1軍との紅白戦に勝った阿部・巨人2軍監督が報道陣に要求したこと

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、今シーズンから指導者としてのスタートを切った、巨人・阿部慎之助2軍監督にまつわるエピソードを取り上げる。

【プロ野球巨人宮崎キャンプ 紅白戦 1軍対2・3軍】試合に勝利し、選手たちとタッチを交わす巨人・阿部慎之助2軍監督(中央)=2020年2月4日 宮崎県総合運動公園 写真提供:産経新聞社

「(巨人の)2軍は読売ジャイアンツじゃない。読売巨人“軍”だ!」

昨年(2019年)オフ、就任早々「選手を“軍隊式”さながらの猛練習で鍛え上げる」と宣言した阿部慎之助2軍監督。ファームの指揮官に就任したのは、もちろん“ポスト原”含みですが、指導者修行以外にもう1つ、チームが阿部監督に期待しているのは、「若手の底上げ」です。

現役時代から後輩たちに対する面倒見がよく、野球に取り組む姿勢など、若手にいい影響を与えて来た阿部2軍監督。外部から補強するだけでなく、選手を自前で育てて行かないと、リーグ連覇は難しいことを原監督も痛感しています。

指導者生活1年目にして、いきなり「1軍への人材供給」という厳しいミッションを課せられましたが、さっそく春季キャンプからハードな練習を若手たちに課しました。

昨年、星稜高校からドラフト5位で入団したルーキー・山瀬慎之助。星稜では、ヤクルトにドラフト1位で入団した甲子園のスター・奥川恭伸とバッテリーを組んでいた捕手です。「慎之助」という名前は、阿部2軍監督にあやかって付けられました。

阿部2軍監督は山瀬を、先輩捕手の田中貴也とともにショートの位置に立たせ、自らノックバットを握って30分間、左右に激しいノックの雨を降らせました。しかもその際に叫んだ言葉が「技術じゃねぇ! 体力と根性だ!!」。

……と書くと、時代錯誤の昭和式トレーニングかと思いますが、これはあくまで叱咤激励の表現です。捕れそうにないゴロに果敢に飛びつき、グラブに当てれば「惜しい!」。みごとキャッチすれば「ナイスプレー!」と褒めることも忘れません。

「憧れの人から指導を受けるのは恵まれたこと。幸せを感じながらやっています。でも、めちゃくちゃキツかった……」(山瀬)

またティー打撃では選手に「両脚を開いて、低めの球を打て!」と指示し、自らボールを休みなくトス。この打ち方を続けていると、やがてヒザがプルプル震えて来ます。

これは阿部2軍監督自身が現役時代、コーチから「キツいかもしれないが、これをやっておくと将来いいことがあるぞ」と言われ、日々実践していた練習法。選手にしてみれば、実際に「いいことがあった」指揮官本人が言うのですから、ものすごい説得力です。

育成選手の面倒を見るのも、2軍監督の仕事。今季、支配下登録されている外国人野手は、ナショナルズから新加入のヘラルド・パーラだけですが、もう1人、破壊力のある外国人がいれば鬼に金棒です。

そこで期待されているのが、今季2年目の育成選手、イスラエル・モタ(24歳)です。モタは、巨人がドミニカ共和国で実施したトライアウトに合格し来日。1年目の昨季は、ジャイアンツ球場でスコアボードを破壊する本塁打を放ち、周囲を驚かせました。

阿部2軍監督は、そんなモタにも熱血指導。ハードな練習に音を上げ、すぐ休もうとするモタに「この野郎!」とカミナリを落としたかと思えば、スペイン語と英語のチャンポンで「ムーチョ、ムーチョ、マネーよ!」(=頑張ればもっともっと、カネが稼げるよ!)と明るく励ますのも阿部流です。

昔と違って、いまの若い選手は、「いいからやれ!」と言ってハードな練習を押しつけても、ついて来ません。いまの指導者は「何のためにそのトレーニングをするのか?」「どういう効果があるのか?」を示した上で、ときには褒めて、おだてて、鼓舞する……そんな能力も求められているのです。

「その気にさせてあげるのが、僕らの仕事なので」

と言う阿部2軍監督。“初陣”になったのが、4日にいち早く行われた「1軍 vs 2軍+3軍」の紅白戦です。1軍は元木ヘッドコーチが、2軍+3軍の指揮は阿部2軍監督が指揮。

阿部2軍監督はファーム連合の選手たちに「真剣に勝ちに行くぞ!」と号令を掛け、先述のモタをはじめ「阿部チルドレン」たちが活躍。打線が14安打を放ち、7-1で逆転勝ちを飾りました。

みごと下克上を果たした選手たちとハイタッチ。喜びを分かち合った阿部監督ですが、コメントを取りに来た報道陣を前に、こう要望しました。

「(新聞の)1面はオレじゃなく、選手にしてあげてね。それが彼らの自信になるので」

選手の気持ちに立って考えられるのも、昨年まで現役だったからこそ。

また試合後、「何で打てたのか、メモに残しておくこと」と選手たちに宿題を課した阿部2軍監督。勝って満足するのではなく、なぜ結果が出せたのか、常に考えることが大切というメッセージです。

今季、巨人2軍のスローガンは「考動(こうどう)~苦しい方を選べ 迷ったらやれ~」。「考動」とは「考えて動く」という意味の造語で、まさにこの言葉通りの、ブレないキャンプを展開している阿部2軍監督。原監督が期待する以上の「底上げ」を見せてくれるのか、「阿部チルドレン」の成長に注目です。

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