「安全保障」・「経済」の両面で迫る中国~今後アメリカはどう向き合って行くのか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月19日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。アメリカと中国の新たな関係、そしてそこからの日本の立ち位置について解説した。

米中経済貿易協定の署名式(米中貿易戦争-Wikipediaより)

中国がアメリカに対する696品目の追加関税を1年間免除

中国政府は18日、農産物やエネルギーなどアメリカからの輸入品696品目を対象に、追加関税の適用を1年間免除すると発表した。1月中旬に署名したアメリカとの第1段階の貿易協定を受けた措置の一環で、中国政府は今回の免除でアメリカ製品の輸入拡大を促す構えだ。

飯田)第1段階の協定が14日に正式発効ということで、農産品や工業品、エネルギーなどの輸入を2年間で合計2000億ドル増やすということです。日本円にすると20兆円以上です。

佐々木)すごい規模ですよね。中国は世界の工場と言われるような輸出国でしたが、これだけ中間層が台頭して豊かな国になると、いまや世界の消費市場になりつつあります。もう1つ大事なのが、今回の新型コロナウイルスの問題で、中国国内の生産がストップしています。多くの中間財を輸出していたので、世界のグローバルサプライチェーンに大きな影響を与えています。日本も東日本大震災のときに東北の工場がストップして、海外への輸出が滞り、iPhoneがつくれなくなったりしました。それと同じ状況です。いかにいまの時代、グローバルサプライチェーンが発達して、あらゆる国のあらゆる生産物が世界中を支えているのかという構造が明らかです。

ロナルド・レーガン米大統領と1対1で会談を行うミハイル・ゴルバチョフ・ソ連書記長(ソビエト連邦-Wikipediaより)

かつてのソ連と同じイメージで中国を捉えているトランプ大統領~ソ連には安全保障面だけを考えればよかった

佐々木)トランプ大統領のなかで、中国はかつてのソ連のようなイメージです。経済的に封鎖すれば中国は困るだろうというイメージでしか捉えておらず、かつてのソ連と中国が違うことをわかっていないと思います。そもそも、ソ連は経済的に脆弱でした。1950年~1960年代くらいまではうまく行っていました。工業生産をすれば売れるという時代があったのです。日本でも高度成長時代は、カラーテレビをつくればどんどん売れる時代がありましたが、1970年代以降はオイルショックやドルショックなどがあり、ものをつくれば売れる時代ではなくなりました。それを売るためには、どれだけクリエイティブなものをつくらなければいけないかという状況のなかで、アメリカやイギリスは金融経済、IT方面などに行きました。ソ連はそれに乗り遅れて、経済が失速してしまった。だから当時のアメリカは、ソ連に対して安全保障面だけを考えればよかったのです。

ワシントンで始まった米中の閣僚級貿易協議(アメリカ・ワシントン)=2019年2月21日 写真提供:時事通信

中国には安全保障面と同時に経済面でも向き合わなければならない

佐々木)ところがいまの中国はそうではなくて、安全保障と同時に経済でも向き合わなければなりません。中国は当時のソ連と経済力がまったく違います。アメリカの専門家は、「中国は独裁政治だからいずれ失速する」と言い続けていましたが、いまだ失速する気配はありません。それどころか巨大な消費市場になりつつあり、AIや自動運転などの最先端の分野でも、アメリカと接戦を展開するくらいになっています。こうなると、グローバルサプライチェーンの一角である中国を認めざるを得ません。

飯田)経済の面からすると。

佐々木)そうです。アメリカのトランプ陣営の強硬派はデカップリングと言って、世界経済を中国側とアメリカ側で分けたほうがいいと言っている人がいますが、現実では不可能だということが見えて来た。そのなかで、どう中国と折り合うかです。ところが折り合いを考え続けると、安全保障も折り合わざるを得ない。そんなときにアメリカは、西太平洋はもはや中国に任せましょうと…。

飯田)かつて中国の軍部がアメリカに対し、太平洋を2分割してお互いに侵さないようにしようと提案したら、当時は一笑されました。10年くらい前の話ですが、それが現実になってしまう。

佐々木)経済や安全保障が単独で存在するのなら、アメリカに日本を守ってもらうということが成り立つと思いますが、経済と安全保障をカップリングして考えると、アメリカと中国は融和せざるを得ません。そうなると、安全保障でどう融和するのかという議論になります。封じ込めではなくなって来る可能性がある。

中国弾圧「最悪の状況」 日本外国特派員協会で記者会見する「世界ウイグル会議」のドルクン・エイサ総裁=2018年11月20日午後、東京・丸の内 写真提供:共同通信社

中国に対抗する「リベラルな世界秩序」も破綻しつつある

飯田)いままでの理論で行けば、価値観が違うと。ウイグルやチベット、あるいは香港もそうですが、人権を無視する行為を続けている中国と、果たしてその部分まで折り合えるのかといえば、生理的には難しい部分がありました。

佐々木)ものすごく難しいと思います。ただ、それを支えているのはリベラルな世界秩序、キッシンジャー氏が言った「ワールドオーダー」ですが、リベラルな世界秩序自体がいまや破綻しつつあります。難民、移民問題があるヨーロッパで排外主義が台頭しているのもそうですし、トランプさんのような大統領が生まれたこともそうです。リベラルな世界秩序の理念が幻影になりつつあるなかで、どこまでリベラル側がウイグルやチベットの問題を指摘できるかと言うと、これもなかなか難しいのではないかと思います。

飯田)そのリベラルな国際秩序の人たちが、一方で顕示して来たのは「内政干渉しない」という、お互いの国について手を突っ込まないようにしようということです。そこが今度は高い壁になってしまって、国際的なリベラルの手が差し伸べられなくなってしまっている。

佐々木)そうです。中国が国内問題だと言ってしまえば、内政干渉だというロジックが成り立ちます。なかなか難しい状況に来ています。

飯田)一方、中国はいろいろな工作をする一環で、他の民主主義の体制に対しては手を突っ込むというところがあります。

モスクワで握手する中国の習近平国家主席(左)とロシアのプーチン大統領(ロシア・モスクワ)=2019年6月5日 写真提供:時事通信

中露が手を組んで行くなかでアメリカはどう折り合いをつけて新たな理念をつくるか

佐々木)お金をばら撒いて、アフリカや南太平洋に手を出している。アメリカがいちばん怖れているのは、「中国とロシアはどのくらい手を結ぶのか」です。アメリカ一国の平和だと言われたのが2000年代ですよね。これが終わり、復活して来たロシアと新しく台頭した中国の2つが手を結んで、アメリカに対抗して来ている状況です。そういう安全保障的な観点と、一方で経済はグローバルサプライチェーンでがっちりつながっているなかで、アメリカはこれからどう折り合わせて、新しいアメリカの理念をつくって行くのか興味があります。しかしトランプさんが何を考えているかわからないので、不透明でもあります。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

難しい日本の立ち位置

飯田)そのなかで日本がどういう立ち位置をとるのかは、強力な磁石に吸い寄せられているような感じがします。

佐々木)中国、ロシア、アメリカとの間で「バランスよく」とみんな言いますが、それこそ韓国が失敗して来たことではないですか。

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FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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