93AM1242ニッポン放送 月-木 18:00-20:20