なぜ露・ラブロフ外相の“日米同盟強化への懸念”が重要な論点なのか
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月27日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。茂木外務大臣が明らかにしたラブロフ外相の発言から、北方領土返還について解説した。
日露平和条約締結交渉、ロシア側が日米同盟の強化を懸念
茂木外務大臣は昨日(26日)、ラブロフ外相が22日に行われたロシアとの外相会談のなかで、日米同盟の強化が日本とロシアの平和条約の交渉に与える影響について「懸念している」と伝えて来たことを明らかにした。茂木大臣は重要な論点だという考えを示している。
飯田)ロシア側は、前々から言っていたことではありましたが。
オホーツク海を死守したいロシア~重要な位置にある国後島と択捉島
高橋)ロシアがどうして気にするかを言わないとわからないと思いますが、オホーツク海を誰が持つかということです。オホーツク海は内海になっていますし、あそこに原子力潜水艦を潜らせておいて核ミサイルを発射できるということが、核戦争においてロシアのいちばんのカードなのです。アメリカも近いし、オホーツク海をどのように自分の海にしておくかということです。そうすると国後島、択捉島はいいラインになります。国後島と択捉島の間の海峡と、択捉島と千島の間の海峡は深くて、外海にも出られるし、逆に言うとオホーツク海にも入れます。そこを封鎖したいというのが、ロシアの以前からの構想です。そのため、国後島と択捉島は絶対に手放さないでしょう。だから歯舞群島、色丹島がまだ交渉の余地があるということなのです。ロシアとしては択捉と国後は死守ラインだし、オホーツク海の海峡を許せば、外から入って来て荒らされてしまうかもしれません。逆に、封鎖されたら出られなくなってしまいます。
歯舞群島・色丹島の2島返還の可能性がある理由
高橋)だから国後島と択捉島を切り離して、歯舞群島、色丹島の2島返還の可能性が出て来るのです。歯舞群島と色丹島はその外だから、それほど影響はないわけです。ただ、色丹島にもロシアの大きな基地があるので、ロシアとしては安全保障上で重要な地域です。それがわからないと交渉できません。逆に言うと、この話が出るということは、交渉しているということです。
飯田)かなり現実論として考えて来ているということですね。
日本は共同経済活動として既成事実をつくって行くしかない
高橋)具体的に交渉のなかで出て来たということは、水面下でいろいろなことをやっているのでしょう。日本はその話を議論すると交渉上あまりよくないから、そのために共同経済活動として、既成事実をつくって行くという戦略なのです。だからこの話をあまりしないで、「経済活動でいいのでは?」などと言って、いまの話題だと北方四島でごみがたくさん出るから、「このごみをどうするのか」という話をするのが、日本の戦略だと思います。
飯田)温泉があるからツアーもいいではないかとか、墓参とか。
高橋)人口が増えて汚くなっているとかね。海洋の話は国際的にまずいから、そのごみ処理は日本がするという方向に持って行くのだと思います。安全保障の話になると、スタックしてしまう可能性があります。
飯田)これが表に出てしまうと。
高橋)譲れない話が両方から出て来るでしょう。
飯田)それぞれの国益が、真正面からぶつかることに。
高橋)ロシアは「施政権がない」と言われたら、実効支配しかできなくなってしまう。実効支配というロシアの事実しか残らないし、それは日本の外交上よくない。さまざまなハードルをいかにかいくぐって、実利で話を進めて行けるかどうかが、日本の外交の腕の見せどころでしょう。北方四島の話は難しいです。
飯田)これは漢方薬みたいなもので、すぐにクリアカットというわけではなく、じわじわやって行くしかない。
高橋)ないですね。70年間何もなかったのだから、これからの70年間でひっくり返せるのかという議論だと思います。
飯田)孫の世代かな。
高橋)我々は生きていないですね。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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