日米貿易協定~野党の「日本車への追加関税撤廃確約」追及が意味のない理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月20日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。日米貿易協定について解説した。

日米貿易協定~野党の「日本車への追加関税撤廃確約」追及が意味のない理由

衆院外務委員会で日米貿易協定承認案が賛成多数で可決された=2019年11月15日午前、衆院第11委員室 写真提供:産経新聞社

日米貿易協定の承認案が衆議院を通過

衆議院は19日、日米貿易協定の承認案を与党などの賛成多数で可決した。承認案は日本がアメリカ産の農産物への関税をTPPの範囲内で引き下げる一方、アメリカが日本車への追加関税を課さないことなどを確認する内容で、日米両政府は2020年1月1日の発行を目指している。

飯田)衆議院通過を受け、きょう(20日)から参議院本会議で審議入りです。来月(12月)9日までの国会の会期内での承認を目指しています。

日米貿易協定~野党の「日本車への追加関税撤廃確約」追及が意味のない理由

ホワイトハウスで、記者団に話すドナルド・トランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)=2019年10月3日 写真提供:時事通信

「日本車への追加関税撤廃確約」を追及しても意味がない

佐々木)「桜を見る会」どころではなくて、こちらの方が問題だと批判している人もいます。問題は、アメリカの農産物が日本に入るときに関税がかかっていたのを引き下げると、日本の農業などが損をするだけです。アメリカに日本車が輸出されるときに、追加関税はしない約束をすることで成り立つ話なのですが、本当にアメリカが約束しているのかということが問題なのです。朝日新聞の社説で、「大きな焦点は、今回同意できなかった車の追加関税の将来の撤廃は確約なのかどうか。約束した根拠を政府は首脳間、トランプ大統領と安倍総理の間での約束を挙げているが、それは根拠となり得るのだろうか」とありました。まったくその通りです。しかし相手はトランプ大統領で、言うことはコロコロ変わるし、ゴールポストもしょっちゅう変わる人なので、確約が取れたかどうかを野党やメディアが迫っても、日本政府は答えきれないのではないかと思います。

飯田)こちらでハンドリングできませんよね。

日米貿易協定~野党の「日本車への追加関税撤廃確約」追及が意味のない理由

日米貿易協定交渉の最終合意を確認した文書に署名した安倍晋三首相(左)とトランプ米大統領(アメリカ・ニューヨーク)=2019年9月25日 写真提供:時事通信

米議会も鉄鋼業界も自動車の追加関税には反対

佐々木)そうですよね。個人的には、この段階まで取りつけたのは評価してもいいのではないかと思います。トランプ大統領が何を考えているかわかりませんが、日本やメキシコの自動車輸入に対して追加関税をするということは、議会は共和党も含めて反対しています。トランプ大統領支持層の鉄鋼業界は、自動車の追加関税なんてやったら鉄鋼の需要が減ってしまうので、問題だと。せっかくトランプ政権で鉄鋼業界が盛り上がって来たのに、また需要が冷え込んでしまったら困るということで反対しています。トランプ大統領の支持層がみんな反対しているのだから、追加関税はしないだろうという見方をしています。見通しはそれほど悪くないのではないかと思います。

飯田)今回はTPPの範囲内で、自動車の追加関税ではなく、現行で掛けられている部分が30年後に撤廃という条項がTPPにはありますが、それはもう1度協議すると。そこをもって譲歩だと言う人もいます。

佐々木)これは外交問題すべてに言えることです。例えば北方領土問題の日露間の交渉でもそうですが、外交は相手がいることだし、交渉の内容は言えないこともたくさんありますので、そこを追及し続けてもさほど効果はないと思います。

飯田)影響は最小限にと言うのであったら、国内の景気をよくする方がよっぽど重要ですよね。

佐々木)評価や批判は難しいことですが、やるべき批判とやっても意味のない批判があるので、それを見極めることが大事です。

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