新型肺炎~日本が非常事態に対応できない理由
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月21日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。新型肺炎に関するアメリカ政府の対応を受け、非常事態に対する日本の体制について解説した。
拡がる新型肺炎~アメリカ保健当局が日本に対し渡航注意の情報
アメリカ疾病対策センター(CDC)は19日、新型コロナウイルスの感染者の増加をふまえ、日本と香港への渡航に際して注意するよう呼び掛けた。注意レベルは3段階で最も低いレベル1の「通常の注意が必要」で、渡航の中止や延期は勧告しないということだ。
飯田)ちなみに中国本土に対しては、最も危険とするレベル3の「不要な渡航は回避」に指定しています。
宮家)アメリカは厳しいですよね。早い段階から中国からの渡航者の受け入れをすべて拒否しています。客船の米国人乗客はみなさんチャーター機に乗ってアメリカに帰るわけですけれども、また2週間の検疫をやらなくてはいけないから、一部の人は日本に残っているということです。いろいろ報道を見ていると、アメリカに着いたら、彼らを軍の施設に入れてしまうのですね。そして2週間は出さないのです。なぜそれができるかと言うと、アメリカは細菌兵器や化学兵器に対して、準備をしているからです。もちろん日本にも似たような部隊はあると思いますけれど、規模が違います。ウイルスの中身まではわからないでしょうが、アメリカには最低限以上の施設がしっかりとあるはずです。そして、そこに専門家を集めるのですよ。
アメリカは非常事態に対する準備ができている
宮家)なぜそれができるかというと、2つ理由があります。1つは、国がしっかりと非常事態についての準備をしているということです。その準備ができているかいないかで、オペレーションができるかできないかが決まる。そしてもう1つは、国民がそれを受け入れているということ。帰られた方のなかには、アメリカ政府に批判的なことを言っている方もいました。客船に既に2週間いて、アメリカに帰ったらまた2週間行かなくてはいけないのは、とても大変です。しかし、大多数の最大幸福のため、そこはみんな我慢するわけです。国民もそれを受け入れるのです。そうでなくてはこんなオペレーションはできません。
アメリカにできることがなぜ日本にできないのか
宮家)では、日本はどうか。まず非常事態についてですが、安全保障関連法案にもあれだけ時間がかかっているし、スパイ防止法はないし、いくらでも法的に穴があるわけです。もちろん、病気の関連については随分整備されていると思うけれど、今回は必ずしも上手く機能してはいなかった。しかも規模がこれまでとは全然違うでしょう。非常事態に対する準備を、国がどれだけできていたかという問題がある。それからもう1つは、国民がそういうことを受け入れるかどうか。これは日本では難しいのではないかと思います。日本の場合は中国に近いのだけれど、残念ながら中国からの渡航者の受け入れも地域的に限定しましたよね。浙江省と湖北省。残りは全部オッケーということです。しかし、北京にだって感染者はいたかも知れませんからね。
飯田)いまは封鎖されているという話ですからね。
非常事態に対する対応ができない日本
飯田)その辺りの危機感で、識者の方のなかにはやはり根本原因は憲法だろうと言う方もいます。緊急事態に対する条項がないなかで、どこまで政府に権限があるのかという議論です。しかしそれをやろうとすると、「この非常事態に乗じて改憲を、改悪をしようとする」という批判がまた出て来てしまう。
宮家)少なくとも憲法に反しないような非常事態、アメリカがやったような検疫に関する非常事態への対応は、いまの日本の憲法の下でもできるわけです。法律さえつくればいいのですから、問題はつくっていないことですから。この問題については自主的な議論をしないで、政争の具にして来たのではないですか。そうだとしたら、検疫の問題は、憲法問題とは切り離しをして、当然これは国の安全保障の問題ですが、戦争を始めようとか武力行使をしようという話ではないのですから。あくまでも準防衛というか、医療の世界での防衛をやるのに、なぜそんな改憲の話になるのかと思いますけれどね。
飯田)防衛という言葉が出たので素朴な疑問なのですけれども、自衛隊というのは自己完結の組織ではないですか。そして細菌兵器などに対する知見もいっぱいある。
宮家)あるはずです。
飯田)防衛出動することは、敵がウイルスでは難しいのですか?
宮家)自衛隊が本当にかわいそうだと思うのですよね。本当は敵がいるのだけれど、外国を敵などと言ってはいけない。戦後、ゴジラなどの怪獣映画を見ればわかりますが、自衛隊は怪獣としか戦わないのですよ。『シン・ゴジラ』などもそうでしょう。
飯田)怪獣と戦うにしても「どこに法的根拠があるのだ」と、ファイルを持って右往左往するという。
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